表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/108

第98話:電撃の奇襲作戦

「キルア、何か良いアドバイスができたかい? 」


 キルアが観戦席に戻ると、

シリアがニヤニヤしながら声をかけてきた。


「まぁな。付け焼き刃だが軽い作戦を与えた。

……それはそうとして、なぜ映像録画と送信魔法が展開されている?」


 キルアが模擬戦会場を眺めなると、僅かだが魔力の流れが変わっていた。


 どうやら隠しカメラのような魔道具を設置しているようだ。


(……やはり、こいつ気づいたか)


 シリアの顔が一瞬引きつった。



「いや……せっかくの模擬戦だからね。

 今後の研究のためと、故郷の世界に我が兵の元気な姿を

 見せてあげたくて魔道具を設置したのだ。……ヒス、ちょっと来なさい」


「はっ」


「あれほど隠密に魔法を隠蔽しろと言っただろ」


「は、3重に隠密魔法を重ねて隠蔽いたしました。

普通ならば見破られるはずがないのですが……」


「あのキルアの魔力は化け物なのだ。

だからあれほど念を押したというのに!」



 シリアが観覧席の脇でヒスを問い詰めていると、

キルアが不審そうな顔を2人に向けた。


「おい、シリア。何か問題があったか?」


「いや、すまんすまん。私も断ったのだがね。

部下たちにヒスが頼まれたらしく、強引に魔法を展開してしまったようだ」


「そういう事情なら仕方がない。

これからは私にも事前に知らせてくれると助かる」



「ははっ、申し訳ございません。キルア様」


ヒスが冷や汗を流しながら頭を下げた。


「ではキルア! 気を取り直して、そろそろ3戦目を始めよう」


「わかった。合図をしてくれたまえ」


 キルアの指示に、副官が立ち上がる。



<< バーーーン! >>



「開始の合図が鳴りましたね。

シバさん、私たちはどこに行きましょうか?」


「せやな。オトハちゃんとウチは部外者やから、

会場の外におった方がえーで。……あそこなんかどうや?」


 シバが指をさしたのは、演習場脇にある城壁の、高い塔のてっぺんだった。


「たしかに、あそこなら全体が見やすいですね。それに……いざとなれば」


 オトハの目が怪しく光った。


「オトハちゃん、穏便に頼むで? サクラはんにウチが叱られるからな」


「はーーい!」


 ふたりは城壁を目指して、トコトコと歩き出した。



◇◆ ◇◆ ◇◆


 一方、会場のソトの部隊。


 ドラの音が聞こえた瞬間、全員に鋭い緊張が走った。


「お、開始の合図だ! 風と氷の魔法を展開しろ!」



「「 炎よ、天から降り注ぎ大地を焼き尽くせ!

 ファイヤーウォール! 」」


「「 風を、大地を、海を凍らせよ!

  グレートブリザード! 」」



 開始直後、第89軍の陣営に巨大な炎と氷の雨が降り注ぐ。


「なんだあれ? あいつらやけくそになって、

自分たちの陣営を焼き払ってるぞ! あははは! 最弱の軍隊は仕方ないな!」


 第48軍から嘲笑が巻き起こる。観覧席でもヒスが笑いをこらえていた。


「何か手違いでもあったのでしょうか?」


「ふふ、敵を笑っては失礼だよ、

 ヒス。彼らも一生懸命なのだから、温かく見守ってあげよう」


 シリアも不快な笑みを浮かべる。


 だが、キルアだけはわずかに口元を緩め、じっと戦況を見つめていた。



 巨大な炎に氷の雨が降り注ぐ。


 直後、極端な寒暖差によって、陣営に猛烈な上昇気流と暴風が発生した!


 キルアの指示通りだ。


「今だ! 剣士とアサシン隊は、風に乗って敵陣営へ移動しろ!」


 「よし、いくぜ!」


 部隊は風に乗るというより、強風で上空へ吹き飛ばされた。


 3キロ先の敵陣まで飛ばされる。着地を誤れば全員大怪我だ。


 そのためキルアは事前に、隊長たちへ『森のリング』を授けていた。


 植物を瞬時に成長させる魔道具だ。


「行けぇぇっ!」


 隊長たちが指輪を発動させる。


 地面から勢いよく伸びた草が、何層もの巨大なクッションとなった。


「全員無事か!? 行くぞ!」



 開始からわずか20秒。

 3キロの距離を、彼らは一瞬で飛び越えたのだった。


 第48軍の後衛陣営。ここではまだ戦闘陣形すら取られていなかった。


「いよいよ最後の模擬戦ね。この一戦は本国に生中継されるらしいわね」


 魔導士ローザが優雅に衣装を整えていた。


「そのようです。ローザ様の美貌を故郷にお見せするチャンスです」


「お姉様方に叱られない程度にアピールしましょうか。おほほほ!」


「敵だーーーッ!?」


 突然の悲鳴にローザが眉をひそめた。


「何の騒ぎ? また剣士が治癒魔法士に絡んでいるのかしら?」



「いいや残念。敵の襲来でした!」


「なっ……!? あなたは!?」


「第89軍の剣士です」


「そして、アタシはアサシンだよ」


 次の瞬間、後衛の魔法士部隊があっけなく倒された。


「おのれ! 私の魔法で――」


「おっと、詠唱はなしだよ」


 アサシンが音もなくローザの懐へ潜り込む。

 お腹へ渾身の一突きを叩き込んだ。



「あ……が……っ」


 力なく倒れ込むローザ。


「よし、合図を出せ!」


 高く舞い上がる煙幕。

 それを見た第89軍から、地鳴りのような歓声が上がった!


「何が起こった!?」

「なぜ敵が騒いでいる!?」


 第48軍の前衛部隊が動揺し、陣形が崩れる。


 そこへ第89軍の魔導士たちが一斉に攻撃を撃ち込んだ!


「突撃ーーーっ!」


 ソトも槍を構えて突っ込む。

 虚を突かれた第48軍はパニックに陥り、次々と倒れていった。


 まさかの、第89軍の大勝利である。


「うぉーーーーっ! やったーーーー!」

「俺たちもやればできるんだ!」


 歓喜に沸く第89軍。

 見つめていたキルアの目に、今日初めて温かい笑みが宿った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ