↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/56

第9-2話 初級術師、エリクサーを探しに行く

 

「ふわぁ……きれいな所だね~」


 ポゥが周囲の風景を見て歓声を上げる。


 ここは王都から北東に遠く離れた丘陵地帯。

 そこに広がる美しい水をたたえた王国最大の湖。


 湖のちょうど中央部に小さな島があり、そこにぽっかりと口を開ける迷宮を目指し、僕たちは勇者アロイスさんのパーティと共に遠征に出ていた。



 行方をくらませた魔族レイラ。


 いったん王都の危機は去ったかと思われたが、迷宮での回復アイテムのドロップ率の低下、消費MPの増大という現象は収まらず、それにレイラが”カオスヒールの夜”と呼んでいた怪現象……回復系アイテムや防御魔法の反転現象はたびたび観測されており、事態を重視した王国政府より、勇者アロイスさんのパーティと僕たちの店に正式に依頼が下ったというわけ。


 僕たちも王国御用達の店として、物流面や税制面で色々と便宜を図ってもらっているし、”わくわく商店街”や、生まれ育った思い出の家を守りたいという思いもある……。


 そんな大人の事情も考慮し、僕たちもその依頼を受けることにしたのです……快く協力してくれるポゥ達には感謝しかありません。



 彼女たちの話では、”カオスヒールの夜”現象の中でも影響を受けずに回復できる唯一のアイテム……”エリクサー”の精霊が、この辺りにいるという事なんだけど……。


「いや~、正直アタシも会ったことは無いんだけど……エリクサーはポーションとエーテルの完全上位互換だからね~、対抗心は燃やしちゃうよね?」


「50年ほど前に聞いた噂では、代替わりしたって聞いたけど……どんな娘なんだろうね?」


「うふふ~、先代とは違い、とても親しみやすい娘らしいわよ~?」


 ポゥ達も会ったことは無いのか……親しみやすい子らしいのは助かるな……これ以上個性派が増えると、僕の身体が持ちませんので!


「ふむ……ほかの冒険者が入った形跡はなし……前人未到の迷宮のようだね」


「迷宮山脈で計測されたような、魔力のゆがみも観測されず……っと」


「よし、みんな、気を付けて潜ろう……ヒューバートさん、グラス君たちに防御魔法を」


 僕のスキルがパワーアップしたとはいえ、迷宮探索には専門家のヒューバートさんたちがいると安心である……無尽蔵の”MPギブ”を使える、この僕もいるから……!


 ……MPタンクみたいで少し切ない。


 僕たち8人は、慎重に迷宮の奥に歩みを進めた。



 ***  ***


「ふう、思ったよりも敵の数が少ないですね」


 勇者アロイスは、剣についたモンスターの体液をぬぐいながら回復術師ヒューバートに話しかける。


「ああ……それに、消費MPの増大現象も無い……やはり魔族の影響はここまでは及んでいないようだね……ただ」


 バチインッ!


 壁に埋め込まれた仕掛けから電撃が走り、ヒューバートの防御魔法に弾かれる。


「……トラップの類が多いな……いまのところ私の防御魔法で防げているが」



「はぁ~、エリクサーの奴の性格なのかな~、アタシこういうちまちましたの苦手なんだよなぁ~」


 進んではトラップを調べ、また進んではトラップを調べ……少しずつ慎重に進む探索に飽きたのか、エルがんんっと身体を伸ばす。

「もう、シャロン姉さんの極大攻撃魔法でどかーんって掘っちゃえばいいんじゃね? グラスのMPギブもあるし」


 なかなか斬新な解決策を述べるエル……と、彼女の伸ばされた右手が迷宮の壁に当たり、「かちり」と嫌な音がする。



「「「あっ……」」」



「……へっ?」



 やってしまった……隠れていたトラップの発動スイッチを押してしまった……そう思った瞬間、ガコンと足元の床が開くと、僕たち4人は奈落の底へと落ちて行った……。



 ***  ***


「DヒールDヒールDヒールDヒールDヒール……ふぎゅっ!」


 僕は落下の途中でポゥとエル、ヴァンさんを引き寄せると、壁に当たったり、斜面を転がって徐々に蓄積するダメージをDヒール連打で強引に癒しながら斜面を落下していった。


 数分は落ちていただろうか、ようやく竪穴の最深部に到達したようだ……。


「あいたたた……みんな大丈夫?」


「うん、わたしは大丈夫だけど……ありがとうグラス、助けてくれて」

「……んもうエル! 不用意に壁を触らないでって言ったでしょ!」


「たはは……ごめんポゥ……あんなところにスイッチがあると思わなくて……」


「まぁまぁふたりとも……ってヴァンさん、どうしたんですか?」


 プリプリと怒るポゥをなだめようとした僕だが、ヴァンさんが難しい顔で通路の奥を見ているのに気づく。


「ん……グラスくんあそこ……すごい回復エネルギーを感じるわ~」


 確かに、ヴァンさんが指さした先には祭壇があり、その中央部にはメロン大くらいの黄金に輝くオーブが安置されていた。


[ふふふふふ……お待ちしていましたわ。 いよいよ究極のアイテム娘、わたくしの出番ですわね]


 頭の中に響く自信ありげな声……もしかして、呼び込まれたのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。