頼み事
なな
焼いて、食うぞ。
きさまら、おどかしおって。
まだまだ、明けぬではないか。
向こうの端で、黄色い両足を踏ん張り、
にらんでくる、鶏たちに。
武者たちは、にやにやしながら、言った。
前かがみになり、両手で、茶碗を、
包み込む。
ぬくい。
ぬくいのう。
良い、香りじゃ。
美しい、緑色じゃ。
用件は、なんだ。
一体は、眉間に、しわを寄せて、
不機嫌そうに、言った。
すかさず。
正時は、一体の額を、平手で、叩いた。
なんで、ございます、か!
一体は、大きな声で、たずねた。
お経が、読めぬ坊主に、
孫娘をさらわれた、と、
みんなに、言いながら、
行く婆様に、会ってな。
武者たちは、ニヤリと、笑う。
一体は、舌打ちして、堪えた。
あほうだが。
大したやつで。
近くに行けば、自然と、姿は、
形になるだろうと、教えてもらってな。
頼みを。
聞いては、もらえまいか。
正時が、頬を、つねる。
どうぞ、お聞かせ、願います!
大きな声で、言った。
ありがたい。
武者たちは、頭を下げた。
もったいない。
正時は、声を、震わせる。
一体は、ちらっと、正時を見た。
いいから。
早く。
おやじさまが、泣く。
武者たちは、可笑しそうに、笑った。
齢は、1000年近いのかも、知れぬ。
ごつごつとした、岩のように育ち、
黒みをおびた、貝が。
御子様方の頭蓋骨を、取り込んでいてな。
その身の限りを、越えて、なお。
守り続けてくれていたが、とうとう。
いのちは、あと、2つの、日の出で、
尽きる。
海の底に。
さらしたくないのだ。
流されれば、おふたりは、離れてしまう。
ふたり、入っているんだな。
一体は、言って、正時を、見た。
御子様方は、双子なのだ。
一体は、うつむいた。
わかれては。
さびしがるな。
じっとしていたが、顔を、上げた。
どうすれば、よろしいでしょう、か。
おお。
武者たちは、喜び、どよめいた。
あたりが、明るくなりはじめると、
武者たちは、浜の方に向かって、
歩きながら、消えていった。
一体。
正時は、見上げた。
潜れるか。
一体は、頷いた。
いろいろ。
つながってきて、こうなっている。
正直、怖いが。
でも。
そういう、ときなんだろ。
正時は、頷いた。
そうだな。
次々に、つながるときらしい。
あきらかに。
縁とは、あるものなのだな。
ありがとうよ。
おまえには、感謝している。
一体は、黙って、正時と、目を合わせた。
なら、もう、のぞきは、やめてくれ。
のぞいては、いない。
正時は、笑った。
一体も、笑った。
だけど、ひとりでは。
上がらぬほど、大きいのだろうな。
そうであろうな。
そろそろ、風呂に、来るだろう。
ああ、そうだ。
頼んでみるかな。
おそらく。
のってくれるぞ。
舟を。
隠し持っているくらいだからな。
どこに。
見たことない。
正時は、可笑しそうに、笑った。
どうやって、あげたもんだか。
天井裏だよ。
のぞきに行ったのかよ。
正時は、何も言わずに、
楽しそうに、笑った。
つづく




