第52話:大神殿の守護者と「無限」のパン。~強欲の天使カンナを攻略せよ!~
「蘇りの魔法は、その人が身に着けていたものに、
強烈な魔力を注ぎ込み、蘇りの呪文を唱えることで成し遂げられるんだにゃ!」
ホログラムの猫耳をピコピコと動かし、リリーが胸を張る。
「サトルくんが使っていたもの……
でも、もう何千年も前のことでしょ。そんなのあるかしら」
首を傾げるオトハに、リリーは呆れたように大きなため息をついた。
「何を言ってるにゃ。今、主の手首に巻かれている
その『アッポーウォッチ』が、まさにそれだにゃ!
これはサトル様が、あっちの世界から唯一持って来た魂の片割れにゃ」
「あっちの世界……?」
< オトハ、今はそんなことより呪文よ! >
サクラが鋭く制した。その声は心なしか震えている。
「リリーさん、その呪文はどう唱えれば良いのですか?」
「残念だけど、それはリリーでもアクセスできないにゃ。
強力なロックがかかってるにゃ。その呪文はセキュリティが
最高レベルの『大聖典』にしか記されていないんだにゃ」
「……その大聖典はどこにあるんですか?」
「検索……ヒットしたにゃ! ロマリア帝国にある大神殿の中だにゃ」
「……うぇぇ、帝国!?
何度もニャーちゃんでボコボコにしちゃった敵の本拠地じゃないですかぁ!」
オトハが情けない声を上げる。
だが、傍らで聞いていたサクラが真剣な表情で口を開いた。
< ……リサを使えば、行けるかもしれないわ。
彼女は帝国の将校だったし、カオルの暴走を止めるためなら、協力してくれるはずよ >
「わかりました。サクラさん。
キキョウさんに相談して、作戦を練りましょう。
あっ、いざという時に心強いからシバさんも入れた方が良いですね」
◇◆◇◆◇◆
さっそく、その日の午後に会議が開かれた。
集まったメンバーは、オトハ、キキョウ、シバ、そしてカイルだ。
「よりによって、帝国の大神殿って大変な所にあったものね。
何度か噂に聞いたことがあるけど、帝国の人間も入れないらしいわ」
「えー本当ですかキキョウさん、
じゃあリサさんにお願いしても無理ってことですか?」
「分からないわ、オトハ。
ただ、大神殿に入ることができても、奥院の間には入れない。
守護者が守ってるらしいの」
「それならワイも聞いたことがあるで。
帝国ができた時には、すでに奥院の間は、あったみたいや。
もともと神聖の場所だったところに、神殿が建てられたんやろな」
シバがキキョウの後に続くと、カイルも身を乗り出してきた。
「ロンドラにある情報は、1つだけです。
決して帝国の神殿には近づくな。神の逆鱗に触れてはならない」
「シルバーランド、ロンドラ、メディーナの情報を、それぞれ聞いたけど、
本当に物騒なところみたいよ、オトハ、本気で行くつもりなの?」
「はい、キキョウさん。リサさんの件もありますし、
サトルくんにも会ってみたいんです」
「サクラなら、何か知ってるんじゃない?」
「サクラさんは、さっき、出かけたっきり帰ってこないんです」
「まったくあの年増、肝心な時に役に立たないわね」
◇◆◇◆◇◆
その頃、サクラはオトハから離れ、ヤヨイの隠れ家を訪れていた。
< ……そろそろ来る頃かと思っていましたよ、サクラさん >
< ヤヨイ、力を貸して欲しいの >
< あら、サクラさんらしくないですね >
< 今度ばかりは、アタシの力だけでは何ともなりそうにないわ >
< 奥院の間のことですね >
< そうよ。あそこには、アイツがいるから…… >
『奥院の間』
その名前は、サクラたち天使の間では禁断の場所であり、タブーな世界を表す。
理由は、その場所に住む天使に由来している。
天使の名は、強欲の天使・カンナ。
ヤヨイの姉であり、ルシフェルですら恐れる武闘派。
彼女は、近所に住んでいたサクラを可愛がり、
サクラが天界を焼いた時、身を挺して守ってくれた恩人でもある。
だが、その5000年後、妹の親友の勾玉を奪い、姿を消してしまう。
その親友とはユヅキのことだ。
それ以来、ユヅキの魔力は半減され、戦えぬ身体となったため、
商売の道を選ぶことになった。
そのことは妹のヤヨイも心を痛めていた。
当時、戦闘力No1の天使は、カンナと言うのがもっぱらの評判だった。
次に続くのがサクラ、そしてルシフェルの兄妹。
その圧倒的強者カンナが更に力を望み、勾玉を奪ったと
天界に噂が広がると、カンナは神に反逆するものと疑われた。
< すんなりと、神殿に入れてくれるなら、良いのだけど、
邪魔をされたら、戦うしかないわ >
< それで私に姉の弱点を聞きに来たってわけね >
< そうよ。アンタだってユヅキの件、忘れてないわよね >
< 確かに、万が一、天使の中で姉カンナに勝てるとしたら
サクラさんしかいないわ。だけど、姉の弱点を突くのは難しいわね>
< なんで? >
< 姉の魔力の本質は、すべてを飲み込む力。ブラックホール。
その絶対的力の前では、神の光の力も飲み込まれてしまうの。
あなたも天使だから、同じなのよ。すべてはカンナに飲み込まれるわ >
< うーーーん、それはやっかいね >
<< 二人とも辛気臭い顔して、どないしたん? >>
サクラとヤヨイが頭を抱えるとことに、
ユヅキが、紙袋いっぱいのデニッシュを両手に抱えて現れた。
<ほら、元気になるようにオトハはんのデニッシュ持って来たで
一緒に食べよ、食べよ! >
<< ヤヨイ、これよーー!>>
サクラがユヅキのデニッシュを手に取ると、
思わず立ち上がって叫んだ。
< まったく、アタシは何故気が付かなかったのかしら。
無から無限の魔力を生み出すオトハのデニッシュ。
それこそが、すべてを吸い込むブラックホールを許容オーバーで
破綻させる「ホワイトホール」の鍵だったのよ >
< なるほど、そういうことね、きっとあの人、驚くわよ >
ヤヨイもデニッシュをつまんで口に入れた。
二人の天使が悪い顔で、微笑んでいる。
< アンタらなんやねん。きもっ。でも面白そうやからウチも混ぜてな>
一万年の因縁と、世界の理を書き換える「蘇生の旅」、
そして、魔法を奪われた天使と人間……。
今、絡み合った過去が、1つの運命の線に繋がっていく。
最後までお読みいただきありがとうございます。
一行はいよいよロマリア帝国へと向かいます。
リサを説得し、禁忌の地へと足を踏み入れる彼らを待ち受けるのは……。
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