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第7-3話 初級術師、勇気を出して初めての告白?

 

「うう、のぼせた……」


「のぼせたねぇ、グラス……」


 露天風呂につかりすぎた僕とポゥは、揃って真っ赤になり、ふらふらしていた。


「まったく……30分も肩まで浸かっているからだってば!」


「ふふ……ふたりとも、アイス買ってきたから、身体冷やしてね~」


 世話お焼いてくれるエルとヴァンさんがありがたい……僕たちは休憩してから、温泉街のアトラクションへ向かった。



 ……その4人の姿を無感動に見つめる男が一人。


 自慢だった黒髪はすっかり真っ白になり、目の焦点はあっていない。


 それはかつて、Aランクパーティのリーダーとして活躍し、自らの傲慢さと狂気により転落したルードのなれの果て。


 女魔法使いレイラに使役される彼は、与えられた指令通りに潜伏を開始する。



 ***  ***


 僕たち4人は、夕食までの時間を利用して、温泉街で体験できるアトラクションを楽しんでいた。


「にひひ……温泉と言ったら卓球っしょ!」


「勝負だ! グラス、ポゥ!」


 ラケットを掲げたエルが高らかに宣言する。


 どうやら僕とポゥ対エル、ヴァンさんで、ダブルス対決をするようだ。


「いったぞ、ポゥ!」


「うん、任せてよっ!」


 かつんっ


 ぎりぎりのコースに飛んだエルのサーブを、抜群の反射神経で打ち返すポゥ。


「甘いっ! エルちゃんスペシャルアタック!」


「させるかっ!」


「なにいっ!?」


 ぱしいんっ!


 ジャンプして放たれたエルのスペシャルスマッシュを、僕は前転しながら跳ね返す!


 これで……僕たちの勝ちだっ!


「やったね、グラス!」


「うん、ポゥのお陰だ!」


 がしっ、と握手する僕とポゥ。


「って、ちがうううぅぅ! 普通に熱くなってどうすんの、いちゃいちゃはぁ!?」


 ……”ダブルス対決で思わず身体が触れ合ってしまいドキドキ作戦”……失敗。



「次! 魔法ゴンドラでペアシート! 王都や、迷宮山脈まで一望できるんだって」


 張り切るエルに、いそいそと行列に並ぶ僕たち。


 うう、10分もの間ポゥとペアシートか……なんかドキドキしてきた。


 あ……そういや僕って……。


「うひゃああああっっ!? た、高いっっっ! 怖いいいいっっ!」


 ……しまった、高所恐怖症だった!


「ふあああああっ! 風が気持ちいいっ! グラス、みてっ! わたしたちのお店が見えるよっ」


 対照的に、楽しそうにはしゃぐポゥ。


 せっかくのドキドキタイム、僕はずっとゴンドラの支柱にしがみついてました。



「……こ、このふたり……ドキドキイベントが成立しねぇ!?」


「”王都ウォーカー”で読んだ、アタシの完璧な作戦が……」


「あらあら~……でも、ほら……あのふたりは自然な感じがいいのかもよ~」


 ことごとくギャグ時空になる”ふたりをドキドキさせよう”作戦に衝撃を受けるエル。


 ヴァンが指さす先には……。



「……グラス、大丈夫ぅ?」


「ふぅ……はぁ……うん、もう大丈夫だよ」


「えっと、それより……晩ご飯の後、もう一度ゴンドラに乗りに来ない?」


「打ちあがる花火をゴンドラから見れるらしいんだ……暗いし、僕の高所恐怖症も大丈夫だよ」


「空中から見る花火……すっごく素敵かも! うん、絶対行こうよ!」


 よ、よしっ! 花火デート約束完了! 安息日の夜限定のイベント……!


 僕、花火に照らされるゴンドラの上で、ポゥに告白するんだ……。


「……なんだ、グラス出来んじゃん!」


「うふふ~、あとはふたりに任せましょう」


 てれてれと夜デートの約束をするふたりを、エルとヴァンは優しく見つめていた。



 ***  ***


 美味しい晩ご飯の後、トイレで念入りに身だしなみを整えた僕は、約束の時間の10分前に、待ち合わせ場所であるゴンドラの前に来ていた。


 周囲にはカップルも多く、東方スタイルの”浴衣”を着ている女の子も多い……ポゥが着たらかわいいだろうなぁ……僕たちもあの世界に混ざれるんだ……。


 ニヤニヤしながら待つ僕。



 …………20分後、おかしいな? ポゥがまだ来ない……。


 あれだけ楽しみにしていたポゥが、約束に遅れるなんて考えにくいんだけど……不安になってきた僕は、ホテルまでの道すがら、ポゥを探すことにした。


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