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宿った力の根源


まるで予言を告げるように、司祭は伊澄に迫る。


「あなたはどうしてそんなに動けないのか。それはその糸、縁があなたのゆく道を塞いでいるからですよ」


じりじり、と司祭の言葉は伊澄の足を絡めとっていくようだ。


「縁、すなわち人との絆。生きている間に結ばれる鎖とも呼べるもの。生きている間はその世に引き止めてくれるものですが、死んだあとは重りとなりどこにも行けなくなる」


「…………っ!」


その言葉を、伊澄はセリオスからも聞いていた。

この世界に落とされる前、セリオスと出会った時に言われたのだ。

そのままではどこにも行けない、と。


それは、行けないではなく逝けないという意味だったのか。


「それを断ち切り、新たな旅路へと向かわせてくれるのがセリオス様なのですよ」


あらかた説明しきったのか、司祭は伊澄に目を向けてきた。

澄んだ水面のような穏やかな瞳だった。

どうやら、人に説くと言う矜持は失っていないようだった。


まさに伊澄はセリオスの信仰を説かれ、心の奥そこが震える気がした。

ここに落とされた理由、を──。


あなたは、と司祭は口を開く。


「結んだ縁はなかなか手放しづらく、切れぬもの。それを私たちは未練、と呼びます。あなたは死してなお、何に絡め取られ断ち切れずにいるのですか」


「わ…………わたし、は……」


そう問われ、真っ先に思い出したのは両親の顔だった。

怒り狂い、伊澄の尊厳を無視し続けた人間ではない何か。何度も落胆の顔をさせ、それでも頑張って頑張った挙句、何も出来ず振り向いて貰えなくて、全てが壊れた日。


「あぁ、そうだ……私、二人に振り向いて欲しかった。嘘でも愛してるよって、好きだよって、凄いねって……肯定してもらいたかった……」


確かに重い鎖のようだったのだ。

自信に絡みつくそれは、自ら毒に侵されるようにじわじわと染み付いて。


「だけどダメだった。諦めてたはずだったけど、諦められなかった。その想いがずっと私の中で暴れてた…………」


両親との繋がりを、苦しみながら手放せなかった。自分でも思う。手放せてしまったら楽なのに、それが出来なかった。

そして自らを苦しめるようになったのだ。

愛されたい自分が、愛されなかった結果、内側で消化できずに。


不意に、伊澄は自分の量の手のひらを見つめた。

自分に宿っているこの力の根源を知り得たから。


この手が触れるものみな溶けてなくなるのは、自分自身の内側に猛毒を宿しているから。

行き場のない未練を断ち切れないせいで。




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