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オートセーブは深夜0時に  作者: 夕凪の鐘
Episode5 花鳥風月
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28話 その優しさが苦しくて

「……あれっ、ここは……」

「あっ、目を覚ました! 良かった……」

 レイジは仰向けで倒れていた。汗は引いていて、シャツも着替えてある。周りを見渡すと、今いるのは医務室のようだ。ベッドの上で寝ている彼を、心配しつつも目覚めたことに安心しているヒカリたちの姿があった。

「どうして、何が……そうだ! 試合は!?」

 レイジの記憶にあるのは、準決勝の2ゲーム目、後半までだ。戦いの最中突然意識を失ったことを思い出した彼は、焦るように問い詰めた。ヒカリは残念そうな目をして、真実を話した。

「試合中、突然レイジが止まっちゃって……相手のスマッシュが入ったのに、打ち返さなかったからそれが決まっちゃって、試合が終わってもレイジは動かなかった……そして……」

 そこで倒れてしまったということだった。分かったのはそれだけではない。皆は話すことを避けていたが、確定した事実。それは……


「負けたのか……俺……」

 相手が20点を取っていた。レイジは追いつけないまま、1点を入れられた。21点先取のこのルールでは、中断あるいは棄権ということにはならない。敗北が確定した直後のダウンということだ。周りには負けたショックで倒れたと思われているのだろう。現にここにいる人は皆そう思っていた。


「うん……決勝も終わって、レイジの対戦相手は優勝したわ。だから、実質準優勝みたいなものよ!」

 モモカは精一杯慰めるが、レイジには何も響かなかった。狙いは優勝。それ以外は無価値、初戦敗退も同然。そう思っていたからだ。


 レイジは考えた。なぜ自分は負けたのか。負けるはずがないのに負けたのか。

 ふと頭にチハヤの姿がよぎった。彼女はさっきの試合で、能力の使い過ぎで頭を痛めていたのを思い出した。

 レイジは自身の右目に手を当てる。意識を失う直前に、急激に痛み出したのを思い出すと、一つの予想がついた。

 見た相手の願いを叶わなくさせる。その力に限界があった。そういう予想だ。

 相手の願い、つまり試合に勝ちたいという願いを叶わなくさせるために、自分が勝とうとしてしまった。けれども実力に差がありすぎて、体への負担が大きすぎた。

 そして限界を迎えてしまい、脳が緊急信号を出した。結果目が痛み出し、開けるのもつらくさせることで能力を発動する条件である、相手を見ることに制限を与えた。

 それが真相だったのではないか。確証はないが、レイジは、敗因は自分の力不足だという事実に変わりはないということを受け入れていた。


 悔しかった。

 人生で初めて負けたこと。それだけではない。仲間の思いを背負っておいて、応えることができなかったこと。今まで味わったことのない苦しさが、レイジの心を締めつける。

 そもそもスポーツなんて不得手なもので、自分自身で相手の夢を叶わなくさせることなど今まで一度たりともなかった。他人を利用し、自分に負担がかかることはなかった。今の試合だって、優勝を組阻止するだけならレイジはあっさり負けて決勝で妨害をすればよかっただけの話だ。それでもあの試合は、彼が勝たねばならなかった。

 なぜだ……なぜ勝つ必要があったのか。約束を、交わしてしまったからだ……


「ごめん、ヒカリ……勝たなきゃいけなかったのに……約束したのに……」

 敗北。それは優勝賞品の獲得失敗を意味し、優勝して獲得したチケットで2人で遊びにいくという約束を果たせなかったことを意味する。

 正面にヒカリがいるのは分かったが、レイジは顔を上げることができなかった。


 レイジたちは黙って医務室を後にした。ヒカリはレイジに対して何も言わなかったが、ここでは話しずらいだろうというチハヤの心遣いで場所を変えることにしたのだ。


 荷物を置いてあるギャラリー席に戻ると、ハルカが待っていた。

「お待たせ、ハルカ。荷物見てもらってありがとう。」

 モモカの声が聞こえて振り返ったハルカはこくりと頷き、顔を前に向けた。

 コートは片づけが始まっている。いくつかのコートはまだ残してあり、楽しそうに打ち合っている人たちもいる。

 レイジは、もう試合が終わってしまった事実を受け入れると、再び下を向いて目を瞑ってしまった。後悔の気持ちは収まらなかった。


「もう、いつまで落ち込んでいるのよ!」

 チハヤはレイジの前に立つと叱咤する。それでも彼は顔を上げなかった。

「始めたばかりで、大会で4回戦まで進めたのだって十分誇れることじゃない! 一度優勝できなかったことくらい、気にすることなんかじゃないわよ!」

 チハヤだって、始めたばかりの頃は全然勝てなかった。風の流れが読めても、体が追いつかずろくに点を取れなかった。能力が目覚め、瞬時に計算できるようになっても、動きを速くしないと間に合わないため、まだ勝てなかった。悔しい思いを経験したからこそ、頑張って体力をつけた。動き方を改善した。

 そしてようやく、思い通りのプレーができるようになった。それまでにかかった年月や続けた努力の量を考えると、始めて1ヶ月の初心者が3連勝し、全国大会出場レベルの大学生相手に負けてベスト4で終わったことで立ち直れずにいることが許せなかった。


 チハヤの気持ちが分からないわけではない。けれどもこの試合は、優勝賞品が懸かっていた。そして試合の前に、優勝して賞品を取ると約束してしまった。そのことが、ずっとレイジの頭から離れない。


「レイジ……」

 隣からヒカリの声がした。

「残念な気持ち、分かるよ……私こそ、勝てなくてごめんね。でもやっぱり、難しいんだよ。試合に勝つのって。」

 ヒカリだって、負けたことを悔やんでいる。けれどもレイジと違って、いつまでも落ち込んではいない。うまくいかないことを受け入れてきたヒカリ。受け入れず、強引に意のままに変えてきたレイジ。2人の違いはそこにあるのだと思った。

 そして、レイジはようやく理解した。この島は、この世界は彼の知っている狭く小さなものではない。すべてを思い通りにできない、広く大きな世界だということを。

 だからこそ、生き甲斐のある世界じゃないか。レイジは不気味に笑いを見せると、深呼吸して気持ちを入れ換えた。

「そうだな。俺が間違っていた。目が覚めたよ。」

 ようやく顔を上げたレイジを見て、チハヤはほっとした。

「分かったならいいのよ。それと……これ。」

 チハヤは目を反らしながら、ポケットから紙を取り出した。ヒカリは首を伸ばし何かを確認すると、思わずあっと声が出てしまった。

 その紙は優勝賞品の、とあるレジャーランドのペア割引チケットだった。

「その……私のせいで獲れなかったもんだし、少しなら、奢ってあげるわよ。だから……」

 一緒に遊びに行かないかと、直接口に出しはしなかったが要はそういうことだった。ヒカリは両手を握りしめ、口を強く噛み締めている。


「……悪いがそれは受け取れない。」

 レイジは下を向いて答えた。チハヤに何か言い返される前に、続けて口に出した。

「ヒカリと一緒に行くと約束したからな。だから、お前とは行けない。」

 ヒカリと行くためにこの大会に出て、分けてもらったチケットで他の人と行く。そんなことはレイジにはできなかった。

 その施設に行きたかったわけではない。ヒカリと行くと約束して、それを破りたくなかったからだ。

「ヒカリ、チケットは獲れなかったけど、予定通り週末に行こうぜ。お金は2人で出し合うことになるけど……」

 ヒカリは驚いていた。励ましつつ誘おうとは考えていたが、まさかレイジから誘ってくるとは思いもしていなかったのだ。驚きはしたが、嬉しかった。ヒカリは快く返事をした。

「本当に!? やったあ!」

 よかったねと微笑むモモカとヒカリは両手の指を絡め合わせて飛び跳ねる。チハヤはぽかんとした顔を見せた。


「……分かったわ。これはあなたたちにあげる。」

 そう言ってチハヤは自分で獲得したチケットをレイジに渡そうとした。本心はそうしたくないということを見抜いたレイジは、手を伸ばさなかった。

「悪いな。気持ちは嬉しいけど、それはチハヤのものだ。受け取るわけにはいかない。お前だって、一緒に行きたい人くらい他にいるだろう?」

 元々チハヤはチケットが欲しくてこの大会に出たのではない。ただバドミントンがしたかっただけだ。そして人にあげるくらいなら自分で使おうと考えるような人でもない。加えてこう言い返されて素直にモモカやハルカを誘うような人でもない。

 それが分かっていて聞き返したのも意地悪なことではないかと少し反省したが、言ってしまった後ではもう遅い。フォローする間もなく、チハヤは機嫌を損ねてしまった。

「ば、馬鹿にしないでくれる!? 私にだっているわよ、男の1人や2人! いらないっていうなら私、このチケット使っちゃうんだから! いいの? 私、他の男を誘ってきちゃうよ!?」

 どうしても止めてほしいようで、平気ででまかせを言っているというのはレイジだけでなく、モモカも分かっていた。ヒカリはそうと気づいてなく、むしろ気になる異性がいるのにレイジを誘おうとしていたのは自分への当てつけなのではないかと疑っている。


 そしてその直後、レイジが準決勝で戦い負かされたあの相手が現れた。狙っていたかのようなタイミングだったが、ずっとチハヤを探していてようやく見つけたようだった。

「やあー、ちーちゃん。それって僕のことかい? 安心したまえ、僕も持っているんだ。」 

 チハヤが鬱陶しく思っているその男は、優勝して獲得した割引チケットを振り回して彼女の元にやってきた。

 背後からやってきたがその声を聞いただけで気づいたチハヤは、咄嗟にレイジの後ろに回ってしがみついた。

「そんなわけないじゃない! 私はこの人と行くんですー!」

 レイジの服をぎゅっと握るチハヤを見て、男は石のように固まったが、すぐに調子を取り戻した。

「はっはっはっ。恥ずかしがらなくていいんだよ。まっ、そんなちーちゃんが好きなんだけどっ。」

 そしてレイジのほうを見て、余裕の笑みを浮かべて質問した。

「君はさっきの……それで? 君はちーちゃんとどれくらいの付き合いなんだい? 僕たちは1年以上の付き合いなんだけど。」

 今日会ったばかりだし、付き合いも何もない。そう素直に返そうとしたが、それより先にチハヤの口が動いた。

「は……裸の付き合いよ!」

 男とヒカリは凍りついたように固まった。

 レイジが倒れている間に着替えさせる必要があり、替えのシャツを持ってきてもらったのがチハヤだっただけだ。勘違いしているヒカリのためには今すぐにでも弁明、というより誤解だと説明すべきだったが、今にも逃げていきそうな男を見てもう少し待ち、いなくなってから話そうと決めた。

「なるほどね……よく分かったよ。なら話は早いね。ちーちゃん、今すぐ僕とも裸のお付き合いを!」

 そう叫んで全裸になった男は、アリーナの事務員に連行されていった。


「だから、本当に俺とチハヤは今日初めて会ったんだって。ていうかそれを言ったら、ズボン貸してくれたお前とも裸の付き合いをしたってことにもなってしまうから!」

「……貸した?」

 レイジはヒカリの誤解を解こうとしたが、そのときうっかり口を滑らせてしまった。聞き逃さなかったチハヤは、詳しく話してもらおうかと言って踏み込んできた。

 何のことだかと(とぼ)けるレイジをよそに、チハヤは彼のシャツを捲り上げ、ハーフパンツのゴムが通っているところを指で摘まみ、引っ張った。

「なーんかきつくない? このズボン。」

 履いていてきついと感じているのは事実だが、初心者なので適当にサイズを選んでしまったからだと言い訳をした。

 そもそも悪いのはヒカリである。

 レイジの着替えを取りにギャラリー席へ戻らなければならないとき、チハヤとヒカリが名乗りを上げた。先に行こうとしたチハヤと、鞄の場所にすぐに辿り着けると言うヒカリは言い合いの末2人で行くことになり、チハヤがレイジの鞄を漁っている間にヒカリは今履いているハーフパンツを脱ぎ、まだ今日は履いていない新しい物に履き替えた。

 そしてチハヤが細目にして恥ずかしがったりしながら下着含めてレイジの着替えを袋に詰めて運んでいこうとしたのを、後は私がやると言って引き受け、こっそりズボンを入れ換えて、医務室の担当者に渡した。

 そして引き抜いたレイジのズボンはというと、2回ほど折り畳んでヒカリが今履いているハーフパンツに挟んである。シャツに隠れていて(はた)からは見えないが、おそらく屈めばすぐに分かることだろう。見つかればまず言い逃れはできない状況だ。


「ふーん。まあいいわ。」

 チハヤとしては、あの男を撒いてしまえれば何でも良かったので、それ以上は疑わなかった。

「それじゃあ、そろそろ帰りましょう?」

 何かあるのかと聞いたヒカリには改めて説明したが、チハヤは寮生活のため、家がこの近くでそのうえ連休中であっても1時間半以上かけて帰らなければならない。寮を出る前に外出の要件と帰宅時刻を連絡しておかなければならず、そして時間を守らなければならない。ハルカも同じく寮生活なのだが、特に理由もなく出られて門限も定められてないから問題なく、モモカは実家暮らしだ。とはいえ、ここからだとチハヤ以上に帰るのに時間がかかる。

 現在時刻は午後6時。大会の閉会式が終わってからそれほど時間は経っていないが、これ以上ここにいるわけにもいかなかったようだ。

 けれどもチハヤの本心は、連休中はこの町に居たい。少なくとも、今日だけは家に帰りたい。というより、もう少しここに居たいというものだった。内心別れを惜しんでほしい。欲を言えば引き留めてほしい。チハヤはそう思っていた。

「いいじゃん、門限なんて。むしろ今から1時間以上もかけて寮に戻るより、市内の実家に帰ったほうが安全だぜ。」

 レイジの意見にモモカは賛同したようで、チハヤを説得した。

「そうだよ。久しぶりに家の近くに来たんだし、連休も一緒に過ごせばいいじゃない!」

「そっ、そうね……私は別に寮に戻ってもいいんだけど、どうしてもって言うなら考えてあげなくもないけど?」

 なぜそこで素直に言えないのかと呆れたが、実際チハヤが言ってもらいたがっているのは別の言葉だ。

「だったら連休中、一緒に出かけようぜ。家はどの辺なんだ? ちなみに俺の最寄りは、小見宿駅だ。」

 知っているので聞く必要はないのだが、レイジの家と近いことを知ればすんなりと考えを変えると思ってのことだ。

「へぇ!? 奇遇ねっ。その隣の小波花(こなみはな)よ。」

 素っ気ない感じの言い方だが、内心喜んでいるのが駄々漏れだ。

「……ちなみにこの子は?」

 チハヤはチラッとヒカリを見て言った。

「ヒカリは宮門(みやかど)だ。」

 レイジの住まいの最寄り、といっても歩くと結構時間がかかる小見宿駅から3つ離れた駅。それがヒカリの家の最寄り駅、宮門駅だ。

 それを聞いたチハヤは、分かりやすく優越感に浸っていた。

「ふぅーん。私のほうが近いのね……ふふぅーん。」

 さらに言うと電車を経由せず家から家へ向かったほうが早いというのは、別に言う必要はない。むしろ今の家を知られてはまずいので、それ以上の情報は話さなかった。

 チハヤの通う高校の辺りの駅と比べて、この町の近くは駅と駅の間隔が広い。一駅違いだからといって家がすぐ近くにあるとは考えないのは不思議なことでもない。遠出するとき集合しやすいというくらいにしか、彼女は考えていなかった。


「決まりだね。チハヤ、今日は家に帰ろう。寮の管理人さんには、私からも話をしておくからさ。」

 1回くらい平気だというモモカの後押しに流されたチハヤは、連休を寮ではなく実家で過ごすことを選んだ。もちろん部活に通うために往復3時間かけるのは大変だが、毎日あるわけでもないし明日は休みだ。あっさりと決意した彼女には、寮の掟を破った罪悪感というものはなくなっていた。


「それじゃあ、またな。」

 駅に集まった5人で、レイジとチハヤは反対方向に向かう。歩道橋を渡り、向かい側のホームに行かなければならないが、先に来るのはヒカリたちの乗る電車だったので、彼女たちが乗るまで同じホームにいた。電車に乗る3人を見送ったレイジとチハヤは、歩道橋の代わりにエレベーターを使って反対側のホームに移動した。

 友達の友達であるような感じのヒカリとモモカ、ハルカが電車内で気まずくなっていないか不安だったが、ヒカリは1駅で降りるので問題はないだろうと考えた。


「あ、もう着いちゃった……じゃあ、私ここで降りるね。」

 5分足らずで小波花駅に着きドアが開くと、チハヤは席を立って電車から降りた。

 レイジも席を立ち、チハヤを見送りにいった。

「ねえ、レイジ……良かったら明日……」

 チハヤは一緒に出かけないかと誘おうとしてきた。電車から降りる直前になったら言おうとずっと電車の中で考えていたことを知っていたので、レイジはすんなり返事ができた。

「悪い、明日部活だから。じゃな。」

 勇気を出して言葉にしたのに対してあまりにも軽い返事についムカついたチハヤは、思わず言い返してしまった。

「なっ! 何よそれえ!?」

 レイジは笑顔で手を振ると、ドアが閉まった。

 チハヤの心臓の鼓動が、今までにないくらい早くなる。ガタンゴトンと音を立て、電車は速度を上げ始める。そして、彼女は大声で言ってしまった。

「レイジの馬鹿! だいすきー!」

 電車はどんどん速度を上げ、チハヤの視界から消えていった。どうせ電車の音にかき消され聞こえてないだろうと開き直ったチハヤは、スマホを開きモモカにテレビ電話をかけた。


『もしもし。どうしたのチハヤ?』

『ちょっと、ハルカに聞きたいことがあってね……』

 ならハルカの電話にかければいいじゃんと突っ込むモモカだったが、チハヤはそのままハルカに尋ねた。

『私とヒカリの準決勝……本当に私は勝っていたの?』

 ハルカは首を横に振った。

 少なくとも2ゲーム目、勝負を分けた最後の1球は、ヒカリの得点だった。つまりその地点でヒカリの2連続得点が成立、レイジのようなトラブルが起こらなければ、その後は1点も取られずにヒカリは試合を制していた。

 審判の誤審によってチハヤの勝利になったが、遠くで直接見えなくても能力で位置を把握できるハルカには、勝敗の真相が分かっていた。


『……そう……ありがとね、ハルカ。』

 力なく電話を切ったチハヤは、しばらく固まっていて、空を見上げた。そしてポケットから、優勝賞品のリゾートチケットを取り出した。

「やっぱり、私はレイジと行けなかったのね……」

 するりとチハヤの手から抜けたチケットは、風に流され海のほうへ向かって飛んでいった。

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