誘導劇場ーー教室で踊る転校生
誰かに腕を掴まれた
その感触が恐怖を掻き立て
一人だから襲ったという言葉に
涙が流れ「こわい」と呟いて
学校へ向かった
涙を拭いて教室に向かうと
席についていつものように
本を広げるが周りが騒がしく
集中できない
嫌でも耳に入った声は
「転校生が来る」と浮かれる声や
「どんな子か」と噂を流す声が聞こえ驚く
(初耳だ)と心で呟いて
首を横に傾ける
そこには空席が一つ開いていた
あまり人と関わりたくない朔は
他の場所にもいくつか
空席があることを確認して
(きっと気の所為だ)と
考えることをやめると
気の遠くなる朝の時間を必死に耐えた
いつもより少し遅れて入ってきた先生が
「転入生を紹介する」と一言だけ言うと
騒がしかったクラスは静まる
その静寂を合図に
ノックをせずに入ってきた
転入生は「白爪 三葉です」と
指示を待たずに自己紹介をした
これには先生も困ったように頭を抱え
「ノックはしましょう」と注意する
三葉は狐の形をした手を
前に出すと中性的な声で
「・・・したよね?」と聞くと
地声で「うん したよ」と
一人会話を始めた
その姿に先生は口をぽかんと開けて固まり
クラスはあまりの自由さに引いていた
周りをぐるっと見渡した三葉は
先生を置いて「あそこの席でいいですか?」と
聞くと放心気味な先生は
「あぁ」とあっさり答えてしまう
三葉に流される先生を見て
呆れながら(流されないでよ先生でしょ)と
怒を込めて睨むのを
ギリギリで思いとどめた朔は
(目立たない目立たない)と心を
落ち着かせながら
隣りに座る転校生を見て
(無理そうだなぁ)と諦めた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
朔の隣り席に座った三葉は
【あぶないあぶない】と小さく呟くと
二葉も【空席が何個かあったからねぇ】と頷くが
【それでもやりすぎよ】と怒り気味に注意する
反省をしない三葉は
【普通にしてたら朔の隣
取れなさそうだったし】と
言い訳をしながら隣の朔に話しかけた




