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第7-2話 初級術師、温泉旅行に行く

 

「うわぁ! きれいなトコ!!」


「にしし……温泉か! 楽しめそうじゃん」


「ここの温泉は、お肌にいいとか~。 うふふ、楽しみですね~」


 私服姿の3人が目の前の光景を見て歓声を上げる。


 広場中央にある、もくもくと湯煙を上げる源泉を中心にして、周囲にたくさんの旅館、ホテルが立ち並んでいる。



 次の日の早朝、王国規定の安息日の連休を利用して、僕たちは王都近郊の温泉街を訪れていた。


 僕の店は王都の端っこにあるんで、実は歩いてすぐ来れるんだけど……こんな近くにあったんだね。


 昨日ポゥが福引で当ててくれた、この温泉街随一の高級ホテルに宿泊するのだ。


 もちろん! 日頃の彼女たちへの感謝とっ……ドキドキイベントを期待して、ポケットマネーで大量の料理の追加と、1時間だけ露天風呂の貸し切りを申し込ませてもらったのである!!


 ほのかにけむる湯煙の中……僕とポゥは、アイテム生成のためでなく、本当の恋人同士のキスを……などと朝から妄想しまくりの僕である。



 さっそく僕たちは貸し切った露天風呂へ向かう。


 少し小高い場所にあるこの露天風呂は、石造りの大きな湯船が特徴であり、日中は王都を一望しながら、夜は満天の星空の下でゆっくりと温泉を楽しめる、珠玉のお風呂!!


 お風呂の入り口でポゥたちと別れると、脱衣所で服を脱ぎ、タオルを頭の上にのせて(由緒正しい東方スタイルらしいです)露天風呂のエリアに出る。


 おお……広い!


 青空の下、眼下には王都の街並みが広がる……僕は、景色を楽しみながら、ゆったりと湯船の中で手足を延ばす。


 ふぅ……気持ちいい……アイテム屋を開店してから、連休は初めてだもんなぁ……毎夜の”生産活動”もあるので、知らず知らずのうちに、疲れがたまっていたかもしれない……。


 ……そういえば、男湯と女湯の入り口の距離の割に……この露天風呂の敷地が広い気が……もしかして。 僕がその可能性に思い立った瞬間。



「ふああ! 本当に貸し切り! ん~、いい景色だぁ……ありがとうグラス!」


「なぁ……! ポゥ……意外に着やせするタイプ……? くっ……アタシだっておっきくなれば!」


「ふふふん! ポーションの精霊としてこれくらい当然ですよ! ていうか、アタシたちこれ以上成長するのかな?」


「太古の記録では……他種族と結ばれた先代は…………らしいわよ~?」


「って、ヴァンさん、ごまかさないでくださいよぉ! 結ばれると……?」


「……実はここ、記録が残ってないのよね~」


「はうぅ……そんなぁ」



 女性が3人寄ればかしましいと言うけれど……楽し気な会話を交わしながら現れたのはポゥたち三人だった。


 バリアフリーが完全に考慮された、広い温泉に身を隠す場所などあるわけもなく……。


「「「「あっ……」」」」


 僕たちはバッチリ鉢合わせしたのでした。


 ……3人がタオルを巻いていて、ほっとしたような、残念なような……。



 ***  ***


「グ、グラスぅ……こ、ここって混浴だったんだね(ぶくぶく)」


「う、うん……おかしいね……い、入り口は分かれてたのに(ぶくぶく)」


 エルとヴァンさんのごり押しにより、なぜかこの広い露天風呂の中で近くに入ることになったポゥと僕。


 ふたりとも真っ赤になってなるべくお互いの裸を見ないようにしながら、ぶくぶくと半潜水状態をキープしていた。


 毎日いっぱいキスしてるのに……一つ屋根の下に住んでいるのに……お風呂場でのドキドキイベントすらあったのに……。


 温泉旅行という非日常なシチュエーションがそうさせるのか、昨日誘った仕事終わりデートの後、妙に意識しちゃっているからなのか。


 それはポゥも同じらしく、お互いをちらちら見やる膠着状態が続いていた。


「え、えと……グラスって優しい雰囲気なのに……け、けっこうたくましいよね」


「んんっ……ポ、ポゥってすっごくかわいい系なのに、けっこうスタイル良いよね」


「あ、あうっ(ぷすん)」


「あ、えっとそうじゃなくて……ってそうじゃあるんだけど!」


 お互いに褒めようとして、妙に生々しい言動になってしまい自爆するのも一緒。

 かくして膠着したドキドキタイムが続くのでした。



「……ねえ、ヴァン」


「ん~、どうしたのエルちゃん」


「なんとゆーか、まどろっこしいね」


「うふふ……ふたりとも、可愛いじゃない」


 少し離れた所からふたりを見守るエルとヴァン。


 エルは、一向に進展しないふたりにやきもきしているようだ。


「う~ん、ポゥが実体化する前、グラスの奴はずっとポゥのオーブを大事にしてたみたいなんだよね」


「だからアタシ、ふたりはくっつくべきだと思うんだ! だから、この温泉旅行で決めれるように、手伝ってよ」


「もちろん、手伝うわ~」


「アイテムの精霊と、人間が結ばれるなんて……1000年ぶりくらいかしら……」



 いまだにぶくぶくしている二人を見ながら、エルとヴァンは今夜に向けて作戦を練っていた。


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