# 第九話 ## 「異世界社員旅行、始まる」
# 第九話
## 「異世界社員旅行、始まる」
「社員旅行?」
俺は耳を疑った。
会議室に集まった全員が当然のような顔をしている。
なぜだ。
なぜ世界の存亡の話から社員旅行になるんだ。
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ミレイが説明する。
「勇者の精神安定が最優先事項です」
「はい」
「そのため休暇を実施します」
「はい」
「会社全体で」
「待て」
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俺は立ち上がった。
「なんで会社全体なんだよ!」
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美咲が端末を操作する。
「現在の世界構造では、勇者様と関わりの深い人物を一定範囲内に配置する必要があります」
「ペットじゃないんだぞ俺」
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ルクレシアが笑う。
「楽しそうじゃない」
リリアは目を輝かせる。
「旅行です!」
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その日の午後。
会社から全社員へメールが届いた。
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件名:
**【重要】異世界社員旅行のお知らせ**
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目的地:
**天空温泉都市ラグナリア**
宿泊:
**王宮級リゾートホテル**
参加者:
**全社員・モンスター含む**
欠席:
**不可**
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社員たちは騒然となった。
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「温泉だー!」
「有給扱い!?」
「ドラゴンも参加できるの?」
「できます」
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なぜか皆楽しそうだった。
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そして翌日。
巨大な転移ゲートの前。
社員三百人が並んでいる。
ゴブリン。
オーク。
エルフ。
人間。
ドラゴン。
全員スーツ姿。
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俺は思った。
(普通の社員旅行返して)
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「勇者様!」
リリアが走ってくる。
旅行用の私服だった。
白いワンピース。
麦わら帽子。
めちゃくちゃ可愛い。
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「似合いますか?」
「……似合う」
リリアの顔が真っ赤になる。
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そこへルクレシア登場。
黒いサングラス。
黒いワンピース。
モデルみたいだった。
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「勇者様♡」
「近い近い近い」
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さらに美咲も現れる。
普段のスーツではなくカジュアルな服装。
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俺は少し驚いた。
「そんな服も着るんだな」
「……悪いですか?」
少し照れている。
珍しい。
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その時だった。
ミレイがマイクを持つ。
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「それでは出発します」
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巨大な光が広がる。
社員たちが歓声を上げる。
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次の瞬間。
俺たちは異世界へ到着した。
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そこは巨大な浮遊都市だった。
雲の上に建つ街。
空飛ぶ船。
虹色の滝。
遠くには天空竜が飛んでいる。
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「うおおおお!」
社員たちが大歓声を上げる。
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しかし。
その時。
空から巨大な警報音が鳴り響いた。
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ブォォォォォン!!
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街中が騒ぎ始める。
人々が空を見上げる。
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俺も見上げた。
そして凍りつく。
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空に巨大な亀裂が開いていた。
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ミレイの顔色が変わる。
「まさか……」
美咲が端末を見る。
「ありえない」
リリアが剣を握る。
ルクレシアですら笑顔を消した。
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俺は聞いた。
「何が起きた?」
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ミレイが答える。
「第三の世界です」
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「は?」
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空の裂け目の向こうから、
見たことのない巨大な城が現れた。
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「現実世界でも異世界でもない」
ミレイが呟く。
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「世界の狭間に存在する――」
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「管理不能領域」
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そして城の上から声が響く。
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「やっと見つけたぞ」
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その声は、
まるで俺を知っているかのようだった。
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「偽物の勇者よ」
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全員が俺を見る。
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俺は言った。
「また俺かよ!!」
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### 次回
## 第十話
**「もう一人の勇者」**
世界の狭間から現れた謎の城。
そして現れた“もう一人の勇者”。
本物と偽物。
二人の勇者が出会う時、
世界最大のトラブルが始まる――!




