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黒はすべてを混ぜる色 ――忘れられる少女と、忘れない者たち  作者: パンダプリン


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第60話 弔いの真っ黒コーデ

「精霊くん! いくよ!」


「了解!」


 協奏者のみんなの魔力が流れてくる。

 それだけじゃない。先生や他の生徒たち。派閥も関係なくみんなの力を合わせた力だ。

 これで負けるなんてありえないよね!


 精霊くんの力はすでに絶大なものへとなっていた。

 火力もいつも以上に上昇しているのか、体の端っこは炭化したように黒くなっている。

 四属性を混ぜたら本当に黒い力になるのかもしれないね!

 それじゃあ、景気よくあの黒飴を倒しちゃおう!


「黒色崩壊ビーム!」


 これでおしまい!

 なんか物騒な色の攻撃だけど、黒の派閥である私にとってはふさわしい精霊魔法だと思う。

 黒飴は中心が貫かれると、そのままドロドロに溶けたように崩れていった。


「終わりました~!」


 私の攻撃を見守ってくれていたみんなは、少しの間をおいてから喝采を浴びせてくれた。

 おおう。こんなふうに認められるの初めてかも。

 ……初めてだっけ? 何度か認めてもらえたことはあった気がするけれど、最近そんなことがなかったから忘れちゃっただけ?

 まいっか。今はそれよりも協奏者のみんなが言っていた脅威が去ったことを喜ぼう。


「よくやってくれたな。シエル・アルモニア」


「いえいえ。みんな無事でよかったです」


「本来なら俺たち教師が対処すべきなのに、生徒であるお前に託すことになってすまなかった」


「いえいえ~。それよりも無事に解決したことを喜びましょう」


「ああ、そうだな」


 私はその歓喜の場に戻り、これ幸いとついでに黒の派閥の勧誘だけはしておいた。

 いやあ、絶対に加入者が増えると思うよ。

 だって、おあつらえ向きに真っ黒なすごい魔法で倒せたからね!


    ◇


「順調順調!」


「上機嫌ねえ」


 黒の派閥の仲間たちが私に声をかける。そう! 仲間たちがね!

 協奏者のみんなが教えてくれた魔族の残滓。それを倒すために私たちは事前に準備を進めていた。

 先生たちにも協力を仰ぎ、なんなら各生徒たち全員で協力して倒そ~! ということで一丸となった。


 それでもかなりの強敵だったんだよねえ。

 あんな黒飴みたいなのが、まさかあそこまで強いとは……。

 ただ、そこはみんなが揃っているだけあってなんとかなった!

 具体的にはみんなの魔力をうま~く調和させて、精霊くんを超絶強化して完全勝利!

 いやあ。うまくいってめでたしめでたし。


「シエル。私たち今日は炎の精霊魔法を鍛えるつもりだけど、あなたはどうする?」


「えっとそうですね~。まだ決まっていませんし、一緒に炎の精霊学びます?」


「それは助かるんだけど、大丈夫? あなた昨日とんでもない魔法を使ったんだから、もう少し休んだら?」


「う~ん……。そうかも! じゃあ、今日はお休みしますね。また明日~」


「ええ、また明日」


 黒の派閥にはたくさんの仲間ができた。

 学校中はもうみんなが仲良く精霊について学べている。

 黒化計画ほぼ完遂! あとはしっかりとお勉強がんばらなくっちゃね。


「シエル。ちょっといいかい?」


「あ、カリオ先輩。いいですよ~」


 なんだろう? 黒飴討伐記念パーティとかかな?

 今日は訓練もお休みだし、一人で部屋にいるのもあれだったからちょうどいいかも。

 私は黒の派閥の()()! に別れを告げ、カリオ先輩についていくのだった。


「カリオせんぱ~い。どこに行くんですか~?」


「ちょっと君と今後について話したくてね。ヴィルタとイルマとトゥリを待たせているから、まずは研究室に移動しようか」


「は~い」


 パーティじゃなさそうだねえ。

 まあいっか。協奏者四人とゆっくりお話もいいもんだからね。

 なんせ今日は黒の派閥のみんなと話していたから、協奏者のみんなとお話できていないし。


 軽い足取りでカリオ先輩についていくと、なんだか周囲に人がいない気がした。

 う~ん。みんな訓練中なのかな? 昨日は試験と黒飴のことがあったのに、みんな熱心だよね。


「待たせたな」


「待ってないから平気」


「お、トゥリちゃ~ん」


 トゥリちゃんが出迎えてくれたので、とりあえず抱きしめる。

 トゥリちゃんは猫みたいに目を細めて、上機嫌で受け入れてくれた。

 そんな私たちを見て、イルマ先輩がいつもの発作を起こしそうになってるね。


「さて、早々で悪いが君に話があるんだシエル」


 ただ、あまりゆっくりと和んでいるわけにはいかないのかも。

 カリオ先輩の真剣な表情に、私もさすがに気を引き締めて話を聞くことにした。


「単刀直入に言おう。君には僕たちを超える最高の精霊使いになってもらいたい」


「え、私がですか?」


 どういうことだろう?

 もしかして、またあの黒飴みたいな危険な敵が現れるとか?

 単に発破をかけて成長を促すとかではなく、今後現れる何かを見据えているような気がする。


「君はいずれ大きな力を得るだろう。だけど、それを扱いきれないと昨日の魔族の残滓のような危険な存在を生み出すかもしれないんだ」


「だから、私たち協奏者が今後も強力して、あなたがしっかりと力を制御できるようにしようと思うんだけど、どうかしら?」


「それは私にとっても願ったりかなったりです! ね? 精霊くん」


 私があの黒飴を倒せたのは、ひとえに協奏者全員が入学直後から私を鍛えてくれたからだと思う。

 だから、それが今後も続くというのならとっても助かる。

 ……と思ったんだけど、精霊くんはなんだか心ここにあらずって感じだね。返事がいつもよりも遅い気がする。


『……ま、いいんじゃないの?』


 そう言ってはくれたものの、どちらかというと乗り気じゃないって感じだねえ。

 協奏者たちに教わってばかりだと、あまり私の成長につながらないとかなのかな?

 だけど精霊くんは特に反対もせず、その真意を私に話すことはなかった。


「精霊はなんて?」


「問題ないみたいです」


「そう、それはよかった」


 そうして私は今後もみんなに協力してもらえることとなった。

 あれ以上の脅威が現れるのか尋ねたけど、それについては答えてもらえなかった。

 う~ん。来るかどうかわからないってことかな? だとしても、油断せずに自分を高めていかないとね!


    ◇


「どう思う?」


「ピルカヤが大人しくしているとは思えない。できるだけつきっきりになって、シエルをそそのかせないように見張りましょう」


「そうだな。それが一番いい」


 シエルが言うには、ピルカヤは私たちの提案に賛成してくれたらしい。

 きっとシエルに不信感を抱かせないため。

 だけど油断はしない。あれはいつだってシエルの力を利用しようと企んでいる。

 今は聞き分けのいい精霊のふりをしているけれど、いざ復活したら人類に牙をむく危険な精霊。


 誰に相談しても暴走される。誰にも対処できない。

 だから、最善なのはあれを復活させないこと。

 その間にシエルを鍛えて、確実に制御できるようにしてしまう。

 私の大切な友達を利用させない。ましてや、目の前で殺させるなんて絶対に嫌。


「トゥリ、同じ学年のお前が一番近くで見守りやすいはずだ。悪いけど頼んだぞ」


「任せて。シエルは私の大切な友達だから」


 見落としはない? ピルカヤの狡猾な策は他にない?

 どれだけ考えても不安はぬぐえない。

 なんせあれは最近まで記憶が残っているのを隠していた。

 自分が完全に実体化し、さらにシエルという存在から解き放たれるそのときまでそれを隠していた。


 だから、あれはとても恐ろしい。

 その力はもちろんだけど、私たち程度がいくら対策を練ろうとどうにかしてしまうんじゃないか……。

 そんな恐ろしい考えをかき消すように、私は首を左右に振ってからシエルに会いに行くことにした。

 私の安心できる場所。お兄ちゃんとシエルに会えば、暗い気持ちなんて消えてしまうのだから。

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