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それでも一緒に行くよ


「いや、俺も行くよ。俺も……セリオスのことを知りたい」


視線を合わせないままの伊澄の頭上に、アルスの優しい声が落ちてくる。

悲壮感を湛えた伊澄とは正反対に、穏やかなものだった。


「俺自身にも関係することだから、一緒に行こう。それに、まだ町は物騒だからな」


アルスの言葉はどこまでも、伊澄に気遣うものだった。

伊澄には今は痛くて、苦しかった。

どうとも思われていないどころか、人間と思ってくれていないアルスの本音を知ってしまった今は。


「…………優しく、しないで」


優しくされると縋りたくなってしまうから。もっと触れていたいって願ってしまうから。


ズキリ、と心臓が跳ねるように痛みが走った。

咄嗟に痛みの出処である右腕を掴む。


(また同じところ……!)


掻きむしった場所が再び痛む。

まるで伊澄を責めるように追いかけてくる痛みだった。


(きっと、私に警告してるんだわ)


これ以上勘違いするなと、身を弁えろと。


(大丈夫、勘違いしたりしない。もう、絶対に)


下唇を噛み締めた伊澄を、アルスが覗き込むようにして顔色を伺ってくる。

心配する動作も、きっと約束のせいだ。アルスが人を殺したい、一矢報いてやりたいと願いのために。


本当に伊澄を心配しているからではなくて、あの約束のため、伊澄を終わらせてくれるために一緒にいてくれているだけなのだと。


「どうかしたか、やっぱり具合が悪いのか」


アルスにしては珍しく、慌てふためくその姿をどこか冷めた目で伊澄は見つめた。


「うんん、大丈夫。心配しないで。行くなら、行こう」


さっと、食事を済ませ伊澄は立ち上がる。


「………………あぁ。そう、だな」


やや間があった後、アルスは静かにうなづいた。

何か伊澄に言いたそうだったが、やがて静かに口を閉ざした。


伊澄は気にすることなく、部屋を出た。

その後ろを、数歩後ろからアルスが続く。


もう少しで全てが終わる、そんな予感を胸に伊澄はただ教会を目指した。


────────────────


町は幾分か落ち着きを取り戻し、復興に向けて動き出していた。

瓦礫の山を片付ける者、炊き出しをして周りを支える者など役割を自然と決め動いている。


絶望した人たちが、そのままで終わらないと言う決意を胸に動き出したら早いのだと、伊澄はただ凪いだ心で見ていた。


「人は、逞しいな」


アルスも同じことを思ったらしい。

けれど、その声は関心と敬意が含まれているように聞こえる。


「そうだね、すごいね」


一方、伊澄の声はどこまでも平坦で淡々としていた。





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