第44話:戦場はインコの楽園、背後には10万の裏切り。~巨大戦車マウスを襲うおしゃべりの嵐と、シルバーランド軍の影~
「カオル様、逃げてください! 」
リサが上空を見上げると、あの愛らしい……
そして絶望的なまでに無慈悲な……子犬の笑顔が滞留していた。
「……計算外だわ。あの立方体のお化け、
まさかピンポイントの座標に攻撃が可能っていうの?」
リサが震える手で上空に目がけて、小さな筒を掲げる。
刹那、視界を真っ白に染める強烈な閃光が戦場を包み込んだ。
閃光により、一瞬、子犬たちの感知が止まった。
その隙に二人は、最新鋭の巨大戦車『マウス』のハッチへ滑り込む。
「ほんと、怖ろしいスピードだな。
あれじゃあ、僕らには簡単に落とせないよ。
こうなったら、本拠地を叩くっていうのはどう?」
「素晴らしいです。カオル様、あの「子犬のお化け」を動かしてる
魔術師を倒した方が早いですね。私は何をしましょう?」
「それじゃ、僕たちに加勢できるドロイドを呼んでくれる?」
「はい、今なら300体を連れてきています」
リサが鋭く笛を吹くと、地面が鳴動した。
現れたのは、かつてロンドラに送られたものより二回り大きく、
禍々しい装飾が施された二足歩行型ドロイド部隊だ。
「魔導探知開始……。メディーナ方向に強力な魔力反応があるね。
やっと見つけたよ、オトハ。この前の分とまとめて御礼をしなくちゃね」
巨大戦車のエンジンが咆哮を上げ滑るように草原を突っ走る。
その後を、黒鋼のドロイドたちが獣のような速度で追いかけていった。
◇◆◇◆◇
一方、メディーナ国境の前線基地。
既に司令部には、帝国の新型戦車が、怖ろしい数のドロイドと共に、
こちらに向かってきている情報が入ってきている。
オトハは、「新型戦車」という言葉を聞き逃さなかった。
それ以来、双眼鏡を両手に持ち、ワクワクしながら到着を待った。
「来ました!」
兵の声が聞こえると、慌てて双眼鏡を覗き込む。
「……来ていますね。あの新型戦車、魔導効率はいいけど、それだけです。
あとは攻撃力も見てみたいですね。あのご婦人たちにお願いしましょう」
そういうと、オトハがポケットから笛を出し、口にくわえた。
「団地の奥様部隊、いっぱいしゃべってきてねー」
<< ピピーーッ!ピピピピ >>
どこから現れたか、無数の小鳥たち、いや、小鳥ロボットたちが
空いっぱいに現れ、戦車目がけて突進していく。
「リサ、あの黒い塊、もしかしてインコ?」
「そうですね、可愛いですが、ちょっと量が多すぎますね」
「うわ、ぶつかってくる気か?特攻爆弾だとでもいうのか?」
<< バサバサバサ! >>
さすがの新型戦車マウスでも、空飛ぶ小鳥ロボの飛行速度には勝てない。
数百のロボたちに突撃されたら、装甲が厚いマウスでもただではすまない。
「う、うゎーー。リサ、しっかり僕につかまって!」
小鳥たちがぶつかって、いや、まるでぶつかってこない。
カオルは、状況を把握するため、リサに声をかけた。
「リサ、だいじょうぶ?」
「はい、幸せです」
リサがカオルの腕にしがみつきながら、目を閉じている。
「え?」
「はい、カオル様に抱き着くなんて、アタイ、もうお嫁にいけません」
「何をいってるの?外の様子を透視魔法で確認してよ」
カオルがリサの手を優しくほどいて、冷たい目で指示を出した。
最初は手を離さなかったリサも、さすがに観念して仕事モードに戻る。
「かしこまりました。って、えーーー?」
「どうしたの?」
「小鳥ロボたちが、この戦車を取り囲んで、おしゃべりをしています」
リサが見た外の世界は、まるで小鳥たちの楽園だった。
大小さまざまな小鳥たちが、戦車の周りに止まって、
我先に、一生懸命おしゃべりをしていた。
その姿はまるで団地の奥様方の井戸端会議、そのものだった。
ドロイドたちも戸惑っている。
というよりも数が多すぎて、対応できないようだ。
戦車とドロイドと、おしゃべり小鳥。
この一見、幸せそうな景色だが、実は計算しつくされた
恐ろしいオトハの攻撃の幕開けだったのだ。
◇◆◇◆◇
だが、ちょうどその幕開けと同時刻、
メディーナの前線基地には、意外な報告がもたらされていた。
シルバーランド国境から、10万の兵士たちが、コチラに向かって進軍中。
その中には、魔法科学園の旗も見えるというのだ。
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