125.僕と、帰省と、年末進行
『まんぷくししし亭』のレセプションパーティーの様子は、翌日からテレビのワイドショーやネットニュースで大々的に取り上げられた。
クラウドマンとダントレスがコックスーツ姿で並ぶ圧巻の絵面、タケダさんの「翌日のことは考えるな!」の名言、そしてストシーのギャップだらけのCM効果も手伝って、お店は連日大盛況。
正式オープン後も客足は一切衰えず、僕のこの一年の締めくくりは、文字通り右肩上がりの最高の形でフィナーレを迎えようとしていた。
そして、年明けまで残りあと3日。
普段は賑やかな優美林高校も、数少ない年末年始休みへと突入した。
この時期は特別寮の寮生たちも帰省する人が多く、あんなに毎日ドタバタと騒がしかったリビングも、嘘のようにしんと静まり返っている。
今年、年末の寮に残ったのは、サリーと、フェイ先生、そして僕の3人だけだった。
ちなみにアオイさんはというと、実家への帰省こそしないものの、年末特番やドラマの撮影、各種メディアの引っ張りだこでスケジュールが超過密状態。
寝に帰る暇すらほとんどないらしく、寮には全く戻ってきていなかった。
「……静かだねぇ、ヒロキ」
リビングのソファで、コタツの中にどっぷりと潜り込み、ミカンをモグモグ食べながらサリーがぽつりと呟く。
「そうだね。いつもが賑やかすぎるから、急に静かになるとちょっと調子狂うよ」
「ふふ、たまにはこういう穏やかな年末も良いものでじゃない?」
向かい側では、フェイ先生が温かいお茶を静かにすすりながら、満足そうに目を細めていた。
いつもならコニーやアニーがドタバタと走り回っていたり、ピピやユイナが楽しそうにおしゃべりしていたり、レミ社長やアキラ専務からの無茶振りが飛んでこたりするのに。
「でも、アオイは可哀想だね。こんな年末まで崖から落とされたり誰かを殺したりしてるのかなぁ……」
「どんなイメージなの、アオイさんの仕事……まあ、怒涛の年末進行なのは確かだけどさ」
仕事詰めのアオイさんには少し申し訳ないけれど、嵐のような1年を走り抜けた僕たちにとって、この数日間は神様がくれた束の間のお休みのようなものだ。
「よし! サリー、フェイ先生。せっかく3人しかいないんだし、今年の年末は豪華で美味しい年越し準備でもしようか!」
「ニャッ!? ヒロキのご馳走!?」
さっきまでコタツで丸くなっていたサリーが、一瞬で目を輝かせて身を乗り出してきた。
怒涛のイベントラッシュだった1年が、ゆっくりと過ぎ去ろうとしている。
残り3日、静かで贅沢な年末の時間を噛み締めながら、僕は厨房へ向かってゆっくりと歩き出した。




