↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/21

第八話 旅立ち

「行くのか?」


 村を出る朝。

 シナーズが家まで来ていた。

 荷物は少ない。

 旅に必要なものだけを詰めた。

 村を出る。

 その言葉が、まだ現実のものとして感じられなかった。


「ああ」

「どうせなら、世界でも救ってこいよ?」

「なんだよ、それ」


 ウルトは笑った。

 けれど、こんな冗談を言い合えるのも、しばらくは最後だ。

 家の外では、メルクルが待っていた。


「準備はできたか?」

「うん」

「忘れ物は?」

「ない」

「本当に?」

「……たぶん」

「そこは自信を持て」


 三人で笑う。

 シナーズはウルトの肩に手を置いた。


「無理はするな」

「……分かってる」

「一人で抱え込むな」

「分かってるって」

「知らない人について行くな」

「え?」

「歯みがけよ」

「いや、子供じゃないんだから……」

「それから――」

「もういいよ!」


 シナーズは、本当にいい奴だ。

 そうして三人は、村の門へ向けて歩き始めた。

 ウルトは村を見る。

 小さな村。

 自分が育った場所。

 初めて言葉を覚えた場所。

 剣を教えてもらった場所。

 友達と笑った場所。

 そして――メルクルに拾ってもらった場所。


「俺、先生になりたかった」


 ふとこぼれた言葉に、メルクルが返す。


「知ってる」

「警備兵にもなりたかった」

「それも知ってる」

「この村を守る大人になりたかった」


 メルクルは何も言わなかった。


「……全部、できなくなるのか」


 メルクルが、ウルトの頭を撫でる。


「じゃあ、探しましょう」

「……何を?」

「新しい夢。今までの夢がなくなったなら、これから探せばいい」

「そうさ! それに、俺が守っておいてやるって言っただろ? 見つからなけりゃ、戻ってくればいいんだ!」


 シナーズも励ましてくれる。

 だが、それが簡単なことではないと、ウルト自身も分かっていた。


「見つかるかな」

「きっと」


 メルクルは笑った。


「だって、世界は広いんだから」


 門を抜け、ウルトは村に振り返る。

 そこには村長や校長、村の人たちが大勢いた。

 どうやら門の影に隠れていたようだ。

 みんなが口々に、


「頑張れよ!」

「強くなってこい!」


 と声をかけてくれている。

 十五年間暮らした村。

 何もかもが変わってしまったわけじゃない。


「ウルト」


 村長が、魔石式二輪車を押して歩いてきた。


「これを使いなさい」

「「うおー! かっけー!」」


 ウルトとシナーズは、見事なハモリを見せた。


「でも……なんかボロいな」


 確かに男心をくすぐるものはあるが、所々傷んでいるようにも見える。


「そりゃそうさ。私がこの村に居つく前に使っていたものだからね」


 どうやら元々はメルクルの私物だったようだ。

 村に居ついてからは、外への買い出しなどに使われ、いつの間にか村の共有物になっていたらしい。


「……じゃあ、そろそろ行こうか」


 魔石式二輪車を見ながらシナーズと話していたウルトに、メルクルが声をかけた。

 ここで過ごした日々が終わる。

 けれど、ウルトは前を向いていこうと心に決めていた。

 見送りに来てくれたシナーズや、村人たち。

 みんなのおかげだ。


「うん! 行こう!」


 ウルトは、まだ知らない。

 自分はヒューマではないのかもしれない。

 ルフでもないのかもしれない。

 何も分からない。

 目的もない。

 ただ、新しい夢を探すために。


「行ってきます!」


 ウルトは手を振った。

 二人の旅が始まった。


 ---


「ねえ、俺にも運転させてよ!」

「ダメに決まってるだろ!」


 古いながらも勢いよく走る魔石式二輪車。

 メルクルが運転し、その後ろでウルトが彼女につかまっていた。

とりあえず、村から旅立つところまで書けて一安心です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。