第62話:最強の「守護天使」誕生 ~キキョウの新たな悩みの種も誕生~
< さぁ、いくわよ。覚悟を決めてついてらっしゃい >
サクラの言葉に導かれて、再び奥院の間の扉をあけるオトハ。
再び奥院の間に足を踏み入れた瞬間、キキョウの身体が凍りついた。
そこには、今まさにカンナへ斬りかかろうとするヤヨイとユヅキ、
そして迎え撃とうとするカンナという、神話級の三つ巴が展開されていた。
初めて見る天使同士の戦闘。
その膨大な魔力と、圧倒的な存在感にキキョウは気を失いそうになる。
さらにキキョウは上空に目を移した。
そこには、吐き気がするほど不気味な「他者の視線」が蔓延していた。
「なんじゃ、こりゃあああ……!」
思わず、往年の刑事ドラマのような口調で絶叫するキキョウ。
「珍しいですね、キキョウさんがそんなに取り乱すなんて」
オトハが不思議そうに覗き込む。
「だって、アンタ! あれを見たら腰を抜かさない方がおかしいわよ!
サクラ、なんてところに連れてきたんだよ!」
< まぁまぁ。それじゃ、オトハにも様子を見せてあげるわ。
キキョウの手をアンタの目に当ててごらんなさい >
キキョウの手を介して「真実」を視覚化したオトハは、
ポカンと口を開けた。
「うわぁ……。あれが天使さんなんですか。初めて見ました」
< 驚くリアクションが薄すぎるわよ、アンタ! ほら、オトハ、キキョウ!
手を繋いで魔道具に触れなさい。そしてこう唱えるのよ。
――『あのアホのような顔をしている二人の天使を包みたまえ』ってね! >
「わかりました! キキョウさん、やりますよ!」
「もう、わかったわよ、なんでもやるわよ!」
二人が魔道具を掲げ、声を揃えて呪文を唱える。
すると、オトハの手から放たれた極薄の魔力布「包んだるねん」が、
生き物のように闘技場を駆け抜け、ヤヨイとユヅキを優しく、
しかし強引に包み込んだ。
二人の姿は一瞬で空間ごと切り取られ、カンナの姿と共にその場から完全に消滅した。
< ナイス! 一発でうまくいくとは、アンタらやっぱりすごいわね。
特に、布に包まれた時の二人のアホっぽい顔が最高だったわ >
サクラが会心の笑みでサムズアップする。
「ええー? あの天使さんたち、消えちゃいましたが、敵だったんですか?」
< アンタたちにとっては両方味方よ。
だけど、今は邪魔だから一時的に退場してもらったの。
さて……これで舞台は整ったわね >
遥か上空、異次元の隙間では、
シャドウアイを介して戦いを見ていた影が動揺した。
< 双方ともに消滅しただと? 相打ちか……? >
ルシフェルの声には困惑が混じっていた。
横に侍る副官のサクヤが、冷静に魔力探知を試みる。
< ……魔力反応がありません。
完全に消滅したか、あるいは感知不能な領域へ落ちたか。
ですが、結果的にカンナもサクラも、そしてヤヨイまでもが
消え去ったのであれば、黒神様もお喜びになるでしょう >
< う、うむ。そうだな…… >
ルシフェルは釈然としないものを感じていた。
しかし、計画通りに邪魔者が一掃されたのは間違いない。
サクヤの声にうなづき、視線を神界へと戻した。
自然と、上空を覆っていた異様な魔力が消えていった。
< ふふふ、うまくいったわね >
サクラが奥院の間にある時計に視線を移すと、そこからカンナが現れた。
< さすがにルシフェルも、時間の狭間に隠れたら
見通すことができないみたいね >
カンナには特殊スキルがあり、過去と未来を移動することができる。
しかし、それは魂だけの移動であり、実体は置き去りになる。
今回は時計の中に実体を隠し、魔力とともに狭間に移動していた。
そのためサクヤの魔力感知にかかることがなかったのだ。
< ところで、この子たちね。アンタの言っていた守りたいものは? >
カンナが二人に近づくと、キキョウが剣を抜いて構えた。
< あらあら、勇ましいこと。それに、この子、私が見えるのね。
人間が天使を知覚するなんて、初めて見たわ >
カンナがオトハに目をやると、自分たちを無視して時計を触りながら、
ニヤニヤしている。
< こっちの子は、私が見えないのね。でも、緊張感がない子ね。
アンタが言っていたオトハって、この子なのね >
< いいえ、違うわよ >
< じゃあ、魔力がなくて、緊張感もない、この子? >?
カンナが呆れて、オトハを見返した。
その時……。
<< ボーン、ボーン! >>
それまで動いていなかった時計が動き出したかと思うと、
奥院の間に時計の鐘が鳴り響いた。
突然鳴り出した時計の音には、特殊な魔力が混じっている。
カンナが気づいて、サクラを見ると、彼女は満面の笑みを浮かべている。
< ね、おもしろいだろ >
< おもしろいなんて、もんじゃないわよ。
この音色、魔力増幅バフと、身体強化の魔素が入っている。
こんなことができるのは、神、ぐらいじゃない? >
< うふふ。そうなのよ >
< へぇ、アンタがぞっこんなわけだ。私もこの子を応援するわ。
だったら、このもう一人を私は加護しようかしら? >
カンナが改めてキキョウに近づき、顔を眺める。
「ひっ……」
天使No1の戦闘力を持つ天使に近づかれ、
さすがのキキョウも鳥肌が立ち、金縛りにあった。
「大丈夫ですよ、キキョウさん。
天子さんが、キキョウさんを応援したいそうです」
「で、でも、この距離は……む、無理ーー」
おびえるキキョウを横目に、
奥院の間でオトハは新たな機械に近づいていた。
「えへへ、新しい機械ちゃん。こっちも直そうね」
一方、「つつんだるねん」で異界へ飛ばされた天使2人。
カンナに殴りかかろうとした瞬間、目の前が真っ白になり、
気が付いた時には、知らない世界にいた。
< ヤヨイちゃん、ここ、どこだか分るか? >
< 分かるわけないでしょ。いったい何が起こったっていうの? >
「 ようこそ、いらっしゃいました天子様。
僕の名前は黒田さとるです」
二人の前には、学生服を着た少年が立っていた。
急ピッチで作品を進めてきたので、内容が雑になっていました。
そのため、3週間かけて1話目から丁寧に書き直しました。
今日からは、また新しい話を再開していきます。
よろしくお願いします。




