表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/6

第5話 【封印照合】が目を覚ます

翌朝、私は北領宝物庫の封印確認簿を片端から洗い直した。


 【封印照合】が目を覚ましてから、蝋の色と欠け、鍵傷の深さ、札紐の結び方が以前よりはっきり読める。似ているだけの偽印と、本物の癖が手に取るように分かるのだ。


「昨冬以降の記録だけ、同じ手で繕われている」


 私は三冊の帳面を並べた。王都の搬出札控え、北領の受領簿、封印確認簿。どれも一見整っているのに、姫冠関連だけ受領順が逆転している。


「誰かが王都から北領へ送ったあと、別の品を戻した」


「すり替えか」とレオンハルトが言う。


「少なくとも証書筒は。封印帯の裂け目が合いません」


 そこへ古参の保管係オットーが帳面を抱えて入ってきた。頑固そうな老人だったが、私の並べた帳面を見るなり、目を細めた。


「前任の主任は青玉の姫冠ばかり気にしていた。王都から急ぎの使いが来るたび、保管棚を開けさせたものです」


「使者の名は?」


「記録には残っておりません。残すなと言われたので」


 残すなと言われた記録ほど、残すべきだったのに。


 私は胸の奥で深く息を吸った。


「修道院封庫への参照がありました。王妃献納録の追補がそこにあるはずです」


「雪の峠を越える必要がある」とレオンハルトが言う。「今日中に許可状を出そう」


「私一人で行けます」


「君の箱ごと崖下へ落ちても困る」


 無愛想な言い方なのに、妙に責める響きがない。私は少しだけ笑ってしまった。


「それは確かに困りますね」


 その時、王都からの速達が届いた。差出人はセレナ。封を切る前から、香の甘い匂いが鼻につく。


 中には夜会の招待状が一枚。《王家縁故認定祝賀会》。そして一行だけ。


『お姉さま、ようやく私が本物の王女に相応しいと認められますの。北領の暗い棚からでも祝ってくださいね』


 私は招待状を閉じた。


 セレナは、失くなった王妃献納録を使って何かを証明したつもりでいる。なら、その証明そのものをひっくり返せばいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ