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赤い糸


様々な色が陽の光で輝く。

まず目を引くのは真ん中に描かれたセリオスと赤い線だった。

セリオスは祈るように手を合わせ、セリオスを挟むようにして、赤い線は千切れている。


その上下に反転した大地が配置された絵画のようなステンドグラスだ。


「あの赤い線は、私たちが言う運命の赤い糸です」


司祭はステンドグラスに目をやりながら、ぽつりと呟いた。


「運命の赤い糸って、男女の……」


「と、思いがちですが、セリオス様のは違います。言わば、運命の赤い糸は人と人を繋ぐ糸。男女は関係ありません。人は巡り会うべくして巡り会います。如何なる時であっても」


司祭は少しばかり落ち着きを取り戻したのか、少しずつセリオスの信仰について話し始めた。


「セリオス様は人々に平等に、縁を与えてくださいます。あるべく場所に、あるべき人に。そして、世界を回しているのですよ」


曰く、セリオスは人と人の縁を巡らせる神様らしい。

それだとひとつ疑問が残り、伊澄は質問をぶつけた。


「では何故、赤い糸が千切れているのですか。矛盾しませんか」


伊澄は再びステンドグラスに目をやる。そこには無惨にも千切れ、砕け散ったように真っ二つに消えていく様を描いた赤い糸が描かれている。


巡らせて与える神様が、縁とも言える赤い糸を千切るとはなんともおかしな話じゃないのか?


そう疑問をぶつけた伊澄に、司祭はそうですね、と短く答えたあと続けた。


「人の縁は巡り会うべくして巡り会いますが、巡り会い続けたら重さで、私たちは動けなくなるのですよ」


特に、と司祭は言う。


「死んだあとの世界ではね」


司祭が口にした思わない言葉で、伊澄は弾かれるように目を向ける。

そこには、穏やかに笑う司祭の姿があった。


「どういうこと…………?」


背中に冷や汗が流れる。何故か、嫌な予感がして、伊澄の声は震えた。


「だってここは、死後の世界ですから。あなたも、セリオス様に導かれて来た、そうでしょう?」


「………………」


黙りこくって伊澄は考えた。

ここは死後の世界だと言うことは、分かっている。

自覚もあるし、それにここに連れて来られた時にもセリオスに死んでいると保証された。

では何故、私は私として存在しているのか……?

それだけが、伊澄には分からなかった。


けれど、司祭は混乱する伊澄を見て不思議そうに首をかしげた。


「なぜ分からないのです? あなたがあなたで存在しているのが、答え、全てでしょう」



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