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黒はすべてを混ぜる色 ――忘れられる少女と、忘れない者たち  作者: パンダプリン


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第33話 大空に大輪を咲かせましょう

「それじゃあ試験を始めるぞ~。事前に通達したとおり四人一組で精霊魔法を連携してもらう」


 いざ試験当日!

 生徒みんなが演習場に集合して先生の話を聞いている。

 私たちも特訓の成果も気合も十分だね!


「そんなに気負うなよ? シエル」


「当然です! 気負わず気合十分でいきましょう!」


「絶対わかってないわね……」


「シエルちゃんですから」


 私に限って空回りはしないので大丈夫です!

 力を入れすぎてもきっと問題ありません!


『そういうところを心配されているんだと思うけどねぇ』


 精霊くんまで~……。私そんなにうっかりさんに見えるかなあ?

 まあ、そのときはそのときで助け合っていこう! なんせチームなんだからね!


「シエル・アルモニア。あんたには絶対に負けないわよ!」


「あ、この前の」


 旧演習場で精霊勝負をした、イルマ先輩好きな風の派閥の女の子!

 彼女はあれ以来私たちの前には現れなかった。だけど今日はこうして宣戦布告しに来たみたい。

 つまりライバル! こうしちゃいられないね!


「リーヴァ。そんなのの相手なんてしてないで、放っておきなさい」


「はい。先輩!」


 ありゃ、あの子は先輩と組んでいるのか。

 話している途中なのに行っちゃった。

 それにしても、今日はリーヴァちゃん以外は特に絡んできていないねえ。

 みんなそれだけ試験に集中していてピリピリしているのかもしれない。


 現にいつもは優しいヴィルタさん先輩も、真剣な表情でこちらのことなど気にかけず……。

 あ、目が合った。表情に変化はないようだけど雰囲気が和らいだ気がする。

 もっとも、同じチームの人はその変化がわかっていないので、急に止まったヴィルタさん先輩に困惑しているみたいだけど。


「がんばろうね」


「はい! ヴィルタさん先輩もがんばってください!」


 うん。いつものヴィルタさん先輩だね。

 ってことは、案外他の協奏者の人たちも気負わずやっているのかな?

 イルマ先輩……。こちらに気付いて微笑みながら手を振ってくれた。

 トゥリちゃん。じっと見た後に目を逸らしたけど、これは彼女なりの挨拶みたいなもんだねえ。

 カリオ先輩は~……さすがに忙しそうだから気付かないかあ。


「それじゃあ呼ばれた班から順に実技だ。まずは……」


 始まった。

 さすがにみんな試験のために訓練はしているみたいで、その連携も様になっている。

 つつがなく精霊魔法を扱い、互いの邪魔にならないように連携しているみたいだねえ。

 先生はそれらをしっかりと確認し、手にしていたメモに何かを記入している。

 周囲はそんな真剣な空気に飲み込まれたようであり、試験実施者の精霊への呼びかけの声と魔法による音のみが響く。

 

「よし、次」


 みんな全力を出し尽くすように、全ての魔力と気力と体力を使い果たそうとしているねえ。

 額に汗をにじませ、蓄えた魔力を一つ一つ紐解くように繊細に、そして時には大胆に精霊へと還元していく。

 それにしても、全員で協力してというのがなかなか曲者だよね。

 一人で集中するだけでも大変なのに、他人の精霊魔法に合わせなといけないなんて。

 ちょっとのミスで集中力が乱れ、それが他人の魔法へも影響を及ぼすのだからなかなか一筋縄ではいかない。


「きゃっ!」


 ちょうど目の前で起きている光景のように、仲間からの魔力がゆらぎを起こして自身の魔法に干渉することもある。

 作成していた火の壁は、集中を乱したことで一気にバターのように溶けてしまった。

 先生はそんな様子も容赦なくメモに残している。


「次」


「見てなさい。私があなたより優れているって思い知らせてあげるから」


「お、リーヴァちゃんがんばって~」


「うん、がんばる。……じゃなくて!」


「リーヴァ行くわよ」


 リーヴァちゃんの出番だねえ。

 前回は旧演習場だから彼女の実力はわからなかった。

 だけど、今回はあんな制限のある場所ではない。彼女はしっかりと魔力を体内に集めている。

 実体化もうまくできているし、精霊への魔力干渉もしっかりと制御できているねえ。

 自信満々なのも当然ってことか~。でも、私も負けていられないね!


「放て!」


 リーヴァちゃんのチームはそれぞれが優秀なようで、四人で作った精霊魔法を融合して大きな竜巻を作り出した。

 これには先生も感心した様子で、メモを取る手の動きは今までよりも多くの文字を書いているようだった。

 なんだか評価が高そうだね。


「どうかしら! これでわかったんじゃないの? 私のほうが優秀だって」


「うん。すごいねリーヴァちゃん」


「でしょ? あなたがその汚い黒制服をやめるのなら、私から風の派閥に口利きしてあげなくもないわよ」


「う~ん。別にいいや。私、黒の派閥でがんばっていくつもりだから」


 機嫌が良さそうなリーヴァちゃんだったけれど、私のそんな言葉でまた不機嫌そうな顔へと変わってしまった。

 でもそこは譲らない。それにこっちも仲間ができているからね。

 それらをほっぽり出して他の派閥に行くなんて、さすがによくないでしょ。


「リーヴァ、そんなのほうっておきなさい。そんな落ちこぼれ連中、私たちにかなうはずないんだから」


「そ、そうですね! 先輩の言うとおりです!」


 落ちこぼれかあ。

 問題児の方はそりゃあ思い当たる節はあるけれど、私たちは落ちこぼれた覚えはない。

 ちゃんとできるんだぞってところ見せないとね!


「さすがは協奏者……」


「あれが私たちのトップなのね」


「あんなのに追いつけるのか……?」


 私たちが話している間に、どうやらイルマ先輩が試験を行っていたみたい。

 あ~……。イルマ先輩の活躍見逃しちゃったかあ。

 でも周りの反応を見れば何が起きたかはだいたいわかる。

 きっとさっきのリーヴァちゃんたち以上だったんだろうね。

 あれもすごい精霊魔法だったけれど、ここまでざわついてはいなかったもの。


「さすがに協奏者というのは大したもんだな」


 先生からの評価も高い。

 イルマ先輩はそれでも表情を変えることなく、涼しい顔で速やかに次のチームへと交代していた。

 う~ん。余所行きのイルマ先輩だねえ。私たちをかわいがっている姿とは別だけど、あれはあれでイルマ先輩なのだ。


「次」


 そこからは協奏者タイムとなってしまった。

 ヴィルタ先輩が高波を発生させる。トゥリちゃんが炎の竜巻を巻き起こす。

 カリオ先輩は地面を大きく揺らしてゴーレムを作り出す。


「おいおい、教師顔負けだな」


 やっぱり一番評価が高いのは協奏者の四人ってことだね。

 つまりこの人たちに勝てれば、私たちもすごいんだぞって証明ができるってこと!


「次」


 その合図のあとに、私たちの名前が呼ばれる。

 よしっ! それじゃあいっちょやってみよう!

 練習はしたし、ちゃんと四人での連携もとれている。

 あとは出たとこ勝負ってことで!


「おい、黒制服だぜ」


「半端な実力しかない連中じゃない」


「恥をかく前に試験を辞退すればいいのにな」


 そんなことしたら失敗したときより成績下がるよね!?

 なら恥をかいたほうがマシじゃないかなあ!

 そもそも、恥をかく気もないんだけどね。


「それじゃあ気負わずがんばりましょう」


「これだけの悪意に晒されても、ほんと平常心よね」


「それが山で生き延びる秘訣なのです」


「山で何があったんだよ……」


「そもそも生き延びるって……シエルちゃん、普段どんな暮らししてたの?」


 三人とも緊張はなく、私の田舎での生活に興味深々みたい。

 よし、いい感じ! それじゃあ、あとはいつも通りにやるだけだね。


「シエル・アルモニア。一応言っておくが、今回は契約精霊を使わないテストだ」


「もちろんです! 試験要項はしっかりと目を通しています!」


「お前、問題児っぽい雰囲気なのに真面目なんだよなあ」


 ということで今日は精霊くんはお休み。

 だけどきっと問題ない。旧演習場と比べてこの場所の精霊はとても多い。

 集めるだけでも今までと比べたら嘘みたいな魔力が溜まっている。


 だからといって魔力を少しも無駄にはしない。

 訓練で培った省エネ戦法でいこう。実体化に即して魔力を最低限だけ使用する。

 みんなうまく実体化に成功したので、あとは精霊に指示を出して私と精霊の魔力を融合させて制御して……。


 ここでみんなの魔力も流れてくるので、私の魔力を合わせる。

 よし、いい感じだね。それじゃあド派手にぶっぱなそう!


「いけ~!」


 そうして打ち上げた大きな花火。

 昼間なのにしっかりと見える程度には濃密な魔力。

 それが打ち上げられたときには、私たちを馬鹿にする周囲の声はすっかりと消えていた。

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