# 第八話 ## 「勇者の存在が世界を決める」
# 第八話
## 「勇者の存在が世界を決める」
会議室。
空気が重いというレベルじゃない。
壁の一部に亀裂が走り、その向こう側に“異世界の空”が見えている。
ミレイは淡々と資料を開いた。
「結論から言います」
全員が息をのむ。
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「勇者・高橋悠斗の存在が、世界融合の“中心点”です」
俺は指をさされた。
「また俺かよ!!」
ルクレシアが頷く。
「まあ当然ね」
リリアも真剣に頷く。
「勇者様ですから」
美咲も頷く。
「データ上もそうです」
「全員納得すんな!」
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ミレイは続ける。
「現在、世界は“勇者依存型構造”に変化しています」
「勇者が安定している限り、世界は安定する」
「逆に――」
彼女の目が細くなる。
「勇者が迷えば、世界は崩壊します」
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沈黙。
俺は固まった。
「……つまり?」
ルクレシアが笑う。
「あなたのメンタルが世界の安定装置ってことよ♡」
「やめろその説明!」
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リリアが一歩前に出る。
「勇者様は迷いません!」
美咲も続く。
「業務的には安定しています」
ルクレシアは肩をすくめる。
「でも感情は不安定ね」
「全部見てるな!?」
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その時だった。
会議室のドアが開く。
「失礼します」
新人社員が入ってきた。
だが普通じゃない。
角がある。
尻尾がある。
名札にはこう書かれていた。
**“新人・ドラゴン(人事部配属)”**
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「……もう驚かないぞ」
俺は悟ったように言った。
しかしドラゴン新人は言う。
「勇者様、質問です」
「何?」
「世界の安定条件は“勇者の感情”で正しいですか?」
「そう言われてる」
ドラゴンは頷いた。
「なら問題があります」
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全員が固まる。
ミレイが目を細める。
「何を観測しましたか」
ドラゴンは淡々と答える。
「勇者様、現在“迷い”が増加しています」
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俺はドキッとした。
「いや別に……」
リリアが覗き込む。
「本当ですか?」
美咲が記録端末を見る。
ルクレシアがにやにやする。
「隠せてないわよ」
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俺はため息をついた。
「だってさ……」
「会社は変だし」
「魔王はいるし」
「聖女は来るし」
「監視者はいるし」
「ドラゴンまで社員だし」
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「普通に考えておかしいだろ」
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その瞬間。
空間が揺れた。
ガラスにヒビが増える。
ミレイが静かに言う。
「感情変動検知」
「融合率、上昇」
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ルクレシアが笑う。
「ほらね」
リリアが剣を握る。
「勇者様を落ち着かせればいいのですね」
美咲が言う。
「ストレス管理案件です」
「俺は社員じゃねぇ!」
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その時だった。
ドラゴン新人が言った。
「提案があります」
「言ってみろ」
「勇者様を“休ませる”べきです」
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沈黙。
ミレイが一瞬止まる。
「……休息?」
ドラゴンは頷く。
「異世界労働基準法では、勇者の定期休暇は必須です」
「そんな法律あったのかよ!」
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ルクレシアが笑う。
「いいじゃない、休暇」
リリアも頷く。
「賛成です」
美咲も言う。
「データ的にも推奨です」
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全員が俺を見る。
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俺は言った。
「休んだらどうなるんだ?」
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ミレイが答える。
「世界は一時停止します」
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「ダメだろ!!」
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その瞬間。
全員が沈黙した。
そして――
ルクレシアが小さく言う。
「じゃあ、休暇中も一緒に行けばいいじゃない」
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リリアが即答する。
「賛成です」
美咲も頷く。
「合理的です」
ミレイも言う。
「監視可能です」
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俺は天井を見た。
「俺の休み、どこいったんだよ……」
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そして世界は決まった。
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### 次回
## 第九話
**「異世界社員旅行、始まる」**
勇者の“休暇”は、世界規模の社員旅行へと変貌する――。




