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第54話:地獄の沙汰もパンと金次第

「キキョウ殿、それは本当なのですか?」


 重厚な調度品が並ぶ中、ケイン皇太子の驚きの声が響いた。


 ここ、ロンドラ連合王国の王宮にある迎賓館では、

今日、ロンドラとサンブルグ法国、自由貿易都市メディーナの

重鎮が集まり、テーブルを囲んでいる。


 議題は、帝国のカオルの暴走に対する

各国の方針を合わせるための会議が行われているのだ。


 議長を務めるのは連合王国の皇太子ケイン。

キキョウは幼い表情が残る顔を上げ、議長の質問に答え始めた。



「はい。帝国の技術開発局長・カオルが敵味方を問わず、

狂ったように暴れたのには、理由がありました」


「キキョウさん、何か情報を掴んだのですね?」


「暴れ始めた要因につながると思うのですが、

ボク、いや、私が彼と対峙した時に、彼の背中には、

見たことがない黒い羽が生えていたんです」


「……そ、そんな……? まさか!」


 サンブルグ法国の法王が、震えながら椅子を飛ばして立ち上がった。


「法王様、何かご存じなのでしょうか?」


「はい、ケイン様。我が国、サンブルグ法国に伝わる書物に、

『世界に最後の審判が降る時、天使がこの地に舞い降りる』と

書かれているのです。おそらく、カオルとやらが、その天使なのかと」


<< さ、最期の審判……!? >>


 その場にいる者が、目を合わせて息を呑んだ。

しばらくの間、静寂が空間を支配する。


「それは違うと思います、法王様!」


 沈黙を、キキョウの隣のオトハが打ち破った。


「おぉ、オトハ殿もご一緒でしたか」


「カオルさん、天使の魔法で『魔人』にされたのだそうですよ」


「ま、魔人?」


「はい。天使が生み出す御使いで、天使に準じる力を持っているそうです」


……すると、会場で控えていた貴族たちから、

オトハの突拍子もない発言に憤りを覚えた怒号が飛んだ。


「おい、娘! 法王や皇太子殿下に、でたらめを吹き込むのはやめろ!」

「そもそも、なぜ一介の学生がこの場にいるのだ?」



「――この場から出ていくのは、あなた方です」


 冷徹な一喝が響く。声を上げたのは法王だった。


「ほ、法王様……?」


「このオトハ殿は、我がサンブルグを救ってくれた英雄なのです」


「我が、ロンドラもオトハ殿に救われたのだが……。

それでもオトハ殿に資格がないというのですか?」


 ケイン皇太子も静かに、しかし威圧感を持って付け加えた。

貴族たちは顔を青くして平伏する。



「大変失礼しました、オトハ殿。どうぞ続けてください」


「魔人は確かに存在します。

ただ、カオルさんは自分の意思で魔人になったわけじゃないので、

救ってあげたいんです。悪いのは天使ですから。

それを確かめるため、今から帝国に向かおうと考えています」


「帝国に何があるのでしょう?」


「どうもサトルくんが、魔人化を解くための重要なヒントを

知っているみたいなんです。だからサトルくんを蘇らせて、

カオルさんを元に戻す方法を聞こうと思うんです」


「サトルくんを蘇らせる? まさか、死んだものを生き返らせる

伝説の『蘇りの魔法』を使うというのですか!?」


 法王が一段と高い声で叫んだ。


「オトハ殿、

ついに開祖様の御言葉を聞ける可能性ができたんですね」


「はい、ケイン様。サクラさんはそう言っていました」


「誰ですか? そのサクラさんとは?」


「私の友達の天使さんです」


「あ! バカ、いっちゃだめ」


 キキョウが慌ててオトハの声を遮る。


「しまった……」


 オトハは、慌てて口を塞ぐが、もう間に合わない。

しっかりとオトハの言葉は、その場にいた全員に聞かれてしまった。



「まさか、オトハ殿も魔人だったのですか?」


「いえ、オトハは魔人じゃありません。

この子は子供の頃から天使に守られているだけなのです」


「は……?」


 その場にいる各国首脳の全員がポカリと口を開けた。


「は、ははーーーっ。貴方こそ真の御使い様です」


 血相を変えて、その場に屈服する法王。

その姿を見て、他の者たちも慌てて席を立ち、ひざまずいた。


 ケインもまた、椅子から降りて片膝をつく。


「いえ、私は天使じゃないし、魔人でもありません。

だから、これまで通り、普通に接してください」


「なるほど、全てが合点いきました。

オトハ殿、いや、オトハ様が不思議な力を持つのは、天使の力だったのですね」


「い、いえ、あのー、うちの天使さんをそんなに持ち上げない方が良いです。

……本当のことを話した方がいいのでしょうか?」


「ばか、オトハ、やめなさい」


「いえ、聖女さま、これは世界の秩序に関係するのです。

どうか、オトハ様、天使の事をお教えください」


 今度はキキョウの言葉を法王が遮った。



「えーーっと、私が一緒にいる天使は、

天界を破壊して追放された『破壊神』なんですぅ。えへへ」


「………………」


 会場は一瞬で凍りついた。


「こんな時に、何をご冗談を。ねぇ、聖女様」


「………………」


「ほ、本当なのですか?」


「だから、オトハ、やめときなさいって言ったでしょ」


「だってー」


「ボクから説明いたします。

オトハは、確かに破壊神サクラの加護を受けています。

しかし、サクラは龍族を守るために、仕方なく神に反抗して。

だから、人間に危害を加えることは、ないと思います」


「はい、サクラさんは優しいんですよ」


「オトハ様が仰るのであれば、我々は信じるしかありません」


 法王の一言で、その場は静まった。

だが、明らかに会場には緊張が立ち込めている。



「それでオトハ様、我が開祖にはいつお会いできるのでしょう?」


「ケイン様、オトハでいいです。明日、その場所へ旅立ちます」


「その場所は?」


「帝国の大神殿です」


「帝国の????」


「そこで、これを使ってサトルくんを蘇らせるんです」


 そういうと、オトハはカバンの中から黄金色のデニッシュを取り出した。


「オトハ様、それはパンで蘇らせるということですか……?」


「はい、パンで蘇らせます」


「????」


「オトハ!、もういいわ。どきなさい。

アンタがしゃべると、ろくなことが起こらないんだから」


 オトハが下がると、キキョウが姿勢を正して説明を代わった。


「このパンの事は皆さんご存じですよね」


「それは魔力を増加させる効果があるパンであろう」


「その通りです、法王様。オトハを加護する天使は、

このパンを大神殿へ持っていき、そこを守る天使を説得せよ、と言っているのです」


「なるほど、供え物を差し出すというのですね」


「いいえ、その守護天使は師団級の黒竜を使役するらしく、

私でも勝つことができせん」


「……なに? 聖女殿でも勝てないですと?」


「天使にも色々いるみたいです。

この天使は、大神殿を守って侵入者を攻撃してきます。

このパンこそが、天使の竜に勝つ糸口なのだそうです」


「ぜひ、私も連れて行ってくれないだろうか?

私には開祖にお言葉を賜る義務があるのです」


 ケインが立ち上がると、法王も続いた。


「それを言うなら、私も神に仕える身です。どうぞ、お連れ下さい」


「かしこまりました」


 そこへ、不敵な笑みを浮かべた人物が割って入った。


「承知いたしました、ところで地獄の沙汰もカネ次第ですわ!」


「いま、なんと?」


「シバさん、お二人からお金をとるんですか?」


「そりゃそうや。お二人をお守りするのは、準備が必要になりますわ。

おひとり様、三食宿付きで1万でどうですやろ?」



 迎賓館を見下ろす場所に、3体の天使が集っている。


< 相変らずアンタの加護者は、がめついわね >


< ようできた子やで >


< この件にシバが絡むってことは、ユヅキも来るの?

カンナと戦うことになるかもしれないわよ >


< まぁ、おもろそうだからついていくわ。

ただ、ウチは残念ながら、ウチには魔力がない。

そやから、今回や友情出演でヤヨイちゃんが登場や! >


< 私、そんな話は聞いてないわよ。ユヅキ >


< まぁまぁヤヨイちゃん、久しぶりの姉妹対面なんやろ、

アンタが、いかなあかんで >


 カオルを救うためのヒントを求め、一万年の因縁が渦巻く帝国へと、

史上最も奇妙な天使と人間の一行が旅立とうとしていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


オトハの秘密の一端が、各国の重鎮に知れ渡りました。

いよいよ、聖女と魔人?コンビが、カンナのしもべと戦います。


カンナVSサクラの因縁の対決、

カンナVSヤヨイの姉妹対決。

そろそろ本気のバトル展開です。(笑 あれ……これバトル小説だっけ?)


作品を読んでいて、少し面白いな、と感じていただいたら

評価をしていただけると嬉しいです。(#^.^#)

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