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弱くなった自分


「ねぇアルス、これからのことなんだけど……私、司祭のところに行こうと思うの」


そう伊澄は切り出すと、アルスはどうして、と首をかしげた。

それは純粋な疑問と言うよりも、伊澄の真意を図るような仕草だった。


「セリオスの望んでいることを、知りたいの。神様としての本分を知りたいって言えば近いかな……」


「それは、どんな対象として信仰されているか、と言うことか?」


「うん、ちょっと確かめたいことがあるの」


セリオスが何を望んでいるのか、それは神様として何を与えてくれるのかが分かれば自ずと知れると思ったのだ。


救いを与えるのか、それはどう言う救いなのか。

今まで伊澄はセリオスに一泡吹かせることしか考えてこなかった。むしろ気にしてこなかった。


けれど、セリオスと再会し気付かされた。

セリオスは何か期待しているのではないかと。この世界に来た理由にも通じているのかもしれないと伊澄は思い始めていた。


それに、アルスはセリオスの期待に相応しい働きをして、元の世界に戻れる、とまで言ったのだ。


その働きがなんなのか、伊澄には分からなかったが。


それが分かれば、何か一歩でも動き出せる予感があった。


それを知るために、セリオスの本質を知る必要があると伊澄は考えた。

手っ取り早いのは、セリオスを知るものに聞くのが一番だ。


その人物が司祭だったのだ。


「アルスは無理しなくていいよ。怪我をしているし、話くらいなら一人で聞きに行けるから。後で、ちゃんと詳しく話をするし」


言い訳のようにつらつらと言葉が出て来る。

一緒に行動するのは、少し気まずいかもしれない。むしろアルスは嫌かもしれないと思うと、伊澄はアルスに選択権を委ねたかった。


断る理由を先に言っておけば、アルスが来なかったとしても納得できると思ったのだ。

ただたんに、傷つくことが怖かったとも言える。


けれど、それしか伊澄には出来なかった。


少しの沈黙さえも、伊澄にとっては居心地が悪すぎた。

アルスは何を考えているのだろう。

表情を見れば、もっと分かるかもしれない。


けれど、それを思い知らされるのが怖かった。

嫌いだと思われるのは、いつだって怖かった。要らない、と言われるのと同義だったから。


ここまで来て、いらない子だなんて言われたら今度こそ、自分は立ち直れないだろう。


伊澄はいつの間にか、弱くなっていた自分に嫌気が差す。


昔は、こんなんじゃなかったのに。こんなもの耐えられたのに、と。




いつも読んでいただきありがとうございます。

ちょっと短めではありますが、毎日投稿できるように頑張ります。


結構物語としては佳境です。

楽しんで貰えたらと思います。

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