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黒はすべてを混ぜる色 ――忘れられる少女と、忘れない者たち  作者: パンダプリン


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第31話 プライベートスペースというだけでだいぶ妥協できる

「ほうほう。悪くないじゃないですか」


 足を踏み入れた旧演習場。なんとな~く、空気が冷たくどんよりしている。

 先生が言うとおり魔力が澱んでいるみたいだねえ。

 精霊も他の場所に比べたらかなり少ない。こりゃあやりがいがあるってものだよ!


「ここで訓練……? 精霊の実体化すら怪しい気がするんだけど」


「今までの演習場って、魔力と精霊で満ちていたんだな……」


「まあ、だからここが旧演習場になったわけだからな。あくまでも訓練に使えなくはない場所ってだけだ」


 先輩たちの感想に先生が答える。

 う~ん。そういう経緯があったんだねえ。

 やりにくい場所は放棄して、新しい演習場を作ったってわけかあ。


「とりあえずやってみましょう!」


「シエルちゃん。前向きだね」


「過去を振り返らない女。シエル・アルモニアだからね!」


「ちょっと意味が違うんじゃないかしら……」


 伝わればオッケーです!

 ということで、さっそく精霊を呼び出す準備を……。

 おぉ……。精霊がそもそもあまり集まってくれない。魔力が足りない。実体化してもかなりちっちゃい。

 そんなことだから、当然精霊魔法の規模もちっちゃいってわけだね。


「……」


 先輩たちとリセアちゃんの視線が痛い気がする!

 私を敵視している者の冷たい目は別に気にしないけれど、仲良しの人の冷たい目線はちょっと堪える!


「わ、私の実力はこんなものでは……」


「いや、知ってるわよ。モンスターを全滅させるくらいなんだから」


「ただ、そんなシエルでさえこの結果かと思ってな」


 認めてくれているからこその目だったのか~。

 よ~し、それじゃあそんな先輩たちの信頼に応えてみせようじゃないの。

 精霊く~ん。なんかいい方法ない~?


『そこはボクに頼るんじゃなくて、自分で考えるところじゃないの?』


 精霊のことは精霊に聞くのが一番だからね!

 ただ、それでも駄目だった場合はみんなで考えよう!


『う~ん……。みんなこんなに魔力が濁った場所にはいたくないだろうからねぇ』


 ということはお掃除して魔力の澱みをなんとかするとか?


『いや、そんなのボクたちならともかく、君たち人間が生きているうちには解決しないでしょ』


 それだけ長い時間が必要ってことか~。

 さすがに周囲の魔力をどうこうするなんて、私たちには難しい問題だったみたい。

 となるとこのまま私たちが成長するっきゃないね!


「よ~し、みんなでがんばろ~!」


 こうして私たちの精霊魔法訓練が始まった。


 まずは集める魔力を多くしたいよね。

 精霊くんに友達をたくさん集めてきてもらうって言うのは……。


『頼んでも来てくれないだろうねぇ』


 だよね~。

 じゃあここにいる精霊たちでなんとかしよう。

 ところで、なんでこんな場所にも精霊がいるの? 精霊にとって魔力の澱みって嫌なものなんだよね?

 私たち人間でたとえるのなら、ヘドロまみれみたいな場所ってことでしょ?


『変わり者もいるってことだよ。なんせ人間よりも魔王軍につく精霊だっているくらいなんだから』


 四天王か~。

 ……え? もしかして、ここにいる精霊ってみんな人間を敵視してるの?

 魔王軍の味方だから、私たちの言うことなんて聞いてくれないとか?


『それなら、そもそも実体化も精霊魔法も使えないでしょ。変わり者ってだけだよ』


 よかった~。

 万が一魔王軍の味方しかいないのなら、私たちなんてどうしようもないからね。

 味方であるはずの精霊が敵となり、自分たちは魔法一つ使えなくなってしまうもの。


『そういえば、魔王軍って四天王以外にも精霊がいたよ?』


 え!? もしかして、精霊は悪い精霊と良い精霊で分かれて争っていたの?

 だとしたら、人類と魔王軍の戦争って精霊も関わっていたってことだよね。


『あくまでも一部だけね。自分から魔王軍についた精霊。精霊使いによって人類のために戦った精霊。それ以外はいつも通りさ』


 へ~そうなんだ。精霊にも色々いるんだねえ。

 さて、精霊くんに仲間を集めてもらうのは無理だった。

 となると、あとはいかに効率よく魔力をわけてもらってから実体化させられるかだね。


「省エネ省エネ省エネ」


 せっかくの魔力を無駄にしないように、慎重に実体化のためだけに使用する。

 お? これはなかなか……。いけるかな?


「はいっ!」


 このへんはひんやりしているからか、冷たい風の精霊さんが実体化できた。

 最初みたいにちっちゃくないし人間に近いサイズだねえ。

 これなら、わりと大規模な精霊魔法も使えるんじゃないかな?


「お~。もうこの場所の精霊の扱いに慣れたのか。黒の派閥なんて作るだけのことはあるな」


 先生の言葉からも、今の精霊さんはうまくできているらしい。

 それじゃあ、あとはいつも通り……。いや、いつもよりもさらに省エネ省エネでいこう!


「吹け~!」


 演習場は演習場なので、訓練用の道具も普段と大して変わらない。

 魔力人形に向けて風の塊をぶつけるだけ。それで私の魔法の威力がわかるはず。

 ここで成長した私の力、とくと見るがいいさ!


「……ふだんと変わんないねえ」


「で、でもすごいよ! 私はふだんよりも威力が低いもの!」


「なんかもっとこう、ぐわ~って成長できそうな感じだったのに~!」


「魔力の効率化は上達したけれど、威力は変わらないってことね。でも、まずはそっちをなんとかしないと訓練にもならないわ」


 ということは、とりあえずはみんなで効率主義の訓練をってことだね。

 なんとなくそのあたりのコツはつかめてきているので、みんなと情報を共有しながら楽しく強くなっていこう。


「シエルはいつもどうやって精霊を実体化しているんだ?」


「魔力を集めた後の話ですよね? 集まった精霊さんの中から一人選んで、あとはその精霊さんっぽい姿をイメージしています!」


「なるほど……。輪郭を作るときはそのほうが精霊の力を引き出しやすいのか」


「というか、実体化していない精霊の姿なんてわかんないんだけど。どうやってイメージしているの?」


 まあ、そりゃあ私もわからないけどね。

 極端な話、精霊くんの姿だって実体化していなかったらわからないと思う。

 何度も実体化して彼のイメージが固定化できたからこそ、私は精霊くんの実体化を上手にできる。


「何度も試行錯誤です! あとは、魔力状態の精霊さんたちの雰囲気から勘で作ってます!」


「それでも精霊をイメージするのとしないのとでは結果も別ってことか……」


「へえ、面白い考え方だな。魔力との相性を考えて器を作るのではなく、精霊そのものの本来の姿か。俺たちが教えているやり方とは別物じゃないか」


 あれ、まずかったですかねえ。

 先生たちが教えている方法とは別ということは、半端なやり方になってしまって却ってよくない結果になるかもしれない。


「面白い、やってみろ。ローデン。カリナ。リセア」


「はい」


 いいのかなあ? まあ、これでダメだったら教わってるやり方に戻せばいいだけだよね。

 三人は精霊さんたちの雰囲気をなんとか感じ取ろうとした。

 そうして正解か不正解かはともかく、各々の精霊のイメージが固まったみたい。


「来い!」


 みんなが精霊を実体化させる。

 さっきまでは魔力が足りずに実体化はかなり危ういものだった。

 だけど今は……。お~、けっこう大きめな精霊ができあがった!


「みんなすごいですね~。しっかりと実体化してます」


「ただ、やっぱり出力は低いよなあ」


「ええ、そこは慣れていって上達していくしかなさそうね」


 今日はとりあえず実体化がうまくいった。

 なのでその先は今後の訓練で詰めていくっていうのがよさそうだね。

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