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どんなに巡っても


(自分の内側から溢れ出して、周りにも被害を出してる)


なんて傍迷惑な力だろう。

伊澄は自分の手のひらを握りしめながら力なくうなだれた。


けれど、この世界を理解できたのは大きかった。

断ち切る未練がある。セリオスはその為に伊澄を死後、この世界に呼んだということ。


そして……その未練は今もどこかに存在している。


「イスミ……?」


掴まれた肩に伊澄は視線を落とした。

振り返ると静かに聞いていたアルスが、大丈夫かと心配そうな目で見つめていた。

伊澄は、大丈夫だと答えるように頷く。


「思うところがあっただけ」


思い出していたのはあの黒い存在。


──私を、置いていくの?


あれはずっと伊澄に語りかけていた。

まるで自分は一心同体だとでも言うように。

いや、あれは伊澄と一心同体だったのだ。


愛されることを諦めて、ひとりでいいと思っていた頃の自分。

その思いのままそばにいてくれた、自分自身。


けれど、アルスと出会って変わってしまった。

アルスに惹かれて、アルスに選んで欲しい、愛して欲しいと思ってしまった。


きっと、あの伊澄は今の伊澄に置いていかれる、無かったことにされると思ってしまったのだろう。


(暴れ回るのも無理ない……)


きっと、今の伊澄がその立場だったら同じことをしていただろう。

けれど、それを許す訳には行かない。


伊澄には、アルスがいるから。


「決着を……つけなくちゃ」


私自身と、と伊澄はどう決着をつけるか考えていた。

消滅させるには、両親への未練を断ち切らねばいけないということだろう。


それを改めて自覚してしまった今、どうすべきなのかを考える。


(もう元の場所に戻れるわけないもんな……)


死者が生者に会いにいくなんて出来るわけもない。

それに、もう伊澄は両親と会いたくなかった。


「あとは……自分次第なのかな」


ちくり、と胸を刺すように腕が痛み出す。はっとして押さえながら視線をずらすと、黒い痣が前よりも広がっていた。


まるで、伊澄を飲み込もうとするように。


「…………!」


もう時間が無い。そう伊澄は直感する。


「どうした、どこか痛いのか」


「うんん、なんでもない」


そっと、アルスから痣を遠ざけるように隠しながら伊澄は司祭に背を向けた。


「ありがとうございました。助かりましたよ」


そう告げると背後で司祭がそっと、安堵のため息を吐いたのが分かった。


「もう会うこともないでしょう。お元気で」


きっと、再会などは無いだろう。どんなに輪廻が巡っても、と伊澄は思った。





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