第59話 仲間を増やしてボスを倒しましょう
「初めまして。僕はカリオ・エルディン」
「はじめまして~! シエル・アルモニアです!」
私はシエル・アルモニア。精霊使いを育てる学校に入学して、いろんな人た精霊と仲良くなろうとしている精霊使いの卵。
ただ、この学校はちょっとおかしいんだよねえ。
属性ごとに派閥なんてものがあって、他の属性を学ぶことを良しとしないみたい。
しかも、それが学校の方針じゃなくて、生徒たちが決めた方針っていうんだから困ったものだねえ。
「私はイルマ・ヴェントールよ。初めまして、シエル」
「よろしくおねがいしま~す」
その派閥ごとの最も優れた精霊使いは協奏者なんて呼ばれている。
それにしても、そんな協奏者の人たちが次々と挨拶しに来るなんて律義だねえ。
「トゥリ・エヴァリス。もう知ってるだろうけど、念のため」
「そうだね。これからもよろしく、トゥリちゃん!」
それにしても、トゥリちゃんまで協奏者だというのだからすごいよねえ。
あれかな? 初日に先輩を倒していたから、その力を見込まれたってことかなあ?
「ヴィルタ・エヴァリスだ。よろしくね、シエル」
「はい! よろしくお願いします!」
ただ、なぜかしっくりくるというべきか。少し話しただけでもこの人たちがいい人だってわかる。
なんだろうね? 前世で何かあったとかそういうあれかな?
私たちの場合、精霊くんと違って一度死んだら復活なんてしないけど。
『そうでもないよ? 昔は蘇生のためのアイテムもあったし』
へえ、そうなんだ。
でも今はそんな話を聞いたことすらないなあ。
歴史と共に消えてしまったってことかもしれないね。
それはとにかく、前途多難かと思っていた学校での生活もいい感じになりそう!
黒の派閥を名乗ってからは完全に除け者にされてたからなあ。
四人も友達ができたことだし、ついでにこのまま黒の派閥に引き込めないかな?
「ところでみなさんは黒の派閥に入るつもりは……」
「ない」
仲いいねえ。全員が口をそろえてそう言うのだから。
まあいっか。いずれ全員黒く染めてやるのは確定しているとして、じっくりと少しずつ黒くしちゃおっと。
◇
「どうする?」
イルマの言葉にカリオも難しい顔をしている。
今回もシエルは学校に入学し、黒の派閥を宣言して周囲から孤立して戦っている。
俺たちは各々がシエルと面通しをしたが、正直なところピルカヤ対策はできていない。
「隠しても駄目。話しても駄目。ピルカヤに話させても駄目」
「そもそも、ピルカヤが本当のことを言わない……」
たしかにそうだ。
嘘を見抜く魔道具を使っても、ピルカヤはそれをあっさりと無効化した。
シエルを利用して復活するつもりはない。そう答えた。
……いや、シエルを利用して復活し、人類を襲うかどうかを尋ねていたな。
復活までは本当のことだが、人類を襲うつもりはなかった?
そんなはずはないか。ピルカヤは復活するたびに学校を焼き払っている。
俺たちはすぐに死んでいるからわからないが、シエルが時間を戻さない限りは人類が殺されるはずだ。
「……時間、巻き戻ってるよな」
「そうだな。復活したピルカヤにとってシエルは不要な存在だ。時間を戻してまで救う理由はない」
「ということは、やっぱり誰かが時間を戻しているってことよね」
「おそらくな。その誰かと協力すれば、少なくとも今後もやり直しができそうだが」
あるいは、その誰かに協力してもらわないと解決できない問題なのかもしれない。
まいったね。その誰かも見つからず、シエルを守ることもできていない。
「どうする? 魔族の残滓を諦めるか……」
魔族の残滓。今やピルカヤの仕掛けた脅威だとわかっている。
対処しなければ、生徒に少なくはない被害が出るだろう。
そもそも、ピルカヤが操作してシエルと遭遇させるだろう。
だとしたら、シエルはあれを乗り越えないと殺されてしまう。
本当に嫌なやり方だ。ピルカヤはシエルがあれに殺されても何度でもやり直す。
精霊という不滅に近い長寿の存在であるため、シエルが何度あれに殺されてもどうでもいいんだろうな。
そうして俺たちが足掻いてシエルを共にあれを乗り越えたら、そのときはシエルに自分の完全復活を依頼する。
「それじゃあ前に進めない。最善はシエル抜きでその脅威を乗り越えることだが……」
「そもそも、シエルはいつか才能を開花させる。私の友達はすごいから」
トゥリの言うことももっともだ。
魔族の残滓を俺たちだけで乗り越えたとして、シエルはいずれ力を手にするだろう。
それまでずっと俺たちが見守るというのは現実的ではない。
……ピルカヤ。避けては通れないんだろうね。
「じゃあやっぱり、魔族の残滓を倒すためにシエルを鍛えるってことでいいわよね?」
「ああ。並行してピルカヤ対策は続けよう。炎耐性の魔法や装備を揃え、魔王軍との戦いの文献が残っていれば参考にする」
「あとは協力者探しだろうね」
ピルカヤとシエルが協力して使える魔法を誰かが引き起こしている。
なら、その誰かが協力してくれたら心強い味方になってくれそうだ。
まずは教諭たちを一通り調べてみるかな。
「いい加減終わらせたいな。シエルと一緒に先に進みたい」
俺の言葉はここにいる全員が同じ気持ちだった。
相変わらず対策の一つも立てられずに情けないが、できうる限りのことをやるしかない。
今度こそ、シエルを殺さないためにも……。
「協力者……」
方針を固めているとトゥリが考えこむような姿を見せた。
もしかして何か心当たりでもあるのかな?
今はなんにでもすがりたい。俺はトゥリが誰のことを考えているか尋ねてみることにした。
「心当たりがあるの? トゥリ」
「お兄ちゃん。……ううん。ただ、私たち四人だけじゃなくて、シエル自身にも協力してもらうっていうのは」
それなら前にやった。
ほぼ全てを話して信じてもらったこともある。
精霊が敵であることは信じてもらうことはできないが、時間が巻き戻り続けていることは打ち明けた。
だが、その結果はシエルの死で終わる。
「シエルは思い詰めてまた死んでしまうかもしれない」
「うん。だから言わずに協力してもらえないかなって」
「それって魔族の残滓の討伐みたいに?」
……たしかに、より強力な脅威がいると言っておけば、さらに強くなってくれる可能性もあるか?
そうしてシエル自身の精霊使いとしての力量を高めることができれば、ピルカヤを制御できる?
カリオとイルマのほうを見ると、二人とも俺たちの話を聞き逃さないようにしていたようだ。
俺の目線に合わせて頷いてくれた。
「やってみる価値はあるかもしれないな」
◇
「よろしく~! リセアちゃん、リーヴァちゃん」
仲間が増えた! それも二人も!
勝ったね。もう完全に勝利した。シエル・アルモニアの物語はここで完結したともいえる。
やっぱいえない。全員を黒く染めるまで、私の物語は終わらないのだ!
「なにを挙動不審な動きしてるのよ……。なんか、あんたについていっていいか不安になってきたわ」
「リ、リーヴァちゃん……。たぶん大丈夫だよ」
「そう! これから黒の派閥は一気に強大な勢力になるからね! 今のうちに古参になっておいて正解だと思うよ~?」
「だといいんだけど。……一年生三人程度が揃ってもねえ」
「昨日の三倍になったから、新進気鋭と言えると思う!」
「物は言いようね」
嘘は言ってないよ? 昨日が一人で今日は三人。これはもうすごいことなんだから。
お小遣いが三倍になったと考えるとすごくない?
リーヴァちゃんは、そんな私を見ながら呆れたようにため息をつくのだった。
なんでえ?
「そういえば、シエルちゃん」
「なぁに? リセアちゃん」
「イルマ先輩に呼ばれていたみたいだけど……。何かあったの?」
「そうよ! イルマ先輩に目をかけてもらえるなんて、もしかして知り合い?」
「え~? 初対面だよ?」
ただ、あの先輩はたぶんかわいらしい先輩と見たね!
きりっと真面目な優等生タイプと見せかけて、絶対にかわいい先輩だと思う。
……あれ? なんでだろう。なんか確信をもってそう思えた。
まいっか。それだけ私の勘が冴え渡っているのかもね!
◇
そんなこんなで、私は協奏者たちと仲良くなれた。
派閥にはリーヴァちゃんとリセアちゃんだけでなく、ローデン先輩とカリナ先輩という新規メンバーも増えている。
順調順調。女子ばかりでローデン先輩の肩身が狭いこと以外は順調だね。
「なんか、お前と一緒だと気楽でいいわ」
「おや? 癒し系後輩シエル・アルモニアってことですか? ローデン先輩」
「いや、なんかお前だけ性別が気にならない」
「なんでえ?」
癒し系後輩ではなく雌雄同体系後輩のシエル・アルモニアだった。
まあ、それでローデン先輩が気楽ならいいことだよね!
明日は試験の日なんだからあまり緊張しすぎて失敗したら困るし、私は黒の派閥の長としてみんなをリラックスさせているのだ!
それに、魔族の残滓なんて危険なやつが来るみたいだからね!
協奏者のみんなとしっかりと倒さなくっちゃ!
がんばろうね。精霊くん!
『まあ問題ないよ。なんせボクは、元魔王軍四天王だからね』




