第31話:魔導ロケットランチャー『すないぱーちゃん』の初火テスト。〜二体のハイミノタウロスを物理的にわからせてあげました〜
「アカン! 押し切られる! 盾持ち、もっと前や!!」
ここは、メディーナ東の森。
その開けた広場は今や戦いで地獄と化していた。
目の前には、昨日一体でも手こずったはずのハイミノタウロスが二体。
50人いる兵士や冒険者たちの前に立ちふさがっている。
先ほどから、彼らの攻撃は一度もハイミノタウロスに届かない。
代りに二体の攻撃は、重装歩兵たちのミスリルの盾を、まるで紙切れのように引きちぎっていく。
「ぐあぁっ! 回復、回復魔法を早く!」
「だめだ! 奴の咆哮で魔力が霧散して……詠唱が繋がらねえ!」
後方で、血の気の引いた魔術師たちが震える手で杖を握りしめている。
彼らの攻撃は、ハイミノタウロスの咆哮で、ことごとく打ち消された。
「キキョウはん! 昨日みたいに……頼むわ!」
「いくらボクでも……二体同時は、……無理だよ」
キキョウが杖を構え、最悪の結末を覚悟して唇を噛んだ、その時だった。
戦場の凄惨な空気とはあまりに不釣り合いな、金属製の車輪が「ガラガラ……」と、のんきな音を立てて近づいてくる影があった。
◇◆◇◆◇
「お待たせしました。……それじゃあ、実験を始めまーす」
現れたのは、小さな台車を引いたオトハだった。
台車の上には、昨日起動しなかった「あの鉄の棒」が鎮座している。
彼女はそれを、まるで使い慣れた工具のようにヒョイと肩に担ぎ上げた。
「オトハはん!? 逃げえ言うたやろ! そんな鉄クズ持って何しにきたんや!」
「シバさん、失礼ですね。これは鉄クズではありません。……私の愛を収束させ、物理的にわからせるための魔導兵器――『魔導ロケットランチャー・すないぱーちゃん』です」
「すないぱー……? 嘘つけや! それ、どこからどう見ても面制圧用の重火器やないか!!」
シバの絶叫を無視し、オトハが筒の側面のレバーをガチリと引き絞る。
すると、大剣の鞘のようだった武骨な筒が、カシャカシャと精密な音を立てて展開した。
<< ヒュイーーン >>
複数の放熱フィンがせり出し、ホログラムの照準器が青白く浮かび上がる。
「展開完了。……昨日のは単なる魔力詰まり(バグ)でした。今度は回路を三倍に広げておいたので、少しくらい『濃い目』に流しても大丈夫なはずです。……ターゲット、二体まとめてロックオン」
◇◆◇◆◇
ハイミノタウロスがオトハに気づき、地面を蹴って突進してくる。
1トンの鋼鉄の塊が二体、暴走トラックのスピードだ。
だが、オトハにとって、その動きは全て「想定済み」だった。
間髪入れず、引き金を引いた。
「……いっけーー!」
筒の後方から余剰魔力が紅蓮の炎となって噴き出した。
その瞬間、超高密度の魔力を弾頭とした「光の塊」が線を描く。
光弾は空中で正確に二つに分裂し、ハイミノタウロスの胸部――魔力の核が眠る場所へと、吸い込まれていった。
<< ドドォォォォォォン!! >>
直後、爆音を置き去りにして、視界が真っ白に染まる。
そこに、巨体の魔獣たちの姿はなかった。
「……はぁ!? 消え……消えた……?」
◇◆◇◆◇
静まり返る戦場……。
「……うふふ。きれいに蒸発しちゃいましたね。まさに想定通りです。」
煙の上がるランチャーを肩に担ぎ、充血した目で「次の獲物」を探すオトハ。
小さな少女が、たった一発でハイミノタウロスを塵にしてしまったのだ。
助けられたはずの冒険者たちは、むしろオトハに恐怖を感じて、一歩、また一歩と後ずさりした。
「……シバやん。あの娘……絶対に怒らせたらアカンやつやな」
「……ワイに言うな。とっくに知っとるわ……」
メディーナの防衛線に突如現れた、最凶のエンジニア。
キキョウは静かに、しかし深くため息をつくのだった。
< あっちゃーっ。ド派手なことやりよるなー。サクラちゃん、これやりすぎやで >
影の中から、ユヅキの呆れたような声が響く。
< まさか、この世界の素材で魔導縮退炉を再現するなんて思わなかったわ >
サクラは、オトハがランチャーで作り上げたクレーターを複雑な目で見つめていた。
< そういえば、サクラちゃん。昨日「兄様」って言ってたなぁ…… >
< あぁ、アタシの「兄様」だ。よりによって、この世界にいたみたいね >
< またけったいな人が出て来たなぁ >
< 「兄様」が出てきたからには、この世界が「神のおもちゃ」になるのも時間の問題よ >
< あぁ、できる限り関わりたくないなー >
< ……オトハだったら。オトハとアタシなら、あの兄様にだって…… >
< やめとき。人間の寿命は短いんや。ウチらの事情に巻き込んだら一瞬で消えるで >
ご一読ありがとうございます。
「この作品、ちょっと面白そう」と思っていただけたら、
下の【☆☆☆☆☆】と【ブックマーク】で応援いただけると、うれしいです。
ポチリとすると、今日一日が優しく過ごせるかもしれません。(たぶん……笑)




