第108話:ちゅ〜ると、たこ焼きと、アッポーウォッチ
「オトハちゃん、
キルアはんの話はどうやった?」
「シバさんの言う通り、
軍の手伝いをしてほしいそうですー」
「やはりな。まぁここまでは計算通りや。
『4つ目の音』は見つかりそうでっか?」
「うーん、わからないです。
でも……面白いものを見せてもらいましたよ!」
「ほほう、なんでっか?」
「薄くて鉄っぽい板なんですけど、表面がガラスなんです。
触ると冷たくて気持ちいいんですよー」
「何に使うものやろ?」
「分かりません。
昔は光ったりして、色んな奇跡を起こしたらしいですよ」
「……それって、まるで『アッポーウォッチ』みたいやな」
「あぁぁぁぁぁああ! アッポーウォッチだーーーっ!
どこかで見たことがあると思ったんですよねーーーっ!」
「あんた、魔道具士なんだからすぐ気づきなさいな……」
「えへへ、つい興奮しちゃって分かりませんでした!」
オトハはてへっと頭をかく。
だが、シバの表情は真剣だ。
「……でも、なんでアッポーウォッチがこっちの世界にあるんや?
サトルはんがこっちにも来ていたっちゅうことかいな?」
「どうなんでしょうねー?
サトル君、別の世界にいたなんて何も言ってませんでしたよ?」
「これはいよいよ『4つ目の音』に近づいてるかもしれんな。
オトハちゃん、何とかアッポーウォッチを起動でけへんか?」
「分かりません。
もう一つのアッポーウォッチの時は、勝手に動いたので……」
オトハは引き出しから、サトルのアッポーウォッチを取り出した。
こちらは淡い青白い光を放ち続けている。
「あぁ、あの子に聞いてみたらどうや? 猫耳娘の子や」
「リリーちゃんですか?」
「そやそや、そのリリーちゃんや!」
「分かりましたー!」
オトハは胸の前で手を合わせ、
アッポーウォッチの画面に触れた。
「リリーちゃん、私の願いを叶えてほしいの!
アッポーウォッチについて教えてちょーだい!」
『ゴロゴロ……にゃ〜〜〜ん!
この『ちょ〜る』、最高だにゃん……!』
ふたりの目の前に、
リリーの立体映像が浮かび上がった。
どこで見つけたのか、以前カオルが使っていた
『ちゅ〜る』を手に、ちゅばちゅばと幸せそうになめている。
「リリーちゃん! 久しぶりですー!」
『あっ、その声は……!! ご主人様、ずいぶん久しぶりにゃ!」
「お食事中ごめんなさい」
『いいにゃ! どうしたにゃ?』
「私、今日こっちの世界でアッポーウォッチを見たんです。
でも動かなくて……」
『バッテリー切れにゃん』
「バッテリー……?」
『簡単に言うと、魔力切れにゃん。
ご主人様、あの子ぐまを使うといいにゃん!
あの子たちは魔力を生成する力があるから、
バッテリーに転用できるはずだにゃん!』
「おお! いけそうやんけ!」
「はい、いけそうだにゃん!」
「もう一つのアッポーウォッチも、サトル君のですか?」
『にゃにゃ……今は起動していないから通信ができないにゃん。
起動すれば持ち主もわかるにゃん!』
「分かったー! ありがとねー!」
通信が切れ、シバが腕を組んだ。
「キルアはんから、どうにか借りて持ち帰れればなぁ。
起動するところを見られるのもあかんしな」
「隊長さん、先祖代々の宝物だから、
いつも持ち歩いているみたいです」
「あかんなぁ……」
コンコンッ!
「シバさーん! 祭りの練習の時間ですよー!」
「おー! もうそんな時間か!
オトハちゃん悪い、続きはまた明日や!」
「シバさん、お祭りで何かやるんですか?」
「お! よう聞いてくれたわ! ちょっと待っててなー!」
シバは風のように部屋を飛び出していった。
「シバさん、練習の時間が……
あ、走っていっちゃいましたね」
バタバタと激しい足音と、
ジュージューと香ばしい音が聞こえてくる。
わずか1分後、シバがお皿いっぱいの『何か』を抱えて戻ってきた。
青のりがたっぷりとかかっている。
「ほれ、できたでぇ! 食べてみ!」
「はふはふ……うわぁぁぁ! 美味しいっ!
シバさん、これ何ていう食べ物ですか!?」
「『たこ焼き』や! 美味しいやろ、あんたも食べ!」
「は、はい!
じゃあ食べたら練習に行きましょうね。
……はふはふ、おいひー!」
「あと射的も出すで〜!
高そうなオマケは重りで固定しておけばボロ儲けや! へへへ……」
ゲスい笑顔を浮かべるシバを見て、オトハは苦笑いした。
「シバさん、すごい悪い顔になってますよーーー」




