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黒はすべてを混ぜる色 ――忘れられる少女と、忘れない者たち  作者: パンダプリン


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第30話 予想の外の行動パターン

「なんでここにいるのよ」


「今日は風の日だからです!」


「邪魔しないでくれる? あんた黒の派閥なんでしょ?」


 あれ~?

 いつもなら渋々と精霊召喚室や演習場を使わせてくれるのに。

 なんでだろう? 昨日と今日でなにか大きな違いなんて……。

 あ、もしかして先生が言ってたやつかな?


「試験があるからですか?」


「わかってるなら邪魔しないで。あなたはともかく、他の三属性の派閥相手にうかうかしていられないの」


 むむ……。つまり私たちは眼中にないってことだねえ。

 まだまだ人が少ないので肩身が狭い。まあ、狭くても歩けるから問題ないんだけどね!


 イルマ先輩は……。

 私を一瞥したけれど、さすがに今回は風の派閥全体を優先してるっぽいねえ。

 しょうがない。それじゃあ、イルマ先輩の邪魔にならないように大人しく退散しよう。


 そうして私は空き教室へと移動する。

 黒の派閥の四人でなんとなく集まっている場所だけど、どうやらみんなここに来ているみたい。


「もしかして、皆さんも派閥を追い出された感じですか?」


「まあね。さすが黒制服。着ているだけで目の敵よ」


「俺たちまだ土の派閥以外の授業受けられてないのにな」


「シエルちゃんも、どこかの演習場を追い出されたの?」


「そうだねえ。風の派閥は駄目だったよ」


 ただ、この様子だと他も同じなんだろうなあ。

 土の派閥は先輩二人を追い出したみたいだし、リセアちゃんも炎か水あたりから追い出されたようだね。

 となると、私たちはこのままでは試験のための訓練ができないってこと。


「おかしいなあ。別に派閥対抗戦とかじゃないのに」


 試験は学校が定めているもの。

 なので当然、生徒間で取り決めただけの派閥についての言及なんてない。

 だというのに、生徒たちは派閥同士の抗争のように考えている。


「まあ、今に始まったことじゃないわよ。四属性が競い合うのは」


「こうして黒制服になって思うが、わりと異常な気がするよなあ……」


 ですよねえ。

 学校で決めたルールじゃないのに、なんでこんなことになっているんだか。

 ただ、それはそれとして私たちも試験に向けて対策しないといけない。

 

「実技試験で精霊との相性を見るだけなんですよね?」


「集団でね」


「といっても、四人一組なら派閥対抗というのもなんか違うような……」


「その四人組が上位成績かどうかを見ているんだよ。去年はカリオさんとヴィルタさんのチームがかなり接戦だったな」


 ほほう。さすがは協奏者。

 やっぱりそのあたりが上位になるんだろうねえ。


「接戦とは言いますが、さすがに生徒同士で戦うとかじゃないですよね?」


「そりゃあそうよ。そんな実戦訓練はこの学校でもなかなかないわ」


「そんな訓練ばかり積んでいたら、あのときモンスター相手に醜態を晒さずにすんだのかもなあ……」


「山にきます?」


「……どうしよう。わりと本気で悩んでしまった自分がいる」


 山は来る者拒まずですよ~。

 ……いっそ山で修行する? いや、さすがに遠いから無理かあ。

 精霊く~ん。なんかいい場所知らな~い?


『街の外ならいくらでもあるでしょ。精霊がたくさんいて、思う存分魔法を使えそうな場所が』


 おお、意外とあるもんだねえ。

 ということは外出許可が必要か~。まあ、授業の一環なわけだし申請すれば通るよね。


「街の外で訓練しましょう!」


「外で?」


「……今までならあまり気にしなかったんだけど、モンスターが怖いよなあ」


 あ~。たしかに、山にも結構出てきたからね。

 自然が多い場所って精霊も多いけれど、モンスターもそれなりにいるのが難点だねえ。

 そして、先輩二人はモンスターに襲われたばかり。さすがに無理強いはできないかあ。


「それに、さすがに頻繁に街の外に出るのは許可されないんじゃないでしょうか……」


「じゃあ、どうしよっか」


 ……ここで考えていてもしょうがないね!

 ここはひとつ、先生に相談してみよう!

 私たちは答えを出す前に一旦先生にもとへと向かうことにした。


「というわけで、悪しき風習で善良な生徒の成績がピンチです!」


「あ~……。例年は黒の派閥がいなかったから、そういう問題が起きることを忘れていた。悪い」


 だけど今年は一味違うってことですね!

 先生はどうしようかと悩んでいるけれど、みんな仲良く演習場を使うってのは駄目なのかな?

 ……学生同士のいざこざになるだろうし、あんまりいい手段じゃないのかもね。


「そうだなあ。旧演習場を使ってみるか?」


「旧演習場? そんなのあるんですか?」


 学校案内では見なかった気がするなあ。

 ただ、これだけ広い学校だし、知らない場所の一つや二つあるのかもしれないね。

 それに、そのほうがわくわくする!


「ああ。お前たちなら問題を起こすこともないだろうしな」


「模範生徒のシエル・アルモニアです!」


「トラブルメイカーなのに模範的なんだよなあ……」


「むしろいじめにあってる気がするので、周りの問題かと!」


「そこについては本当にすまないと思っている」


「あ、いえ! 余裕です! 気にしないでください!」


 私は心が強く肉体が強い女だからね。

 わりとがっつりといじめの現場な気がするけれど、そんなことを気にする私じゃないのさ。

 それに、私以外の黒の派閥が何かされるほうが嫌だし。


「悪いな。旧演習場のほうだが、利用するときは言ってくれ。一応何かあったときのため、教師が近くにいたほうがいいだろ」


「ついでに精霊魔法の訓練をつけてください!」


「ちゃっかりしてんなあ。まあ、生徒に教えを請われたら答えるのが教師だ。かまわないぞ」


 やったあ。演習場も指導者も手に入った。

 こんな環境で訓練できるというのなら、試験で失敗するわけにはいかないね!

 私だけでなくみんなも気合が入ったのか、真剣な様子で先生の説明を聞いていた。


「古いがまだまだ使える。老朽化はしていないから、お前たちが全力で精霊魔法を使っても問題ない。ただ、管理は最低限だったから、魔力が澱んでいるんだよなあ」


「お掃除すればなおりますかね?」


「いや、ちょっと難しそうだ。どうする? それでもそこで訓練するか?」


「他に場所がありませんし、その程度なら問題ないです!」


 背に腹は代えられないというか、わりと好条件だからね。

 魔力が澱んでいるということは、集まる精霊もちょっとだけだろうし魔法は使いにくいかもしれない。

 ただ、その代わりに先生による指導というアドバンテージがあるので、そっちのほうを活かしていこう。


    ◇


「トゥリ」


「お兄ちゃん」


 中庭を歩いているとトゥリを見つけた。

 何かを探している様子からすると、おそらく俺と同じことを考えている。


「シエルたちのこと?」


「うん。みんながいないときなら、演習場使えると思うから」


 やはり兄妹だからか同じ考えになるんだろうな。

 だけどこうして探しているってことは、トゥリのほうもシエルを見つけられていないみたいだ。


「あら」


「イルマ」


 今度はイルマか。彼女も誰かを探している。

 ……なるほど、考えることはみんな同じってことか。


「私はほら! あの、あれだから!」


「そんな焦って言い訳しなくても、俺たちは別に気にしないのに」


「そ、そうよね……。いえ、派閥の子たちにはそうはいかないから」


 やっぱりそういうことだよなあ。

 俺やトゥリでさえ、シエルよりも派閥を優先すべきときがあるんだから。

 ……恩人なのにな。ただ、派閥自体はないといけない。

 というか、黒の派閥があってはいけない。


「この分だとカリオも探しているかもな」


「ええ、でもいないわね。おかしいわ……」


 それはそう。

 何で見つからないんだ? 炎と水と土と風。どこかの演習場にはいるはずなのに。

 結局三人で探し続けるもシエルは見つからず、後日彼女が旧演習場で訓練していることを知った。


「……おかしいな」


 そんなはずはないのに。

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