第45話:覚醒した聖女の圧倒的威圧に帝国兵が腰を抜かしました。~故郷の裏切りと、敵の天才美少女の正体が「天界一あざとい嫌われ天使」だった件~
メディーナの前線基地の前で、小鳥ドロイドたちが、
楽しい会話に花を咲かせている頃、シルバーランド国境では
新たな戦いが始まろうとしていた。
「……あれは、シルバーランドの旗じゃないか?
ロマリア帝国の旗を持ってる。どういうことだ?」
シルバーランドは小国で、常にロンドラ連合王国と歩調を合わせてきた。
今回も、シルバーランドの『聖女』キキョウが同行していることから
シルバーランドは連合国側の仲間だと、誰もが思い込んでいた。
「ほんまや。あれはシルバーランドの王国軍や。
ほれ見てみ、学園の生徒もおるで。会長はんの顔も見えるわ」
双眼鏡を見ながら、シバがその場の兵士たちにも聞こえるように伝えた。
「そういや、ギルドからの報告に合ったんやけど、
この前の爆撃で、シルバーランドでクーデターがおこって、
帝国に降参する派閥が政権を握りよったらしいで」
「だからといって、学園の生徒まで駆り出されなくても……」
学園にはキキョウが見知った友達が大勢いる。
シバも表情には出さないが、学園の生徒が出征させられていることには
腹に据えかねるものがあった。
「きっと何か事情があるはず。ボクが話に行ってみる!」
「キキョウはん、危ないでっせ、
あれはロマリアの兵士としてきているんですさかい」
「でも、学園の生徒と戦うわけにはいきません」
「それなら僕もキキョウさんの護衛としてついていきます」
少し離れた所で二人の話を聞いていたカイル王子が、今度は遅れまいと騎乗した。
「王子?よろしいのですか?」
「当然です。ボクもアナタと同じ学園の生徒ですからね」
◇◆◇◆◇
やがて、シルバーランドの旗が近づいてくる。
「あ、あれは聖女様」
「聖女様が現れたぞ」
前方を進軍するシルバーランドの兵から、聖女キキョウに歓声が上がる。
国がどうあろうと、やはり、英雄聖女の存在は、健在なのだ。
「みなさん、ご苦労様です。隊長さんとお話をしたいのですが……」
軍列から一人の帝国監視兵が馬を飛ばして割って入った。
「おい! その女は帝国の敵だぞ! シルバーランドの負け犬ども、
帝国への忠誠を誓うなら、今すぐその偽聖女を捕らえろ!
やらぬなら、本国の家族がどうなるか分かっているな?」
あまりの理不尽に、兵士たちが唇を噛み締める。
その時、帝国の監視兵の脇から、生徒会長の姉であり、
バルカスの元右腕、先遣隊長のシルビアがキキョウの前に進み出た。
「キキョウ様、お久しぶりでございます。
訳あって、聖女様のご希望に叶うことはできないかと存じます。
もし、邪魔をなされるというのであれば、私がお相手を致します」
◇◆◇◆◇
シルビアはキキョウの前に立つなり、問答無用で剣を抜いた。
「闘打連剣!」
シルビアは、剣の威力こそバルカスにはかなわないが、
その剣裁きの速さは王国ナンバーワンで、バルカスも一目置く存在だ。
王国軍の戦闘で、激しい金属音が響く。
キキョウは次第に押し込まれ、王国軍から離れた場所まで飛ばされた。
帝国監視兵が嘲笑を浮かべる。
更にシルビアのスピードが増す。
だが、剣が交差する刹那、彼女の細い声が、キキョウの脳内に直接響いた。
(……聖女様、聞いてください。私たちは機を待っています。
バルカス様を人質に取られ、今は従うしかありません。
ですが、必ず隙を見て帝国に反逆します。ここは一度引いてください)
キキョウは目を見開いた。
そして、次の瞬間、彼女の瞳にいつもの凛とした輝きが宿る。
「……なるほど。そういうことなら、少し派手に暴れないと不自然ですね」
<< ――ドォォォォォン!! >>
キキョウの体から、目も眩むような「青いオーラ」が爆発的に立ち昇った。
周囲の地面がひび割れ、学園の生徒たちが絶叫する。
「な、何だあの魔力は!? 聖女様が……覚醒した!?」
キキョウは一瞬でシルビアの剣を叩き折ると、
風属性『エアー・グレネード』を放つ。
シルビアは自軍の前まであっけなく吹き飛ばされた。
だが、激突の寸前、キキョウが放った目に見えないクッション魔法が彼女を守った。
「……あんな化け物に勝てるわけがない!」
さっきまで聖女を侮辱していた監視兵の顔が、恐怖で土色に変わる。
キキョウは圧倒的な「格の違い」を見せつけることで、シルバーランドの
兵たちが戦わずに済む大義名分を、力ずくで作り出したのだ。
◇◆◇◆◇
戦場から少し離れた虚空。
ユヅキ、サクラが悠然と酒を酌み交わす中に、ヤヨイが加わった。
この世界の天使(神)は、酒好きが多い。
特にヤヨイは無類の酒好きで、酒豪としてはサクラに引けを取らない。
< ねぇ、ヤヨイちゃん。あんたの加護者(生徒会長)、いつ覚醒させるつもりんや?
このまんまじゃ、あの子の国、帝国にタダ働きさせられるだけやで >
< 私はあの子を大事に育てたいの。……その時が来たら、本当の力を見せてあげるわ >
< ほほう、その時には私のオトハがお相手するわよ、ひひひ >
< まぁ、楽しみですこと。あのオタクっ子だけには負けないわ、ふふふ >
ヤヨイとサクラが不敵に微笑う中、ユヅキが視線をカオルの戦車へと向けた。
< それよりも……ルシフェル様の隣にいる、あの子。
天界のどっかで見たことあるんやけどなー。だれやったかなー?>
< うーむ、お兄様の部下ではないようね。八方美人のヤヨイの方が、
顔が広いから、しってるんじゃないか? >
< 誰かさんと違って、私は天界から追放されてないから、知ってると思うわ >
< まあまあ、ヤヨイちゃん、それで誰なん? >
< あ、あれはサクヤじゃないかしら? >
<< サクヤーーー? >>
その名前を聞いて、思わずサクラとユヅキが酒を吹き出し立ち上がった。
< 天界の美女コンテストでいつも優勝してた、あの女か? >
< いざとなると、ピーピー泣いて、男どもを味方につける
女性天使から嫌われ度No1 のサクヤかいな。
そりゃまた、ルシフェル様も、けったいなもんを、連れてきはったな >
< そうそう、サクラさんもユヅキさんも、あの子のこと嫌いですものね >
< ウチよりもサクラちゃんやで、名前が似てるから、いつも苦労してたもんな >
< うふふ、ここで会えるとはね。あいつが兄様と一緒に来るなら、望むところよ。
本当にアタシが本気を出す時が、近づいてきたわね >
< ……ちょっと待った! サクラちゃん、
アンタの本気はいらん! こそーっと、片付けといてや!>
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