121.僕と、新店と、レセプションパーティー
ついに、この日がやってきた。
新店舗『まんぷくししし亭』のオープン準備が、すみずみまで完璧に整ったのだ。
今日は一般公開に先駆けた、メディア向けのレセプションパーティー。
会場にはテレビで見ない日はないようなエンタメ業界の錚々たるメンバーが集結しており、どこを見渡しても華やかなオーラで満ちあふれている。
……と、こう書くといかにも僕たちが最初から綿密な「メディア戦略」や「宣伝計画」を練り上げていたかのように思われるかもしれないけれど、実際のところは全然違う。
発端は、タケダさんから僕の携帯に直接届いた一通のメッセージだった。
『まんぷくししし亭のプレオープン日が決まったら教えてくれ』
連絡先自体は以前に交換していたけれど、超売れっ子のタケダさん自ら直接連絡をくれるなんて思っていなかったから、画面二度見したくらいだ。
さらに話を聞いてみると、ジマケンくんが「『ダントレス』のメンバー全員で兄ぃの店に行きたいっす!」と息巻いているらしい。
今をときめくトップアイドルたちが、普通のお客さんに混ざって来店したらどうなるか……間違いなく店内も周囲の街も大パニックになってしまう。
それならいっそのこと、一般向けプレオープンとは別に、関係者やメディアを招いたレセプションパーティーの枠を一日作ってしまおう!ということになったのだ。
タケダさんが来てくれるなら話は早い。レミ社長とも相談して、タケダさんプロデュースの『ししし屋の冷凍餃子 にんにくマシマシ!』の正式発表会もこの場で一緒にやってしまうことに決定した。
もちろん、試写会からお世話になっているアオイさんは一番に招待。
さらにはあのシュールなCMで話題沸騰中のストシーの4人と、優美林女子高校芸能コースのホープたち、そしていつもお世話になっているヨーコさんにも招待状を送ると、なんと全員から「絶対に行きます!」と快諾の返事が届いた。
それだけに留まらず、タケダさんや『ダントレス』が動くとなれば周りも放っておかない。
気づけば『ダントレス』がレギュラーを務める人気番組のメインMCの芸人さんや、朝のワイドショーでおなじみの有名コメンテーターの方々まで駆けつけてくれていた。
庶民向けの『焼肉食べ放題』というコンセプトのお店に、これほど豪華なメンツが一堂に会するなんて……どこを切り取っても情報過多すぎる空間である。
「ヒロキ店長! 黒服たちの配置、各テーブルへの『どこでもIH寸胴鍋』と『ビュッフェウォーマー』のセット、すべて完了したわよ!」
ビシッとキメたレミ社長が、最高に楽しそうな笑顔で僕に親指を立ててみせる。
「ありがとうございます、レミ社長! ……よし、みんなにお腹いっぱい楽しんでもらおう!」
厨房でハチマキを締め直し、僕は気合を注入した。
数々の縁と偶然が重なって実現した、一夜限りの最高に贅沢なプレオープンパーティー。いよいよ開宴だ!




