↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/19

第十話 初めての戦い

 ――二日後。

 剣の修行と移動を繰り返しながら、二人は森の中を進んでいた。

 街道から少し外れた道だった。


「この先を抜ければ、また街道に出るはずよ!」

「ムルトト村までは?!」

「あと少しね!」

「どれくらい?!」

「順調なら、夕方くらいかしら!」


 ウルトは辺りを見回す。

 隣の村にもまだ着いていないのに、ずいぶん遠くまで来たように感じる。

 森の景色も、村にいた頃とは違う。

 知らない場所。

 知らない道。


 そして――知らない魔物。


「……魔物!?」

「今気づいたの?」


 どうやら、少し前から魔物と並走していたらしい。

 少しずつ、こちらとの距離を縮めてきていたようだ。


「どうするの!?」

「森と街道の間が少し開けていると思うから、そこで対処する! 飛ばすよ!」

「分かった!」


 ウルトはメルクルにしっかりと捕まり、そのまま森を駆け抜けていく。

 途中、一匹の魔物が飛びかかってきた。

 しかし、メルクルの運転さばきが光る。

 片腕で運転しているとは思えないほどの見事な操作で、魔物を振り切った。

 ほどなくして森を抜けると、メルクルはすぐに二輪車を止めた。


 そして――


 魔物の群れも森から飛び出してくる。


「ワーウルフかい」


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 数は多くない。

 一匹のワーウルフが、手下と思われる二匹のウルフを引き連れている。

 三匹は二人を取り囲むように、じりじりと距離を縮めてくる。

 メルクルは斧を構えた。


「ウルト。私の後ろに――」

「大丈夫!」


 ウルトも木剣を抜いた。


「俺も戦える!」

「……そうね」


 メルクルは一瞬だけウルトを見る。


「無理はしないで」

「分かってる!」


 修行とは違う。

 本当の戦闘。

 それでも、ウルトは冷静に身構えていた。

 謎の男と対峙した時の方が怖かったからか。

 それとも、隣にメルクルがいるからか。

 その理由は、ウルト自身にも分からなかった。


 ――次の瞬間。


 モンスターが一斉に襲いかかってきた。


「来た!」


 ウルトが走る。

 本能的に弱い相手だと判断したのか、二匹のウルフがウルトへ向かってきた。

 ワーウルフの進路はメルクルが塞いだ。


「悪いが、あんたの相手は私だよ」


 メルクルが斧を振り下ろす。


「グググググ……!」


 ワーウルフが唸り声を上げた。


 一方、ウルトには二匹のウルフが向かってくる。

 一匹目の攻撃をかわす。

 そのまま二匹目へと木剣を振り抜いた。


「やあ!」

「ギャウッ!」


 ウルフが吹き飛ぶ。

 自分は戦える。

 そう思った。

 冷静ではあった。

 しかし、不安がないわけではない。

 修行で身につけた立ち回り。

 相手の動きを見て、次の動きを予測する方法。

 そのすべてが、今の自分を支えている。

 どれもメルクルが教えてくれたことだ。


 最初にかわしたウルフが、大きく旋回して戻ってくる。

 今度は飛びかかってきたところを木剣で受け止める。

 その勢いを利用し、そのまま地面へ叩きつけた。


「だりゃあああ!」


 木剣はウルフの首元を捉えていた。

 叩きつけられたウルフは、白目をむいて動かなくなる。


「よし!」


 その瞬間だった。


「ウルト!」

「――!」


 メルクルの声が響いた。

 ウルトは咄嗟に右側へ飛び退く。


 ――背後。


 最初に吹き飛ばしたウルフが迫っていた。

 ウルフは自分が走ってきた勢いのまま、倒れているもう一匹に激突する。


「今のうちに!」


 ウルトは背後からウルフの頭へ木剣を叩き込んだ。


 ドスッ!


 目の前に、二匹のモンスターが倒れ込む。


「……よ、よっしゃーーー!!」


 初めての実戦。

 そして――初めての勝利。

 今まで感じたことのない達成感が、ウルトの胸を満たしていた。


「メルクル! ありがとう、助か――」


 ウルトが振り返る。


 そこには――


 斧を振り抜いたメルクルと、その前で首から血を噴き出しているワーウルフがいた。


「……」


 あまりの光景に、ウルトは言葉を失った。

 自分が思っていた以上の、メルクルの強さ。

 その姿から、目を離せなかった。

 メルクルがこちらへ振り向く。


「何やってんだい、ウルト!!」

「……え?」


 慌てて振り返る。

 そこには――

 ウルフの爪が、目の前まで迫っていた。


「しまっ――」


 避けるには遅い。

 咄嗟に両手を顔の前へ出す。


 ――失敗した。


 完全に油断していた。

 後悔。

 恐怖。

 様々な感情が、ウルトの心を一気に満たしていく。

 その瞬間。

 胸の奥が締め付けられるような感覚が走った。


 ――忘れていない。


 あの感覚。


「……え?」


 ボォンッ!!


 ウルトの目の前で、炎が爆発した。

 ウルフは吹き飛ばされ、そのまま地面を転がっていく。


「……」


 ウルトは、自分の手を見る。


「……出た」

「ウルト!」


 メルクルが駆け寄ってくる。


「大丈夫かい!?」

「う、うん……」


 ウルトは、まだ自分の手を見つめていた。


「また……出た」


 しかし――


「あれ……?」


 視界が揺れる。

 足に力が入らない。


「ウルト!」

「メル……クル……」


 そのまま、ウルトの身体が崩れ落ちた。


 ---


「……ん」


 目を開ける。

 空が見えた。


「……ここは?」

「起きた?」


 声の方を見る。

 メルクルが座っていた。


「俺……また?」

「ええ」


 ウルトは額に手を当てる。


「やっぱ才能ないのかなあ」

「それは私には分からないわ」

「メルクルでも?」

「私の魔法とは使い方が違うもの」


 メルクルは少し考えてから続けた。


「私の魔法は、基本的に体の中で完結するものだから」

「体の中?」

「身体能力を上げたり、感覚を強化したり。そういう使い方が中心なの」

「じゃあ、さっきみたいな魔法は?」

「私は使えない。というより、料理や洗い物をする時に少し使えるくらいで、あそこまでの威力の魔法となると、からっきしね」


 そういえば、昨日までにも焚き火をつける時、指先に小さな火をつけていた。


「でも、あなたの魔法は違いすぎる」

「……」

「大きく放出するようなタイプの魔法は、私が教えるには向かない。それに――」


 メルクルは少し困ったように言った。


「このままじゃ危ないわ」

「ええ」

「強いのに、扱えていない。扱えなければ、今日みたいに暴走した時、対処できなくなるかもしれない」


 メルクルはため息をついた。


「誰かに教えてもらいましょう」

「誰かって?」

「魔法が得意な人」

「……」


 ウルトは少し考えた。


「そんな人、いるかな」

「いるでしょう」

「その人を探すことも、旅の目的になる?」


 メルクルは一瞬、呆気にとられた。

 そして――笑った。


「あっははは! そうね。知らない人に出会う、知らない場所に行く。それも旅の目的ね」


 ウルトは空を見上げる。

 倒れてしまった。

 それでも――初めての戦闘をやり切ることができた。

 清々しい風が、ウルトの頬を撫でていく。


「あ、魔法は禁止ね」

「えっ?」


 ウルトが勢いよく起き上がる。


「まあ、制御ができていないから、どっちかと言えば、意識的に使おうとしないこと」

「なんで!?」

「倒れるから」

「でも、練習できないだろ!」

「練習して、その度に倒れていたら、他の修行ができないでしょう」

「……うぐぐ」


 反論できない。


「だから、魔法は誰かに教えてもらうまで禁止」

「……分かったよ」


 ウルトは不満そうに口を尖らせる。


「でも、一日一回くらい……」

「命令です」

「……はい」


 メルクルも立ち上がった。


「じゃあ、行きましょう」

「もう行くの?」

「進まないと、ムルトト村に着かないでしょう?」


 そして二人は、再び進み始めた。

 魔法を使えないまま。

 どうすれば、自由に使えるようになるのか。

 その答えは、まだ分からなかった。


 ---


「……うわあ」


 ボロボロだった魔石式二輪車が、完全に壊れていた。

 どうやら、メルクルが戦っている最中にワーウルフがぶつかり、壊してしまったらしい。


「くっそー、ワーウルフのやろう」

「……そ、ソーネー……」


 憤るウルトの隣で、メルクルが妙に片言になっていた。

本当に難しいですね。

次の目的地の村の名前は出しているのに、最初の村の名前が出てない。笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。