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属性なんて山盛りなほど良い  作者: 椿


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4/7

魔法少女が、仲間になった!

 「あ、あの! 俺、二組の井上って言います!」


 「うん、それで?」


 目に見えて緊張している男子生徒と、それとは正反対に淡々と言葉を返す彼女。もしかして、これは告白の現場なのか? まだ入学式から一日しか経ってないんだぞ?


 「今日は羽崎はざきさんにお話があってですね……! あの……!」


 少し間を置いて、意を決した様子で思い切り頭を下げた。綺麗なお辞儀のまま手を差し出し、うわずった声で気持ちをぶちまけた。


 「一目見て好きになりました! 僕と付き合って下さい!」


 「ごめん無理」


 「えっ」


 井上君が言い切ると同時に、ほぼノータイムで告白の返事が返球される。流石の彼もここまであっさりと断られると思っていなかったのか、石の様に固まってしまった。


 「え、いやあの……だ、だったら! 友達からお願いします!」


 「よく分からないけど……貴方とお話するより、何か食べてる方が楽しいよ?」


 それは間接的に、全てを否定する悪魔の言葉だった。流石のこれには、井上君に軽蔑の視線を送っていたるなも、同情の眼差しに変わっていた。


 「じゃあ、私はこれで」


 「あ、はい……」


 スタスタと、何事も無かったかのように踵を返す羽崎と、呆然とした様子でとぼとぼと帰って行く井上君。結構イケメンだったし、自信もあったんだろうな。ご愁傷様、あんたは勇者だよ。


 「……居なくなったかな」


 「趣味の悪いことをしちまったな。他人の情事を覗き見るなんてよ」


 「しょうがないよ。見なかったことにしておこ」


 「つうかあの女、ぼけーっとした顔してえらく辛辣だったな。気持ちは分からんでも無いけどよ……」


 最初から答えが決まっていたのだろう。やはりあれほどの美人ともなれば、告白なんかも日常茶飯事なのかもしれない。いや、きっとそうだ。僕程度がお近づきになるのは、やっぱり無謀なのかもしれない。


 いや、るなや黒永さんとも仲良くなれたのだ。目指せ、属性マスターだ。必ず、彼女の属性も感じてみせる。


 その思考に呼応する様に、電子音のチャイムが鳴り響いた。何処の学校でも流れるそれは、始業5分前の合図だった。


 「やべぇ、早く行くぞ! あたしは先公に目ぇ付けられてるから、遅刻はめんどいんだよ!」


 「ギリギリ間に合うかな……! 早起きしたのに遅刻は、僕も嫌だしね……!」


 校舎裏から僕たちのクラスである、四階の一年一組までは結構距離がある。少なくとも、走らなければ間に合わないだろう。


 二段飛ばしで階段を駆け上がり、教室のドアを思い切り開ける。ちょうどその瞬間、朝のHRが始まるチャイムが鳴った。


 「はぁっ……はぁっ……ギリセーフ」


 「ぅ…………!」


 ほぼ全力疾走だったのに、るなは軽く息を切らしてるだけだ。それに対し僕は彼女について行くので精一杯で、喋れないくらいに息切れを起こしていた。


 教室ではちょうど出席確認をしているところで、あと数秒遅れていたら間に合わなかっただろう。


 「はい、二日目から遅刻者はいないようで安心しました。では、朝のHR始めますね」


 淡々と仕事をする氷室先生の連絡を聞きながら、僕はいくつかの視線を感じとっていた。チャイムの音と僅差で入ってきたというよりかは、るなと一緒に入ってきたことが目立ってしまったようだ。


 彼女を見る目はあまり良くは無い。この学校はそこそこの進学校なので、生徒も真面目な人が多いのだ。そんな中、僕は二日目からるなと一緒に遅刻しそうになっていた。


 学校というのは不思議なもので、そんな些細なことで関係があると結びつけられてしまう。多少の居心地の悪さを感じつつ、僕は二日目を過ごすことになった。


 今日も授業は無く、午前で下校の時間である。周囲には8割方グループが出来ていて、昨日の親睦会がどうのこうのと話している。朝のこともあって、もはやそこに入る余地はないように思える。


 「おい、ちょっとこっち来い」


 「え? あ、うん」


 一応るなという友達? が出来ているから良いかと納得していると、その彼女から声をかけられた。一緒に教室を出て行くと、後ろから誰かの声が聞こえてきた。


 「やっぱあいつ、金髪のやべー奴と仲良いみたい……」


 そういうのは僕達が居なくなってから話して欲しい。だが、このクラスでの僕の立ち位置は決まったみたいだ。


 クラスのヤンキーにパシられる陰キャ、というところだろう。それはそれで良い属性で美味しいな。ヤンキーが美少女であるのが点数高い。


 「仕方なく! 仕方なくだけど、友達になったからな! 友達らしい事しにいくぞ!」


 「良いけど……友達らしい事って何? どこかに遊び行くとか?」


 「そそそそそういうのはまだ早いの! ちゃんと段階踏んでいかないと駄目なんだから!」


 「えぇ……じゃあ、どこか近くでご飯でも食べていく?」


 「え……? そ、そういうのってしても良いの?」


 意外とそういうことを気にするタイプなのか。普通に良い子で、見た目とのギャップが激し過ぎる。友達という関係を美化しすぎている節もあるし、かなり純朴な様だ。流石は魔法少女。


 「あんだよ!? そんな顔であたしを見んな!」


 「別になんとも思ってないって……それより、何処が良い? 駅前なら何店かあるし、僕は何処でも良いよ」


 「友達と飲食店入ったこと無いから、蓮が決めて」


 そういうことなら、こちらで決めさせて貰おう。確か駅前にあったのは、パッと見た感じハンバーガーと牛丼のチェーン店、後はラーメン屋とファミレスがあったはずだ。牛丼とラーメンは無いとして、残るの二つ。無難に、失敗しない方にしておこう。


 「じゃ、ファミレスにしよう。それで良い?」


 「ファミレス……初めて行くかも」


 「……今までどんな生活してたの?」


 「い、良いだろ別に! 最近まで魔法少女の活動が忙しかったんだよ! 文句あるか!」


 怒りつつも、彼女の顔からはワクワクが隠しきれていなかった。だって、擬音が聞こえてくるほどだもの。幻聴だけど。


 しかし、こんなことで喜ぶなんて、キラキラとしたイメージが強い魔法少女も、色々なことを犠牲にしているのだろう。


 だって、ファミレスに行くだけでこんなに嬉しそうにしているのだ。それは、そんな普通のことが今までできなかったことの裏返しであるように思える。


 道すがら魔法少女について聞くと、それは確信へと変わった。魔法少女は世界平和のために戦っているらしい。誰も知らないところで、誰にも感謝されずに青春時代の大半を犠牲にしてまで、彼女は戦っているのだとか。


 「魔法少女って、字面だけ見ればキラキラしてるけど、実態は血生臭くてさ。同業者は他人を邪魔して引き摺り下ろすことに躍起だし、誰も世界平和なんて真面目に考えてないんだよ。当時のあたしはそれが凄いショックだった」


 毎日自由な時間はほとんど無く、ただ悪意と暴力に晒され続ける。そんな日々を過ごしていれば擦り切れて行くのは当然の帰結だった。


 「最後にはあたしも、暴力でしか解決できなかった。他の魔法少女を叩きのめして、敵も全部返り討ちにして、それでようやく戦いはマシになった。だから、これからは思いっきり今までの分楽しんでやるんだ」


 そういう彼女の笑顔は美しく、生温い世界で生きてきた僕には眩し過ぎた。そして同時に思う。その輝きに、触れたいと。


 「そっか……じゃあ、僕はるなが満足するまで付き合うよ。友達だし」


 「おう! よろしくな、蓮!」


 そこから数分程度で、目的のファミレスに到着した。赤い看板の、何処にでもある普通のファミレスだ。


 「おぉ! すげぇよこれ! オムライスにデミグラスソースかかってるぞ!」


 「そんなに……?」


 ただのオムライス一つでこれほど喜ぶなんて、どれだけ酷い環境だったんだ? その境遇を想像するだけで、悲しくなってくる。ぐでぐでになるまで甘やかしてぇ。いや駄目だ、我慢しろ。流石にそれは距離を詰めすぎだ。


 俺は湧き上がる欲望を必死に塞き止めながら、努めて笑顔を浮かべた。油断していると、気持ち悪い笑みを浮かべてしまいそうだから。


 「パフェもあるよ。これとか、値段の割に美味しいって聞いたけど」


 「へ、へー……お金足りるかな」


 「良いよ、今日は僕が出すから。るなは好きなもの一杯食べな?」


 「へんな気ぃ使うなよ。お金のやり取りは友人関係を拗らせるって、どっかで聞いたことあるぞ」


 別に良いのに……あの話を聞いた後では、何かしてあげたくなるのが人情というものだろう。それに、女子と二人で食事に来て割り勘はダサい。仕方ない、ここは彼女のピュアを利用しよう。


 「るなこそ知らないの? 友達っていうのは、奢ったり奢り返したりするものなんだよ? そうしたら、また一緒に行く口実が出来るでしょ?」


 「なるほど……つまり、次は私が奢れば良いって事だな?」


 「そういうこと。だから、気にせず奢られる方が正しいんだよ」


 適当に思いついたことを言うと、るなは納得した様子でパフェを注文した。それでいいんだ。たった数百円で彼女が笑顔になるなら、安い買い物に違いない。


 「えへへ……パフェ美味しい……」


 僕が目の前に居るのに、それすら忘れて破顔する彼女は大変可愛らしい。庇護欲のようなものを大いにそそられる。超頭撫でてぇ。


 ほぼ強引にるなと友人関係を結ぶことになったが、本当にラッキーだった。属性の多い彼女を知ることは、俺の本懐であるのだ。だから、もっともっと彼女のことが知りたい。


 「あ、そうだ」


 「ん? どうしたの?」


 パフェに夢中になっていたるなは、ふと何かを思い出した様子でスマホを取り出した。


 「連絡先、教えろよ。契約は契約だ、それはきちんと守らないとな。だから、勘違いすんなよ? 別に、交換したくてする訳じゃないからな!」


 「分かってるって。はい、どうぞ」


 なるほど、ツンデレの意味が分かってきた様な気がする。るなはストレートな感情表現が苦手で、少し回りくどくなってしまうのだ。とはいえ、それを承知している僕からすれば、ただ可愛らしいだけだが。


 「メッセージ送ったら、きちんと返せよ? 既読無視とかしたら、怒るからな!」


 「分かってるって。ちゃんと返すから」


 「スタンプだけも駄目だぞ!」


 「はいはい、すぐに返信するよ」


 ……ちょっと拗らせているけど、まぁそれも彼女の魅力の一つだろう。僕はまた一つ、るなについて知ることが出来たのだった。

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