第3話:愛(しゅうちゃく)が重すぎて、ボロ寮が「聖地」になりました。〜魔法より美味しい、禁忌の黄金クロワッサン〜
【 1. 蹂躙のお披露目会 】
シルバーランド王立魔法学園には、この時期、名物となるイベントがある。
その名も、「新入生・魔法お披露目会」。
これは全クラスの新入生が、自らの魔法を全校生徒と教師の前で披露し、その才能を誇示する伝統行事である。
演習場のステージは、優秀な学生たちが華麗な魔法を披露するたびに喝采に包まれていた。
そんな中、最後に現れたのは、ひときわ異彩を放つ二人組だった。
**特待クラスの証である「純白のスカーフ」を誇らしげに(本人は恥ずかしそうに)なびかせる、キキョウ・シラユキ。
そして、その隣で「濁ったドブネズミ色のワッペン」**が縫い付けられた第八寮の制服を着て、怪しげな円筒装置を抱えるオトハ・ブルーノ。
「ええっと、最後は……特待クラスのキキョウさんと、第八寮のオトハさんの合同披露ですね」
司会の困惑した声が響く。
本来なら交わるはずのない「天才聖女」と「万年魔力不足」のペアだ。
オトハは巨大な物体――名付けて『オトハ式・魔導ブースター初号機』を、ドサリと地面に置いた。
「キキョウさん。……これ、昨日から更にカスタマイズしたんですが、**『実地テスト』**してもいいですか?」
「……テストって。これ、一応ボクの注目度がかかった『お披露目』なんだけど。……まぁいいわ。特待生のスカーフなんて、昨日パンを焼いた瞬間に汚れちゃったしね!」
キキョウは吹っ切れた顔で、オトハ特製の「六角形レンズ」を三枚、空中にパパパッと展開した。
【 2. 噛み合わない三人の作戦会議 】
その時、オトハの背後に、漆黒のドレスを纏ったサクラが悠然と姿を現した。
<ククッ、いいわねぇ。ねぇキキョウ、そのレンズを三層に並べなさいな。アタシが世界一『効率的』なぶっ放し方を教えてあげるわ!>
サクラが不敵に笑いながら、キキョウの鼻先で指をパチンと鳴らす。
「ちょ、ちょっと! 何よこの魔女、急に出てきてボクを指差して……! 何か言いたそうな顔してるけど、全然声が聞こえないわよ!」
真っ白なスカーフを揺らしながら、虚空に向かって抗議する姿に、観客席の生徒たちが「特待クラスのプレッシャーで、ついに聖女様が……」とざわつき始める。
「あ、キキョウさん。サクラさんは『レンズを三層に並べろ』って言ってます。……あ、今、サクラさんがキキョウさんの胸元の特待生バッジをベタベタ触って遊んでますよ」
「えっ、ちょ、やめなさいよ! 汚れるじゃない! 姿は見えないのに実況だけは正確なのが、一番怖いのよ、オトハ!」
サクラは楽しそうにキキョウの腕を強引に引き寄せ、射線を無理やり調整していく。
<ほら、そこよ! そこが一番『燃える』角度よ!>
「あ、サクラさんが『そこが一番よく燃える』って言ってます! 満面の笑みです!」
「何それ怖い! 『燃える』とか言わないで! ……でも、なんだかこの構え、しっくりくるわね……」
【 3. 謎の三連射 】
「**わたしでは魔力が使えないから。**サクラさんとキキョウさん、あとは……なんとなく通じ合ってくださいね!」
オトハが装置のレバーをガチャンと倒した。
その瞬間、封印が景気よく弾け飛ぶ!
「第一波……いっけぇぇぇ!!」
サクラの激しい身振りに導かれ、キキョウの口から威勢のいい声が飛び出した。
ドォォォォン!!
一発の魔力弾が、標的を貫通し、背後の防壁を粉砕する。
「あんな術式、授業で習ってないぞ!」と会場が騒然とする中、サクラのジェスチャーは加速する。
<次はもっと角度を絞って! ほら、いくわよ!>
サクラが空中で両手を狭めるような動きを見せる。
「わ、わかったわよ! 何その『もっと絞れ』みたいな手つき! こう!? 第二波……放てぇ!」
続けざまに放たれる第二射。
装置から「キィィィィン!」と心地よい駆動音が鳴り響き、キキョウの瞳が黄金色に輝いた。
「ラスト……! **全部まとめて吹っ飛びなさい!!」
三発目の光が、演習場のターゲットエリア一帯を更地にした。
静まり返る会場。
キキョウは肩で息をしながら、サクラの(声は聞こえないが)満足げなドヤ顔を睨みつけた。
【 4. 破壊のあとの友情(?) 】
<あはは! 最高じゃない、キキョウ! アンタ、癒やしより破壊の方が才能あるわよ>
サクラはキキョウの横で腹を抱えて笑っている(無音)。
「……絶対にろくなこと言ってないわね、その笑い方! ボクの『清純派・特待生』としての将来を返しなさいよ!」
「……成功ですね。サクラさん、キキョウさんのことを『破壊の才能に溢れてる』って褒めてますよ」
「絶対にその顔は、褒めてないわよ!」
一方、生徒会室ではユヅキがコーラを吹き出していた。
<……ひっひっひ! 見たか今の? サクラちゃんのせいで特待生のスカーフが煤だらけやん。あの子の周りは、相変わらずハチャメチャやなあ>
『あら、賑やかでいいではありませんか。……ふふ、あの方の周りは、いつも退屈しませんわね』
真紅の堕天使・ヤヨイが、扇子で口元を隠しながら、楽しそうに目を細めていた。
読んでいただき感謝です!
「魔法力ゼロの少女が、歪んだ愛で世界を解体する」
その軌跡を、ぜひ最後まで見届けてください。ご一読ありがとうございます。
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