表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/61

第31話:魔導ロケットランチャー『すないぱーちゃん』の初火テスト。〜二体のハイミノタウロスを物理的にわからせてあげました〜

「アカン! 押し切られる! 盾持ち、もっと前や!!」


 ここは、メディーナ東の森。

その開けた広場は今や戦いで地獄と化していた。


 目の前には、昨日一体でも手こずったはずのハイミノタウロスが二体。

50人いる兵士や冒険者たちの前に立ちふさがっている。


 先ほどから、彼らの攻撃は一度もハイミノタウロスに届かない。

代りに二体の攻撃は、重装歩兵たちのミスリルの盾を、まるで紙切れのように引きちぎっていく。


「ぐあぁっ! 回復、回復魔法を早く!」

「だめだ! 奴の咆哮ハウリングで魔力が霧散して……詠唱が繋がらねえ!」


 後方で、血の気の引いた魔術師たちが震える手で杖を握りしめている。

彼らの攻撃は、ハイミノタウロスの咆哮で、ことごとく打ち消された。


「キキョウはん! 昨日みたいに……頼むわ!」


「いくらボクでも……二体同時は、……無理だよ」


 キキョウが杖を構え、最悪の結末を覚悟して唇を噛んだ、その時だった。


 戦場の凄惨な空気とはあまりに不釣り合いな、金属製の車輪が「ガラガラ……」と、のんきな音を立てて近づいてくる影があった。



◇◆◇◆◇


「お待たせしました。……それじゃあ、実験を始めまーす」


 現れたのは、小さな台車を引いたオトハだった。

台車の上には、昨日起動しなかった「あの鉄の棒」が鎮座している。


 彼女はそれを、まるで使い慣れた工具のようにヒョイと肩に担ぎ上げた。


「オトハはん!? 逃げえ言うたやろ! そんな鉄クズ持って何しにきたんや!」


「シバさん、失礼ですね。これは鉄クズではありません。……私のしゅうちゃくを収束させ、物理的にわからせるための魔導兵器――『魔導ロケットランチャー・すないぱーちゃん』です」


「すないぱー……? 嘘つけや! それ、どこからどう見ても面制圧用の重火器やないか!!」


 シバの絶叫を無視し、オトハが筒の側面のレバーをガチリと引き絞る。

すると、大剣の鞘のようだった武骨な筒が、カシャカシャと精密な音を立てて展開した。


<< ヒュイーーン >>


 複数の放熱フィンがせり出し、ホログラムの照準器が青白く浮かび上がる。


展開デプロイ完了。……昨日のは単なる魔力詰まり(バグ)でした。今度は回路を三倍に広げておいたので、少しくらい『濃い目』に流しても大丈夫なはずです。……ターゲット、二体まとめてロックオン」



◇◆◇◆◇


 ハイミノタウロスがオトハに気づき、地面を蹴って突進してくる。

1トンの鋼鉄の塊が二体、暴走トラックのスピードだ。


だが、オトハにとって、その動きは全て「想定済み」だった。

間髪入れず、引き金を引いた。


「……いっけーー!」


 筒の後方から余剰魔力が紅蓮の炎となって噴き出した。

その瞬間、超高密度の魔力を弾頭とした「光の塊」が線を描く。


 光弾は空中で正確に二つに分裂し、ハイミノタウロスの胸部――魔力の核が眠る場所へと、吸い込まれていった。


<< ドドォォォォォォン!! >>


 直後、爆音を置き去りにして、視界が真っ白に染まる。

そこに、巨体の魔獣たちの姿はなかった。


「……はぁ!? 消え……消えた……?」



◇◆◇◆◇


 静まり返る戦場……。


「……うふふ。きれいに蒸発しちゃいましたね。まさに想定通りです。」


 煙の上がるランチャーを肩に担ぎ、充血した目で「次の獲物」を探すオトハ。

小さな少女が、たった一発でハイミノタウロスを塵にしてしまったのだ。


 助けられたはずの冒険者たちは、むしろオトハに恐怖を感じて、一歩、また一歩と後ずさりした。


「……シバやん。あの娘……絶対に怒らせたらアカンやつやな」


「……ワイに言うな。とっくに知っとるわ……」


 メディーナの防衛線に突如現れた、最凶のエンジニア。

キキョウは静かに、しかし深くため息をつくのだった。



< あっちゃーっ。ド派手なことやりよるなー。サクラちゃん、これやりすぎやで >


 影の中から、ユヅキの呆れたような声が響く。


< まさか、この世界の素材で魔導縮退炉リアクターを再現するなんて思わなかったわ >


 サクラは、オトハがランチャーで作り上げたクレーターを複雑な目で見つめていた。


< そういえば、サクラちゃん。昨日「兄様」って言ってたなぁ…… >


< あぁ、アタシの「兄様」だ。よりによって、この世界にいたみたいね >


< またけったいな人が出て来たなぁ >


< 「兄様」が出てきたからには、この世界が「神のおもちゃ」になるのも時間の問題よ >


< あぁ、できる限り関わりたくないなー >


< ……オトハだったら。オトハとアタシなら、あの兄様にだって…… >


< やめとき。人間の寿命は短いんや。ウチらの事情に巻き込んだら一瞬で消えるで >

ご一読ありがとうございます。

「この作品、ちょっと面白そう」と思っていただけたら、

下の【☆☆☆☆☆】と【ブックマーク】で応援いただけると、うれしいです。


ポチリとすると、今日一日が優しく過ごせるかもしれません。(たぶん……笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ