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第6-5話 【大臣転落サイド】大臣、徐々に追い詰められ、陰謀を仕込まれる

 

「先日の中央練兵場で起きた兵士の死亡事故ですが……」


 ここは王国議会議場。


 国政をつかさどるために定期的に行われる議会で、王国軍大臣であるバルバスは、王国監査局の追及を受けていた。


「報告では軍備蓄のポーションの中に、”ポイズンポーション”が混じっていたとのことですが……」


「納品物のチェック漏れにより、貴重な兵士の命が失われたことは大変遺憾なのですが……」


「それとは別に、当局の調査の結果、財務局へ報告されている備蓄量より多いポーションが発見されました」


「これはどういう事でしょうか、バルバス大臣」


 眼鏡をきらりと光らせながら、うるさ型で知られる監査局員が詰問する。



 ……まったく……監査局が真面目に仕事をするなど、害悪でしかないな……バルバスはあらかじめ秘書に準備させていた弁明を述べる。


「まず、軍の備蓄は最高機密につき、あえて過少申告していたのです」


「昔から言うでしょう? 敵を欺くにはまず味方からと」

「帝国という外患がある現状では、当然の措置と考えますが?」


「”ポイズンポーション”が紛れ込んだ件については……検品体制の見直しと、納入業者の変更をすでに実施済みです」


 その後もバルバスは、必死に食い下がってくる監査局の追及をのらりくらりとかわし続けるのだった。



 ***  ***


 まったく無駄な時間だった……奴の追及をかわすために、有用な仕入れ先1か所を諦めざるをえなかった。


 仕入れ先はおそらく犯罪組織のフロント企業だったが……私はそんな背景には興味がない。

 ただ稼げればそれでいいのだ。


 新たな仕入れ先を探さなければ……面倒だな。


 バルバスが自分の執務室に帰り、思案していると……。


 背後から音も無く漆黒のローブを身にまとった女魔法使いが現れた……レイラだ。



「くふ、バルバス様……良い仕入れ先を見つけましたわよぉ……」


「……ふむ、聞かせてもらおうか」


 ()()()()()()()()()()()()()()()レイラに、特に驚くこともなく先を促すバルバス。


「グラス……奴の店を乗っ取るのです……そうすれば」


 そういえば、奴の店を探らせていたのだったな……まったく何を言うかと思えば……。


「レイラよ……簡単に言うがな、奴の店は王国御用達の認定を受けており、勇者パーティの庇護もある!」


「そんなリスクの高いことを出来るか! ……バカも休み休み……」


 バルバスは不正はするが、ギャンブルはしないたちだ……レイラの稚拙な提案を、一言のもとに切り捨てようとしたのだが……。



 すっ……



 あくまで自然に、あくまで妖艶にレイラの腕がバルバスの身体を包む。

 口づけをするように……レイラがバルバスの耳元でささやく。


「奴の……グラスの店には、”ポーションの精霊”がおります……」


「奴は”ポーションの精霊”を使って、ポーションを増殖させており……しかもこの事は公には伏せられております」


「王国軍大臣である、バルバス様がご存じないとか、おかしいじゃありませんかぁ?」


 次々と繰り出されるレイラの声が、なぜか遠くで聞こえる気がする……彼女の言うことが正しい……バルバスは何の根拠もなくそう感じていた。


「それならぁ……私たちがその”ポーションの精霊”を手に入れて……稼いでも問題ないですよねぇ……ふふっ」


 レイラが微笑んだ瞬間、バルバスの目から光が消える。


「ほぅら、大臣さん……こちらの指令書へサインを……」


 レイラは、”アイテムの精霊拉致作戦”と書かれた書類の承認欄にバルバスのサインをさせ、大臣印まで押させる。


 一覧の作業の間、バルバスはずっと無言だった。



「くふふ、本格的な”カオスヒールの夜”に向けての第一歩……ああ、楽しみだなぁ……ふふふっ」


 不気味に笑うレイラ……この書類があれば、すべての責任をバルバスにかぶせることが出来る……実行犯は、このために温存していた”アイツ”にやらせよう……。


 昨日確認したが、完全に壊れていた……傀儡魔法で操るのは簡単だろう……。


 誰もいない中央司令部の廊下で、レイラは邪悪な笑みを浮かべるのだった。


次章、グラスの恋に進展が?


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