第65話:4つ目の音を探したら、天界最大の記憶喪失トリックが発覚しました
サトルを復活させるための呪文は判明した。
動画で観たサトルの言葉を信じる限り、カンナが使った
転移魔法でサトルは復活できる。
いざとなれば、オトハの『つつんだるねん』を使えばよい。
だが、肝心の呪文を展開する場所が問題だ。
いまだに4つ目の音の場所が見当すらついていない。
< オトハ、アンタの仲間で「4つ目の音」の噂について、
知っていそうな人はいないの? >
「うーん、音ですかぁ?
キキョウさんは、いま(前回のウォシュレット事件で)絶賛大暴れ中で怖いから、
外の人に聞いてきますね」
トコトコと部屋を出ていくオトハ。
(遠くの廊下からキキョウの怒号と爆発音が聞こえる中、)
そんなオトハと入れ替わり、ユヅキがニヤニヤと近づいてきた。
< サクラちゃん、おもろい顔して、どないしたんや? >
< アタシは、最初からこの顔よ!
それよりユヅキ、アンタも一緒に考えなさい。
サトルを復活させる鍵、「4つ目の音」、何か思い当たらない? >
< 音いうても、いろいろあるしなー。
せや、財布をチャラチャラさせる小銭の音は、どうやろか?、
いや、金塊を擦った音は、えーおと、なるでー、うひひひ >
< アンタに聞いたアタシがバカだったわよ >
そういうとサクラは、すがるような視線でヤヨイを見た。
< だめだめ、私はアナタ達みたいに人間界を歩き回ってないわ。
アナタが知らないことを、知ってるわけないでしょ >
< そうだな >
< サクラちゃん、せや、お賽銭箱の音も、えーおと、するでー >
<< ガツっ!! >>
サクラの鉄拳がユヅキにヒットした、
その時、カンナが話に入ってきた。
< あなたたち、何の話をしているの? >
< カンナはん、実はなぁ・・・ >
ユヅキが頭を押さえながら、カンナにこれまでの経緯を説明する。
< ふーん、それでアナタ達は人間たちを救うために、
さっきの少年を復活させたいのね >
< そうなの。あとは「4つ目の音」がそろえば良いのよ >
サクラが答えると、カンナは北の方を指さした。
< もしかしたら『光の音』のことじゃないかしら? >
< カンナはん、そりゃまた、怪しそうな名前やな? >
カンナの話によると……、帝国領内には帝国が存在する前から
「光の音」と呼ばれる場所があるらしい。
彼女がこの地に降り立った時、
2つの遺跡『奥院の間』と『光の音』があった。
両方とも魔力が満ちていて、天使が引きこもるには絶好の場所だった。
そこでカンナは、天界を去って、まず光の音を訪れた。
しかし、その『光の音』には強力な結界が張り巡らされており、
魔力を持つ者の入場を拒み、外にはじき出されてしまう。
カンナが持つ限りの知識と魔法を駆使したが駄目だった。
そのためカンナは奥院の間に引きこもることになったという。
< でも、なんで遺跡に「光の音」なんて、けったいな名前がついているんや? >
< それはね。あとからついた名前なのよ。
『光の音』と呼ばれる場所は、数百年に1度、奇跡が生じるの >
< なんですのん、その『奇跡』って?カネの臭いがプンプンするわ >
突然、飢えたハイエナのような目になり、ユヅキがカンナに食いつく。
サクラとヤヨイも身を乗り出してカンナの次の言葉を待った。
< 数百年に1度、3日間だけ、『光の音』では、光の柱が天まで伸びて、
あたり一面に荘厳な音が聞こえてくるのよ >
< 光の柱?何だか「天界の階段」に似ていますね >
< そう、ヤヨイの言う通り、「天界の階段」そのものだったわ >
< それじゃ、まさか?? >
< ええ、柱の中を天使が飛んでいく姿を見たわ >
<< そんなバカな……私達以外に!? >>
< 天界の天使なら全員顔を覚えているわ。
でも、そこで見た天使で、知っている顔はいなかったわ >
< うーん、『4つ目の音』どころの話じゃなくなってきたわね >
< サクラさん、ルシフェル様にお伝えした方が良いのでは? >
< 兄様はダメ >
< そうね、ルシフェルこそが、
その異世界から来た黒神の天使達に操られているかもしれないわね >
< ほんまかいな、サクラちゃん >
< ええ…… >
< きっと、あのサクヤやな?ムカつく思たけど、黒神の手先だったとはな >
< ちょっと待って!
おかしいわね。サクヤは最初から天界にいたわよ >
< 確かに、ウチらは昔からアイツをしっとるな >
< もしかしたら天界の私達全員が精神干渉魔法にかかっていたのかも >
< ヤヨイちゃん、それは私も考えてみたわ。でもね…… >
< せやで、もし天界の天使全員を干渉するとしたら、魔力量がトンデモないで >
< カンナの話では、5千年以上前から「光の音」が存在したのよね。
つまり、この世界を征服するために数万年前から、手下を送り込んできていた。
しかも膨大な魔力を使って、アタシ達の記憶を干渉した……。
そんな奴らに、今のアタシたちが勝てるのかしら? >
< あら、珍しく弱気ねサクラちゃん >
< カンナも感じている通り、知識も力も相手の方が上でしょう。
アタシ達が、どうやって勝てるって言うのよ >
< アナタには、あの子たちがいるじゃないの >
< オトハとキキョウが? >
< 私の転移魔法『デビジオーネ』は、簡易的な光の柱なの。
私の力では小さな転移しかできない。
だけど、オトハは、魔力ゼロなのに、転移魔法を作ってしまった。
つまり、黒神の魔力にも対抗できる可能性を秘めていると思わない? >
< 確かにあの子の魔道具は、ゼロから魔力を生み出すわね。
あの『ホワイトホール』の力をうまく活用出来たら……。
もしかすると、もしかするわね >
< それに、あのキキョウって子。
あの子は、この世界の人間じゃないわね。
サクラちゃん、気が付いていたんでしょ? >
< なんでそれを? >
< やっぱりな。どうりでウチらのこと見えるから
おかしい、おもてたんや >
ユヅキが納得したように腕を組む。
数万年前から仕組まれた黒神の陰謀。
それに対抗する最後の希望は、魔力ゼロの天才魔道具士と、
この世界の理の外からやってきた「異邦の聖女」――。
サクラは静かに拳を握り、まだ見ぬ『光の音』の空を睨み据えた。




