第64話 異世界転移で天使が見たものとは?!
――――― 我々が知る太陽系は、平面である。
これは誰もが知る宇宙の理だが、サトルによると
実際の宇宙は、平面の太陽系が並行に並んで複数存在する。
そして、あらゆる魂は死ぬと、他の太陽系へ移動しながら
転生を繰り返し、永遠の旅を続けている。
サトルの話はここで終わった。――――――
「サクラさん、蘇りの呪文について何か分かりました?」
オトハがウオシュレットの水でビショビショになりながら、
サクラを振り向いた。
< 呪文の事は言ってなかったわね。でも、ヒントは見つかったわ >
サクラは、サトルの話の『並行世界の移動』の部分に注目した。
無の世界『死』の世界からの移動は不可能だが、
別世界とは言え、実在する限り、移動は可能なはずだ。
とはいえ、『世界の理』を簡単に飛び越えることは不可能だ。
そのヒントは、『四つの音』に隠されているに違いない。
サクラはそう考えて、これまでの『音』を思い出した。
・サンブルグの大聖堂の鐘の音
・ロンドラの大神殿の鐘の音
これまではいずれも聖堂の鐘の音だった。
リリーは、残りがあと1つと言っていた。
おそらく最後の1つは、リリーが知っているに違いない。
となると、あと1つの音を探せばいいはず。
今までもそうだったが、
四つの音は、偶然オトハが作り出している。
焦っても仕方がない、今はその偶然を待つことにしよう。
サクラはそう思いながら、目の前でトイレと遊んでいる
オトハに目をやった。
そこへ……。
<< いやー、こっちの世界はせわしないなー!! >>
オトハが作った『つつんだるねん』で、魔力を隠蔽され、
別世界へ飛ばされていたユヅキが、大声を出しながら現れた。
ユヅキのその手にはサトルからもらった謎のアイテム
(現世の缶コーヒー)が握られていた。
< この世界では少女がトイレと戯れとるわ。あはは。
なんの冗談かいな >
< あ、お姉さま、ごきげんよう。サクラさんとの決着は
どうなったのですか? >
ユヅキに続いて、ヤヨイも実体が戻りカンナに声をかけた。
< 随分と早いお帰りね。それとユヅキが持っているそれなに? >
< 何言うとるんや、こっちは急に知らんところへ飛ばされて、
むっちゃ焦ったんやで。これは、向こうで会うたおもろい少年にもろたんや。
それよりも、アンタらの決着は? >
せっかちなユヅキがサクラにせめ寄った。
ヤヨイも気になるようで、
天界最強2人の対決の結果にそば耳を立てている。
< カンナの勝ちよ、アタシは完敗だったわ >
意外なサクラの言葉に、ユヅキが首を傾げた。
< 形だけは私の勝利。でもね、それはサクラちゃんと私の芝居なの >
< へ?芝居? >
意外なセリフを聞いて、ユヅキが首を傾げた。
< な、カンナ、こいつらやっぱり気が付いていないんだ >
サクラが呆れた顔でカンナを見上げ、カンナもニヤリと頷いた。
< そうね。でも、そろそろ教えてあげましょう >
< な、何のことですか、お姉さま >
< アタシたちが戦う時、兄様の魔力を感じたのよ。
きっと隠密魔法でどちらが勝つのか?覗いていて、
弱った方を消そうと考えたのね >
< へー、そんな魔力、感じんかったで? >
< ユヅキちゃん、これは兄妹だから分かる微小な魔素なのよ。
サクラちゃんと一緒にいたのに、私も気が付かなかったわ >
< 本当に兄様は抜け目がないから、
最後の最後に現れるつもりだったに違いないの >
< なるほど、あの御方ならあり得るわ >
< だから、アタシがとっととカンナに負けることにしたの。
兄様なら魔力を温存したカンナを相手にしないわ。
それなのにアンタらは…… >
サクラがユヅキ達をにらむと、ユヅキが気まずそうに
視線をそらした。
< いやー、サクラちゃんが消されたと思って、
ついつい熱うなってしもたんや。かんにんな >
カンナも意外そうな冷たい目でヤヨイをにらむ。
< まさか、ヤヨイまで私に歯向かうとは意外だったわよ >
< ね、姉さま、それは…… >
< まぁまぁ、もうええいやろ。それよりな。
飛ばされた先で、おもろいもんに、会ってきたで >
< そう、オトハさんたちが探している黒田さとるに
あってきたのです >
< 黒田さとる??
まさか、アンタたち別世界に隔離したつもりが死んでたの?>
< サクラちゃん、冗談きっついわ。天使が死ぬはずないやろ。
それがな。ちょっと訳アリやねん >
そこで二人が体験したことをユヅキが説明し始める。
たった3時間で別世界を行き来した話を聞いて、
サクラが何かを思いついたようで、いきなり立ち上がった。
< やっぱり、さっきのディスクの話、本当の様ね、
何となくだけど、謎が解けたわ! >
< なんやねん、サクラちゃん?何が分かったんや?
ディスクの話って、なんやねん? >
今後はサクラが、この部屋で見つかったディスクに入っていた
サトルの動画を説明し始める。
・太陽系が並行に複数存在していること。
・太陽系の数だけ神と世界が存在すること。
・生命の魂は、死ぬと別の太陽系へ転生し、永遠に旅を繰り返すこと。
< それ、おかしいで。
神さんが違うのなら、ウチらが別世界に行けるわけないやろ。
ウチもサクラちゃんも、異世界で人間を加護したんやで >
< そうね。別の世界に神がいるなら、
この世界の神の子である私たちが、異世界へ転移することは不可能ね >
< そ、それは……、私に思い当たることがあるわね…… >
サクラとユヅキが、首をひねっていると、カンナが気まずそうに手を上げた。
< サクラちゃんとユヅキちゃんは、私がこの世界から隔離するために
デビジオーネという魔法を使ったの。その影響かもしれないわ >
<< あーーー! >>
二人の天使が声を合わせて、カンナを見た。
かつて、カンナが天界から二人を守るために発動した魔法が、
思わぬ結果を作り出していたのだ。
< 別世界に転移させるという意味では、
『デビジオーネ』は、オトハがつくった魔法の布に近いのかしら? >
「 サクラさん、私の「つつんだるねん」がどうしたのですか?」
< いえね、オトハ。アンタの作った布が、もしかしたら
サトルを復活させるヒントになりそうなのよ >
「 そうなんですか!うぉしゅれっと、も、気になるけど
そっちの方が面白そうですね 」
そういいながら、オトハがシャワーと勘違いした奇妙な陶器を見た。
今は、キキョウがシャワーの水で、気持ちよさそうに
戦いの汗をぬぐっている。
< あかん、それ、トイレやで >
< あ、ユヅキ、言ったらだめ >
「 え?そうなんですか?
シャワーじゃないんですか?気持ちいいですよ 」
< それ、おしりを洗うんよ >
ユヅキの声を聞いたオトハは表情が変わり、
ガタガタと震えながらキキョウの元へ駆けていった。
「 き、キキョウさん……、ちょっと言いにくいんだけど 」
オトハがキキョウに声をかけた、その瞬間……、
サクラがプロレス技並みの必殺の勢いでオトハの口を塞ぎ、
ヘッドロックをかけて、かろうじて声になるのを防いだ。
< やめておきなさい、アンタ! あのプライドの高いキキョウが
『私、神殿の便器の水で顔洗ってたの!?』って気づいたら、
ショックで世界が滅びるわよ!
ゴールドドラゴンどころじゃない、血で血を洗う修羅場よ!! >
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少し筆が遅れていますが、その分、しっかり描いて行きますね。
宜しくお願い致します。




