99話:臨時のオトハ食堂は大盛況!シバのそろばんも大繁盛!
開始から5分。
今度は、あっという間の第89軍の勝利である。
しかも、攻撃力最大級と言われるローザを破ってだ。
まさかの展開に、観覧席はシンと静まり返っていた。
「ほ、ほう。すごいじゃないか、
キルア。模擬戦は、これくらいやってくれると面白くなる」
シリアは冷や汗を拭いながら、引きつった笑みを浮かべた。
「そうだな。だが、まぐれだよ」
「うむ、わかっているではないか!
我が軍の3番手を破ったくらいでは、やはり喜べんよな。
ヒス、急いで次鋒の準備をさせろ!」
「ははっ!」
「シリア、さすがに我が軍が勝てるのもここまでだ。
次はビアンカが出てくるのだろう?」
「よく知っているな。
ビアンカは我が国屈指の攻撃魔法の使い手だ。ここで棄権かい?」
「いや、後学のためにもやらせてもらう。
準備ができ次第、始めよう」
その頃、奇跡の勝利を収めた第89軍の陣営では、
勝者とは言えない惨状が広がっていた。
勝ったとはいえ、実力差は歴然。
第3小隊の半数以上が、瀕死の大怪我を負っていたのだ。
「ソトさん、大丈夫ですか!?」
駆けつけたオトハに、ソトは苦笑いを返した。
「あぁ、俺たちはオトハちゃんの装備のおかげで無事だ。
でも、装備が間に合わなかった奴らは皆、大怪我をしてしまった……。
昨日のパンがあれば助かるんだが、確かもう最後だったよな?」
「はい。『昨日の分』はあれで最後でした」
「そうか……無念だ……」
ソトが肩を落とした、その時。
「『昨日の分』って、まさか?」
「今日の分なら焼き上がっていますよー!」
「「 ええっ!? 」」
オトハがニッコリと微笑んだ。
「そ、それなら分けてもらえないだろうか!?
金なら後で必ず支払う!」
「臨時のオーダーですから、少しお高くなりまっせ?
それでもええなら」
隣からシバが商人の顔で割り込んでくる。
「シバさん! ソトさんの部隊の人たち、
すごく苦しそうですよ! 安く分けてあげましょうよ!」
「いいんだオトハちゃん!
分かった、シバさん。お金は絶対に支払う!」
「ほな、オトハちゃん。人数分を出してあげましょか」
「はーーい!」
オトハは空間から『魔導具オーブン』を取り出した。
焼きたての香ばしいデニッシュが、
人数分テーブルにズラリと並べられていく。
「さあ、残さず食べてくださいねー!」
怪我をした兵士たちが、藁にもすがる思いでパンにかぶりついた。
次の瞬間――温かい光が彼らの身体を包み込んだ。
「な……痛みが消えていく!?」
「傷が……塞がっていくぞ!?」
「魔力が……身体の底から湧き上がってくる!!」
ほんの数十秒前まで倒れていた重症者たちが、次々と跳ね起きた。
全回復どころか、戦う前以上の活力がみなぎっている。
「「「 うおおおっ!! 復活だーーーっ!! 」」」
元気一杯に叫ぶ兵士たちを前に、
シバが満足な顔を浮かべながら、そろばんをはじいていく。
「まいど、まいど!どんどん食べてやー!」




