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第74話:光の柱をパラリラ爆走! 特攻竹馬、現る

「……ところでシバさん。私たちはこれから、どっちへ向かえばよいのでしょう?」


 スープを片付け終えたオトハが、首を傾げてそんなことを言い出した。


「なんやオトハちゃん、知らんとここまで付いてきたんかいな!?」


「はい。サクラさんからは

『ただ、あちらの世界(光の柱)に行って、音を探しなさい』

と言われただけなんです」


(もう、サクラちゃんもおおざっぱやなぁ……)


「うーん、困りましたね。こんな時には、あの人に聞いてみましょ」


 オトハが腕のアッポーウォッチに手を伸ばす。


「ま、まさか、あのビリビリ大佐をまた呼び出すんか!?

勘弁してや、ウチの筋肉がまた悲鳴を上げるわ!」


「いいえ、違いますよー」


 オトハが画面をちょんとタップすると、

電子音と共に立体ホログラムが広がった。



『お久しぶりだにゃ、ご主人様! お元気だったかにゃ?』


 元気な声と共に現れたのは、

なんと愛らしい猫耳をつけた3Dのメイドさんだった。



「……リリーさん、お久しぶりです。

実はこの遺跡【光の音】の地図が欲しいんだけど、分かるかしら?」


「な、なんやこの獣人メイドは……!?」


 驚くシバに向かって、ホログラムの猫耳メイドが綺麗にお辞儀をする。


『私はリリーだにゃ。ご主人様の忠実なメイドだにゃ!』


「いや、そういうことちゃうで! あんさん、一体どこから現れたんや!?」


「あ、シバさん、こちらはリリーさんです。

いつもはサトルさんの時計の中にいるAIなんですよ」


 リリーの猫耳姿は、前の持ち主であるサトルの完全なる「趣味」だった。


「あー……もう、アンタたちの話を聞いてると頭が痛うなってくるわ……」


『ご主人様、この遺跡の地形データの解読が終わったにゃ!』


「さっすがー、リリーさん! では、地図を見せてもらってもいいですか?」


『分かりましたにゃん!』


 リリーの目がキュピーンと光ると、

オトハたちが腰掛けていた平らな岩の表面に、鮮明な3Dの地図が映し出された。


「ほう……。そりゃ『映写魔術』かいな」


『何を言ってるにゃ。これはただのプロジェクター(超小型高輝度仕様)にゃん』


「それでリリーさん、私たちがいる現在地はどこ?」


『ここですにゃ』


 立体地図の一部が、ピコピコと赤く点滅する。


「ふーん、ここにいるのかー」


「『ふーん』やないでオトハちゃん!

これ、トンデモない魔道具やで!

天界の商人に売り飛ばしたら国が買えるレベルで高く売れるわー!」


『……ご主人様、このシバって人、目がギラギラしてて怖いにゃ……』


「まぁまぁ、シバさん。

そんなに欲しければ後で同じものを作ってあげますから、

いい加減、普通の会話に混ざってください」


「ええな!? ほんまやな!? 忘れんといてや!」



 リリーの解説によると、この遺跡【光の音】は、

縦長構造の巨大なカプセル(筒)のような形状をしているらしい。


 そして最上空は、さらに別の世界へと通じているという。

その先は、高度な情報収集能力を持つリリーの索敵データでも、

モザイクがかかったように解析不能だった。


「リリーさん、この中で何か『音』が出そうな施設やモノはありますか?」


『あるにゃ! ここから西に100キロ進んだ上空、

高度10キロぐらいの場所に、大きな宮殿が浮いているにゃ。

そこに音が出そうな巨大なブツがあるにゃ!』


「なるほど、情報ありがとうございます」


 解説を終えたリリーが、

しっぽをふりふりと振りながらオトハに近づく。


オトハが慣れた手つきでホログラムの頭をなでてあげると、


『……これが欲しかったにゃん……。ゴロゴロ……』


と、データのはずなのに嬉しそうに喉を鳴らし、

満足そうな表情を浮かべてアッポーウォッチの中へと帰っていった。



「西に100キロ、上空に10キロですか……。ちょっと距離がありますね。

よし、やっぱりパッパカくんの彼女を作りましょう!」


『――まっことか!? 信じてええがやな!?』


 それまでシバの横に静かに立てかけられていたはずの竹馬が、

猛烈な勢いでぴょこぴょこと跳ね始めた。


「はい。パッパカくんには昨日お世話になりましたし、

これからも大活躍して欲しいので、ペアになってもらいましょう!」


『ひゃっほーーー! 待ちわびたちや!!』


 オトハはリュックから愛用のレンチを取り出すなり、

手頃な木片を集めて「トントン、ぎーぎー」と、いつもの超高速工作を開始した。


 そしてわずか30分後。


「できましたーーー! パッパカくんの彼女、『パッパコさん』です!」



『オラオラオラァ! アタイがパッパコだよ!

――あぁん? そこにいる冴えない一頭身のオッサン、邪魔だ、道をあけな!』


 そこに出現したのは、

強烈すぎる個性を放つヤンキー(不良女子高生)仕様の竹馬だった。


なぜか竹馬の頭部はソバージュのクルクルパーマ、

そして木製のボディ全体には、紫色のペンキでがっつりと

『天下無敵』『夜露死苦』と特攻服の模様が墨入れされている。


「……なんや、この地獄みたいなデザインは……!?」


 シバは戦慄した。


「これから急ぎの旅になりますから、

一番スピードが出そうな『最速』のデザインにしてみました!」


「歪んどる……。オトハちゃん、アンタの記憶というかセンス、

どこか根本的に歪んどるで……。一体誰からそんな昭和の知識教わったんや……」


『……か、かわいい……っ! まっこと、一目惚れしたちや……!』


「カワイイーーーーーーッ!!?? 嘘やろパッパカくん!?」


 さっきまで興奮して飛び跳ねていた竹馬が、

ポッと顔(?)を赤らめて呟いた一言に、シバの魂のツッコミが洞窟内に木霊した。


「さて、準備もできましたので、先を急ぎましょうか!」


 オトハが特攻竹馬のパッパコさんに飛び乗ると、

パッパコは早くもガタガタとエンジン音のような振動を上げ始める。


「しゃーないな……ウチはこっち(彼氏)に乗るわ。置いてかんといてや!」


 シバも諦めてパッパカくんに飛び乗った。


『それじゃあ行くわよ、野郎どもー! 気合い入れな!!』


 パッパコが叫ぶ。


<< パパラパパラ、パラパラパラ!!! >>


 光の柱の神聖な空間に、なぜか昭和の暴走族でお馴染みの、

五連ホーンの謎のクラクション音が盛大に鳴り響く。


 二台の竹馬は、猛烈な土煙を巻き上げながら、

西の宮殿を目指して凄まじい速度で爆走し始めるのだった。

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