第27話 精霊くんは私の保護者
「へえ。リセアさん他の属性の授業も受けたんだ」
「は、はい。そちらは得意な属性だったので上手くいったと思います。……その、周りの目が気になりましたけど」
「そうそう。リセアちゃん、風以外はすごいってみんながびっくりしてたよね!」
今日も今日とて黒の派閥の四人で集まる。
私は、リセアちゃんだけでなく先輩二人ともそれなりに打ち解けられたと思っている。
なぜなら、このような雑談くらいならできるようになっているから。
「シエルさんって、実力は高いわよね」
実力は? 実力以外はどんな評価なの?
そこんところ詳しくお聞かせしてもらいたいですねえ!
「ぷんすこ」
「怒っていることを表現しようとしているんだろうけど、なんかアホっぽいだけだぞ」
「なんですと!?」
怒りが足りない。おのれ人類。
かくなるうえは全てを黒で染め上げてやろうじゃないの。
「まあいいですけど、実力は評価されているわけですし」
「シエルちゃん、前向き……」
後ろに向かうつもりなんてないからね!
……ああ、ちょっと嘘ついたかも。とにかく、ネガティブになるつもりなんていないからね!
「実力はすごいと思うわよ。だって、トゥリさんが自分よりも協奏者にふさわしいと評するくらいなんだし」
「ふふん!」
「ただ、トラブルメイカーな気はするよなあ。そのおかげで、俺たちは助かったんだけどさ」
さすがにあのモンスター襲撃は私のせいじゃないんですけど!?
いや、そこんところはわかってるみたいだね。それに首を突っ込んだのは事実だからなあ。
「モンスターと戦い慣れていたけれど、そういう経験が多かったの?」
「そうですねえ。わりとモンスターとの遭遇回数は多かったですよ。田舎なので!」
「田舎だからって、そうそうモンスターと戦うなんてことはないと思うんだけど……」
あれ? そうなのかな。うちの田舎ってもしかして特別?
だとしたら、精霊くんと出会っていなかったら危なかったかもしれないなあ。
そもそも、トゥリちゃんが私を自分より上だと判断した理由も精霊くんの力のおかげだもんね。
精霊くんに協力してもらえば、精霊はいつも以上に集まり魔力をそのぶん蓄えられる。
精霊くん自身が実体化すれば、無駄な魔力を消費せずに精霊を呼び出すことができる。
そして魔法自体も精霊くんが協力してくれる。おかげで威力や精度も普通より高くなる。
……う~ん。精霊くん様様だねえ。
「精霊くんのおかげですね!」
「それって、シエルちゃんが契約している精霊のこと?」
「そうそう。すごいんだよ? 私の実力をかなり引き上げてくれているからね!」
『ボク優秀だからね~』
そこは私も同意しかない。
そんな思念を送ったら、精霊くんの満足そうな感情が返ってきた。
大丈夫かなあ? この子、なんというか……。ちょろいというか。
褒めてあげるだけでこんなに喜ぶんだから、たまに心配になるよね。
悪い精霊使いに利用されないといいんだけど。……まあ、悪い精霊使いがいるかは知らないけどね。
「その子とは故郷で出会ったの?」
「そうですよ。私が山という野生に返っているときに」
「田舎でも行動力があったんだな……」
まず行動ありきだからね!
でも、そのおかげで色々と体験できたのでいいことだと思っている。
自然を体感できる場所って、精霊のことも感じやすいからなあ。
だからこそ我流でこの学校に入学できたわけだからね。
それに、モンスターとの戦闘経験で精霊魔法もそれなりに磨けたと思うし。
「山で自然を感じ、精霊たちの存在が認識できるようになって、その後ですね。精霊くんと出会ったのは」
『シエル。精霊たちになめられてたよね~』
そ、それはしょうがないと思うよ!
何の知識もない一般の田舎娘なんだもの。精霊たちと戯れようとした結果いたずらもされるさ!
いやあ、精霊は強敵だったねえ。まさかあんなに自由奔放とは。
私のことを自由だの精霊みたいだの言うけれど、本家の精霊たちには敵わない。
「他の精霊さんたちがやりたい放題しました。風も炎も水も土も」
私の言葉に思い当たることがあったのか、三人ともなんだか渋い顔をしている。
「まあ、わかるけどな」
「ええ。たぶん子供の頃に誰もが通る道よ。あれは」
「精霊って、本当にいたずらばかりですからねえ……」
ともかく、そんな精霊たちに水浸しにされたり髪の毛の先っちょを焦がされたりしたものさ。
そんなふうに騒ぐものだから、精霊くんがうるさいって怒ったんだよねえ。
『そりゃあそうでしょ。これから生まれるぞってときに大騒ぎなんだもの。ボクがしっかりしないとって思ったね。あのときは』
いやあ。その節はお世話になりました。
いたずら三昧な精霊たちを一喝して大人しくしてくれたのだから、精霊くんって本当にすごい存在なのかもしれないね。
まあ、魔力と一体化された精霊さんたちと、存在をはっきりとさせることができた、いわゆる生まれたばかりの精霊くん。
後者のほうが強いっていうのはわかるんだけどね。
精霊も力関係がはっきりとしているんだねえ。
「ということで、そんな精霊さんたちを注意した精霊くんが、私という存在に興味を持って一緒にいてくれるようになったのです」
『あんな目にあっても精霊に友好的というか、前向きな人間なんて珍しいからねぇ』
生まれたばかりでそんな考えができるあたり、精霊くんって頭いいんだねえ。
『だから生まれるっていうのは、君たち人間の言葉ともちょっと違うんだってば。ボクたちは元々自我が薄い生きる魔力なんだから』
「それじゃあ、精霊魔法を学んだりモンスターと戦ったりも、契約精霊にサポートしてもらっていたのかしら?」
「そうですね。頼りになりますよ~? 精霊くんは」
『ボク最強だから!』
うんうん。精霊くんは強いもんねえ。
今後もずっと頼りになると思うよ。
特にモンスターとの戦闘で思ったのは、今の私じゃ精霊くん以外で戦うのは無謀ということ。
慣れない精霊の力を借りた場合では、どうしても魔法の効果が不安定だからねえ。
こういうところも契約精霊が必要になってくる理由の一つなのかな。
「私たちも精霊との契約を考えないとね」
「ああ。ここを卒業したら必要になるだろうし、ぼちぼち探す必要はありそうだ」
卒業までに契約をしない生徒も多いって話だけど、やっぱりみんなできるものなら契約を考えているみたい。
ただ、こればかりはどうしても相性という問題もある。
だから、納得できずに卒業までに契約できない先輩も多いのだ。
……ってヴィルタさん先輩が言ってた。
あ、そうだ!
まずは契約精霊を体感してみるっていうのはどうだろう。
精霊くんに協力してもらって先輩たちに魔法を使ってもらえば、どんな感じかわかりやすいんじゃないかな?
どう? 精霊くん。
『え、嫌だ』
え~? なんで?
いい案だと思ったのに。
『ボクは最強だからね。ボクが認めた精霊使い以外に使われるなんてごめんだよ』
むむ……。
そっかあ。まあこればっかりは相性だもんねえ。
私たち精霊使い側だけでなく、精霊たちのほうの相性もだって無視できない。
『シエルはボクがいないと駄目だからね。しかたないからこれからも面倒見てあげるよ』
生意気な!
……とも言い切れない! いやあ、いつもお世話になっています。
これからもぜひお世話してくれると助かるなあ。
『そういう素直なところ、君のいいところだと思うよ』
うん。やっぱり私と精霊くんは相性がいいのだ。
これからも二人で仲良く強くなっていけるといいなあ。




