第9-3話 究極アイテム娘、エリクサーちゃん登場
新たなアイテム娘”エリクサー”を探しに来た僕たち。
ダンジョンのトラップに引っかかり、勇者様パーティと分断された僕たちの目の前に現れたのは、黄金色に輝くオーブ。
自信ありげな女の子の声も頭の中に聞こえてきて……このオーブで間違いなさそう……。
「「「……(じ~っ)」」」
ポゥ、エル、ヴァンさんの3人のアイテム娘たちが興味深そうに僕を見てきます。
うう……アイテムの精霊を実体化させるところを見られるのはやはり恥ずかしい……。
僕はオーブに対してゆっくりと唇を近づけ……。
ちゅっ
そっと口づけた。
「うふふふふふふっ! 真打ち、真打ちの登場ですわっ!!」
パアアアアアアアッ!
眩しい黄金の光とともに現れたのは……。
歳はポゥと同じくらいだろうか。
腰まである鮮やかな金髪をツインテールにまとめ、超ドヤ顔を決める青い瞳の女の子。
ピンクの襟がかわいい青色のジャケットに、ワンピーススタイルになっているふわりと広がった膝上丈のフレアスカート。
すらりと伸びた足先には少しヒールのあるパンプスを履いている。
「むふ~」
とても愛らしい美少女なのであるが、ふんすと鼻息と共にキメられるその圧倒的なドヤ顔……!
(なんかちょろそう……)
思わず失礼な第一印象を持ってしまう僕なのでした。
「……って、えっ……アナタ、エリクサーになれたのっ!?」
「あら、そういうあなたはポーションになったのね、ごきげんよう、お久しぶり」
新たなアイテム娘……エリクサーの精霊が実体化した姿を見て、驚くポゥとスカートのすそをつまみ優雅に挨拶をするエリクサーちゃん。
「……えっと、ポゥ……知り合いなの?」
「うん、彼女、わたしの同期なの……まさかエリクサーになってたなんて……ううっ、精霊採用試験は同じくらいの成績だったのにっ」
僕がポゥに尋ねると、彼女は口をへの字にして悔しそうにしている。
……精霊採用試験ってなに……同期って……?
良く分からない単語が出てきたが、アイテムの精霊の世界ってどうなっているんだろうか……気になったけど尋ねても理解できなさそうなので、スルーすることに決めた僕。
最近こんなのばっかりだな……。
「ここ最近、ポーション、エーテル、万能薬とアイテムの精霊たちが次々に実体化しているのを感じたものですから、この究極の回復アイテムであるわたくしも遅れを取るわけにはいかないと、あなたたちをお招きした次第でありますわ!」
「グラス……こうして人間に実体化できるなんて……確かにあなたは素晴らしい力を持っているようですわねっ!」
先ほどからやけにポーズをキメながら力説するエリクサーちゃん。
エリクサー。
言わずと知れた、究極の回復アイテム……使用者のHP、MPを全快させ、ステータス異常すらも解除する。
ポーション、エーテル、万能薬の効果を併せ持つ回復アイテムだ。
流石に効果範囲が単体なので、グラン~シリーズほどのレア度はないが、めったにドロップしないので、最低一万センドで取引される。
強大なボスモンスターに挑むときには持っておきたい回復アイテムである。
「えっと……初めまして、エリクサーちゃん」
「キミも……僕とごにょごにょ……するとエリクサーを生成できるんだよね?」
この子とは何をすることになるんだろう……急に恥ずかしくなってきた僕は、モゴモゴと口ごもりながら彼女に尋ねる。
「ふふふ……確かにあなたとなら問題なくできるでしょうね」
「でも、わたくしのアイテム生成活動は……とても神聖なものですのよっ! まず……」
我が意を得たりと鼻息も荒く僕たちに歩み寄るエリクサーちゃん。
と、彼女のヒールが祭壇の段差に引っかかって……。
「……ふぎゅっ」
べちゃっ!
顔から豪快にずっこけるエリクサーちゃん……。
「はは、変わってないね……」
「にしし、”親しみやすい”ってのはホントだったみたいだね。 むふ、なんかアホそう……これはエルちゃんの敵じゃないね!」
「あらあら……先代にくらべ、カワイイわね~(なでなで)」
地面とキスしてぷるぷると震えるエリクサーちゃんをつんつんナデナデするポゥたち。
僕のお店にまた騒がしい同居人が増えそうだった。




