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獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


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126.僕と、アイドルと、餃子包み機

年末の特別番組を観ていた時のことだ。

画面の中では、タケダさんたち『クラウドマン』のメンバー9人が大集合し、メンバーオリジナルの餃子を作るという企画が放映されていた。

もちろんタケダさんプロデュースの『にんにくマシマシ餃子』と『ししし屋の餃子の皮』のPRも兼ねた企画なのだが……画面を見ながら、僕は思わず身を乗り出してしまっていた。

「あ、あ~っ! そこ、ひだの寄せ方が甘い!焼き上がった時に肉汁が逃げちゃうよ……! タケダさん以外のみなさん、手がたどたどしすぎるって……!」

普段から厨房に立つ身としては、イケメンアイドルたちが不器用そうに手元を狂わせ、不揃いな形の餃子を生み出している様子がもどかしくて仕方がなかったのだ。

すると、隣でミカンをモグモグと食べていたサリーから、あきれ顔を向けられた。

「ヒロキ、分かってないなあ。ファンはね、あの高身長イケメンたちが不器用そうに『うわ、失敗した!』ってオタオタしてるギャップが見たいのよ。母性本能をくすぐる演出ってやつ」

「う、演出……なのか?」

料理人目線とファン目線の違いにハッとさせられつつ、番組の行方を見守る。

そして、見事その企画で優勝を果たしたのは

『あんころ餃子』だった。

パリッと香ばしく焼いた餃子の皮の中から、熱々でトロッとした甘いあんと、もちもちの餅が飛び出すスイーツ系餃子だ。

「餃子をスイーツにする」という発想は、僕の元の世界にも存在していたけれど、この世界のアイドルが自力でそこに辿り着いたのは素直にすごい。

まあ、それも台本の可能性はあるけれど。

(これ……『ししし屋』の期間限定スイーツメニューとして出すの、全然ありだな)

アイデアの素晴らしさに感心した僕は、勝手な一存ではあるけれど、その『あんころ餃子』を考案したメンバーさんへ、感謝と尊敬を込めて「プロ仕様の自動餃子包み機」を事務所経由でプレゼントさせていただいた。

一般には出回っていない超ニッチな機械だけど、あれだけ包むのに苦戦していた彼なら、きっとプライベートで重宝してくれるはずだ(……たぶん!)


後日、タケダさんからお礼と報告の連絡が入った。

どうやら僕がプレゼントした『自動餃子包み機』は、考案したメンバー個人の所有物……とはならず、事務所の共有財産として事務所の給湯室に設置されたらしい。

「まあ、個人で家に置くようなサイズと用途じゃないし、そりゃそうなるよね」

と納得していたのだが、話はそこで終わらなかった。

タケダさんが『にんにくマシマシ餃子』のさらなる研究のためか、その共有の包み機を使ってほぼ具材がニンニクのみという狂気のオリジナル餃子を生産し始めたのだという。

その結果、事務所の給湯室どころか、機械そのものにドッシリと強烈なニンニクの匂いが染み付いて取れなくなってしまったらしい。

他のメンバーが「あんころ餃子」やマイルドな餃子を作ろうとしても、どうしてもニンニクの風味がほのかに漂ってしまうという被害が多発。事務所内でちょっとした「ニンニク公害事件」として物議を醸しているのだとか……。

「……タケダさん、やりすぎですって」

受話器の向こうで「いやぁ、試作に夢中になっちゃってさあ!」と豪快に笑うタケダさんを聞きながら、僕は思わず額を押さえた。

このままでは他のメンバーや事務所のスタッフさんに申し訳なさすぎる。

というわけで急遽、僕の独断でタケダさん専用(ニンニク特化用)の自動餃子包み機をもう1台、追加で事務所宛に送るハメになったのだった。

(……芸能事務所にプロ用餃子包み機が2台もある状態って、一体なんなんだろう)

首をかしげつつも、これで楽屋の平和と『あんころ餃子』の甘い香りが守られるなら安いもの……なのかもしれない。

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