表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/34

第二十四話 序列

本日は二話分更新します。


「本当に行かせて大丈夫だったのでしょうか?」


 アナスタシア姫の顔を覗き見るように尋ねる兵士。


「私が間違ったことを言っていると、そうおっしゃりたいのですか?」


「いえ、そのようなことは決して! ただ……」


 すぐさま否定をし、視線を下に向ける。そこには、城壁の上で皆に見守られながら、静かに剣を抜いた二人の騎士がいた。今まさに、水帝流と黒帝流の決闘が始まろうとしていたのだ。


「言いたいことは分かります。ですが、心配ご無用です」


 皆が固唾を飲んで見守る中、アナスタシア姫ははっきりと言い放つ。


「確かに水帝流のソリュースは強敵です。私たちほどではないにしろ、彼もまた戦場の場数を踏み、水帝流を完璧に使いこなしている猛者中の猛者ですからね。ですが今回の戦い、私の予想通りであればフェリクの勝利です。負けることはまずありません」


「どうしてそのようなことがお分かりに?」


「型には序列があるのです。封印された竜の序列に従ってね」


「序列……?」


 兵士が不思議そうに首を傾げる。それを見たアナスタシア姫は、強風に髪を揺らしながら静かに問いかける。


「あら、ご存じないの?」


「はい。そのようなお話は聞いたことがありません」


 アナスタシア姫は「ふーん」と言い、しばらく前を見据えてが、やがて


「ではお教えしましょう」


 と言い、兵士に一から教育するかのような口調で話し始める。


「その昔、七つの竜には序列がありました。一位から七位までの、自らの強さを示す指標です。竜にとって序列というのはとても大切なものだったらしく、その序列を奪うため、竜同士で争いあったこともあったそうですよ」


 アナスタシア姫は続ける。


「七位が六位に上がったり、はたまた四位が五位に転落したり。そのようないざこざを彼らは繰り返したそうですが、一度たりとも動かなかった席が二つありました。それが一位と二位の席です。それだけ一位と二位、そして二位と三位の間には絶対的な差があったのです」


 アナスタシア姫は前を見据え、続きを口にする。


「七つの竜、序列第一位は白竜クロノス・アーク。宿している者は史上最強の騎士と名高い、あのジオスです」


「三英傑のジオス様ですか……納得です」


 すかさず返事が返ってくる。それも当然の話だ。ジオスが負け知らずなのは、この大陸にいる誰もが知っていたからだ。史上最強の騎士、ジオス・・その強さの一片を見た気がした。


「反対に……」


 アナスタシア姫が口を開く。


「ソリュースが宿す水竜トラルースは、序列第六位です。序列六位であれば、三位までの竜なら勝てる可能性があります。先ほど申し上げた通り、一位と二位以外の序列は変動しますからね。──では本題です。なぜ私がこうも余裕でいられるのか。お分かりですか?」


 アナスタシア姫が振り返り、余裕の笑みで問いかける。彼女の自信ありげな表情を見ながら、兵士は考えた。なぜ今序列の話を持ってきたのか。なぜ初陣のフェリクを猛者のソリュースと対峙させたのか。そしてなぜ……このような状況下でもアナスタシア姫は余裕そうにしているのか。そこに絶対的な差があるからか?そこに変え難い自然の摂理があるからか?考えて、考えて、考えて。そしてついに──結論に行きつく。


「もしかして、フェリク様の宿した黒竜ドメラ・ゲイルって……」


 「そう」と言い、アナスタシア姫が笑みを浮かべた。そして、


「──序列第二位。ジオスと戦わない限り、一対一で負けることはまずありません」


 と言い放ったのだ。


「……」


 兵士は呆気に取られていた。アナスタシア姫がそこまで計算していたとは、思ってもいなかったからだ。

 しかし、まだ疑問が残る。自らの人生観に基づけば……


「しかし、経験の差があるのでは?」


 と、思っていたことを口にする。それを聞いたアナスタシア姫はすかさず答えた。


「言ったはずでしょう、一位と二位は別格だと。だからこそ行かせたのです。黒帝流は──」


 戦場で水帝流と対峙するフェリクを見る。それはまるで期待の星を眺めるかのような目で見つめ……そして。


「──水帝流に力負けするほど、弱い型ではありません」


 と、きっぱりと言い切ったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ