06 別れ
あぁ、あと2日でGWが終わってします……
――ルシアは、木製のテーブルの前に、腰を下ろしていた。
対面には、白髪をまとめた老婆が座っている。
冒険者の男はもうここにはおらず、すでに宿へと帰っていった。
「……そうですか、魔物に襲われていたところを……」
老婆は、深く息をつきながらも、どこか安堵したように目を細めた。
その視線は、テーブルの脇で眠るアーサーへと向けられる。
「この子が無事で、本当に良かった。あなたも……大変でしたね」
ルシアはわずかに視線をそらした。
「……私は、ただ見つけただけです」
ルシアは自身が強大な力を持っていることを隠しているため、言葉を詰まらせてしまう。
「見つけただけで、ここまで抱えてこられる方ばかりではありませんよ」
老婆は穏やかに微笑んだ。
その笑みは、ルシアの内側にある“何か”を見透かしているようだった。
「今日はもうこんな時間ですし、あなたも疲れているでしょう。
よろしければ、ここで休んでいってください」
老婆はルシアに今日はここに泊まるよう提案をする。
「……いや、私はもうーー」
「遠慮することはありませんよ、その方がこの子も喜ぶでしょうしね」
ルシアが老婆の提案を断ろうとすると、老婆が笑顔でその声を遮った。
老婆の有無を言わさぬ笑みは、魔王でさえたじろいでしまう。
そして、ルシアは小さくうなずいた。
古い石造りの部屋は夜の冷気をわずかに含んでいた。
ルシアは老婆が貸してくれた寝台に腰を下ろし、隣で眠るアーサーを見つめる。
さきほどまでの喧騒が噓のように、赤子の寝息は静かだった。
(……)
ルシアは何も言わない。
ただアーサーの寝顔を見ているだけだ。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
魔王として生きてきた年月の中で感じたことのない種類の感情だった。
ルシアはその感情を胸に秘めたまま、体を寝台に預けてそっと目を閉じた。
まだ太陽が昇り切らない早朝。
ルシアは静かに孤児院をあとにしようとしていた。
「……お早いのですね」
背後から声をかけられ、振り向くとそこには昨夜と同じように老婆が立っていた。
「……昨夜は世話になりました。あの子をお願いします」
ルシアは老婆にお礼を告げ、何かから逃げるようにその場を去ろうとする。
「……いえいえ、またいつでも会いに来てあげてくださいね」
老婆はルシアを引き留めることはせず、ただ微笑みながら言葉をかけた。
(……)
だがしかし、ルシアの足が止まる。
まるで、何かに後ろ髪を引っ張られているかのように。
「……えぇ、そうさせてもらいます」
少しの沈黙の後、ルシアは返事をし、今度こそその場を去るのであった。
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