蠢く
「本当に殺る気か?」
ボイスチェンジャーで加工された声が響く。
ダンジョンの一角に、十人前後の人影があった。
この場所は複雑に入り組んだ道の先にある袋小路、しかも転送不可能エリアの中にあるため、他の冒険者が来ることは滅多ない。
秘密の会合にはうってつけの場だ。全員が身に纏うフード付きのローブは、フードを被っている間は相手の素性が一切分からないという違法オプションパーツだ。
ストレージにあるだけで、後ろ暗いことをしていると疑われるシロモノである。実際、それは間違い無い。
彼らが集った理由は、動画にできるものでは決してないのだから。
「当たり前でしょう。殺る気じゃなかったら、こんなところまで来る筈ないでしょ?」
「違いねえ。ここにいる時点で俺達は同じ穴の狢。金目当てのクズ共ってことさ」
「そう卑下する必要はないんじゃない?」
加工されてないよく通る声が、響いた。
「その声……」
「マジかよ」
周囲のざわめきを意に介さぬとばかりに、声の主はフードを脱いだ。
彼女こそが、この場にいる冒険者達を集めた依頼主だった。
「みんな、お金欲しいよね? 鬱陶しい奴には消えて欲しいよね? 私もそうだよ。いいじゃん、やっちゃおうよ。私達はせっかく力を持ってるんだ。ちまちましてるなんて勿体ないと思わない?」
冒険者達は、息を飲んだ。この中で一人でも録音及び録画していれば、彼女は一瞬で破滅する。
この場で顔と声を晒すというのはそういうことだ――だが逆に、それは覚悟の表れとも取れる。
言葉に飲まれるように、冒険者達は参加することを決めた。引き返す者達は一人もいない。
「いいね。それじゃあ具体的なプランを話そうか。計画名はそうだな……黒鎧&我妻キル討伐遊戯……じゃないクエストってとこかな?」
依頼主――リンネ・フィストオンはニィっと口角を吊り上げた。




