第10話 黄衣の王と迷洞
「…黄衣の王?」
――ソウダ。
「…何故を俺を、それに此処は…何なんだ?」
――此処ハ黄衣ノ迷洞。コノ世二十八アル迷洞ノ内ノ一ツダ。貴様ハトテモ興味深イ力ヲ発シテイル。人ノ身デアリナガラ神性を持ツ貴様ヲナ。
「…何?」
聞き逃せない言葉と事実だ。ここの世界にはこの様な洞窟が複数存在するらしい。わかりやすく例えるならダンジョンなのだろうそれに神性と言う言葉。
祐太は神により転生を行った。転生する際に肉体を作り変えたので神の力が僅かながら取り込まれていたという。それにより祐太はこの迷洞に引き込まれたと。
――クカカッ!数百年ブリヨ、貴様ノ様ナ神性持チハ。…貴様ハ勇者デハ無サソウダガ?
「…数百年?勇者?」
――ホウ、知ラヌノカ?
「…悪いが俺はこの世界の人間ではない」――精神はだが。
最後の言葉は心の中で呟く。
動けないながらも話を聞いていたルンも驚いたのか見上げるような(そんな気がした)感じでぷるぷるした。
『主さま…』
「言ってなくて悪かった」
『いえ!ちがうのだとしても主さまは主さまです!』
「…ありがとう」
――ホウ。コノ世ノ人間デハナイノカ…然シ…ククッ、ソレ程マデニ魔物ト心ヲ通ワストワナ。ソノスライムモ他ノスライム種ト違ウナ。ユニーク個体カ…能力モレベルモ侮レナイナ。
レベルと言う言葉にやはりと思いながらもハストゥールに質問する。
「…この世界にはレベルと言うものが存在するのか?」
――嗚呼、存在スルゾ。貴様モ吾二及バズトモソレナリ二ハ高レベルダナ。前二来タ勇者二匹敵スル位ダ。ソレニ――貴様モユニーク魔法ヲ持ッテルナカナリ強力ナ魔法ダ。
何と、祐太はかなりの高レベルらしい。ここに来て二週間位だと言うのにそれ程までに成長しているとは思いもしてなかった。
転生した肉体には神性が僅かにあるらしいからその影響なのか祐太の成長速度はこの世界の人間以上に早いみたいだ。しかし、どうやって俺やルンのレベルや強さを見破ったのだと驚く。
「…どうして俺達の強さが分かる?」
――クカカッ、何簡単ナ事ヨ。我ハ鑑定ヲ持ッテルノデナ魔法モステータスモ筒抜ケヨ。
これまた強力な魔法だな、と心の中で思う。小説や漫画なんかで良くあるスキルだったりするが相手の力を見破るってだけで優位に立てる。その力を受けて改めてそう感じた。
「…何故、それを教える?お前の目的は何なんだ?」
――教エテモ問題無イカラナ。ソレニ最初二言ッタ通リ貴様ト話ガシタイトナ、戦闘スルツモリハ無イ。――我ノ話シ相手ニナッテ欲シイノダ。
こんな所に引き込んだ理由を聞くと驚く返しが来た。
戦闘する訳でも無く、ただ話し相手が欲しいと。奴の狙いが分からず一瞬ポカンとしてしまう。
「…は?」
――…我ハ八百年モノ間コノ迷洞デ過ゴシテキタ。ソノ間二此処二訪レタノハ僅カ十人。ソシテ我ノ前二来レタノハ三人ダケナノダ。ソノ三人ハ勇者率イルパーティデナ。
祐太が呆けてると昔を思い出すかのようにハストゥールは話し始めた。その姿を見ると本当に戦闘する意思は無くただ対話がしたい!と感じれた。それを見て力が抜ける。そして臨戦態勢を解き話を聞くことにする。
* * *
数分後、ハストゥールノ擬音有り如何に激しかったのか熱の篭った話を聞いた。
話を要約すると今から二百年前に此処に来た勇者達はハストゥールの対応がしたいという願いを無視し戦闘を始めた。しかし簡単に殺られる事もなく勇者を圧倒する。手加減され殺される事の無かった勇者は対話をする事に、そして神の加護を持っているなど様々な話をし結果仲良くなり勇者の師となったらしい。
「…そ、そうか」
――ウム、奴ハ中々我二勝テ無クテ良ク泣イテオッタワ。
勇者の黒歴史と思われる話を聞かされ何と不憫なと憐れむ。しかし、何とも人間くさいと言うか何が目的でこんな迷洞があるのか何故此処の主をしてるのか分からず勇者の黒歴史話もそこそこに祐太が知りたい事を聞く。
「まぁ、勇者の話は分かった。しかし、何故話がしたいんだ?見るからに人間の敵です的な風貌と力をしてるし…お前はいったい何なんだ?」
――フム、我ハ…元人間ダッタノダ。
驚愕な事実だが成程と思う。元人間だったら人間くさいのも頷ける。しかし、何故元人間だったのにこんな風貌に?と思ってると言葉が続いた。
――コノ世界ニハ此処ノ他二十七ノモ迷洞ガアル。迷洞ハダンジョンデアリアル”モノ”ヲ封印スル場所デモアル。我ハソノ人柱デアリ護ル者ナノダ。
「何?それじゃ他の迷洞もそうなのか?…その封印されてると言うのは何なんだ?」
――他ノ迷洞モ同ジダ。悪イガ封印シテル”モノ”二関シテハ言葉二出来ヌ。
思いもよらず話が大きくなってきた事に祐太は辟易する。この世界にある十八の迷洞はある”モノ”を封印する為に存在すると、そしてハストゥールはその人柱であると。
何がありこうなってるのか、それ程詳しく聞けることは無かった。一つだけ聞けたのは女神が封印を施しその人柱として当時、強い魔力と力を持つ者が選ばれた。その後は女神により記憶の統制がされ封印されてる”モノ”に関して記憶を消されたというらしい。
何故記憶統制がなされたのを知ってるのかは勇者との話でこの迷洞がただのダンジョンとして存在していると聞かされたからだそうだ。
誰も踏破した事の無いダンジョンが存在するという事で誰しもが名声を夢見て挑むのだが誰も最奥まで来る事は無いそうだ。それ程に強力な魔物がいたり他の迷洞によっては即死級の罠が仕掛けられたりしている。
「…なんとなく此処の存在は把握した。けど、それを俺に話してよかったのか?」
――構ワンヨ。今ノ時代二知ッテル者ハ居ラン。
「勇者には話したんだろ?勇者なら発言力はあるはずだ。なら広まっててもおかしくはないだろ?」
――フム、確二奴ニハ話タ。ダガソレモ二百年前ノ話当時ノ者達ハ妖精種デモ無イ限リ生キテオルマイ。ソレニ奴ガ危ナイ事ヲ広メタリハシナイダロウ。
「…そうか、まぁ何が封印されてるのか女神が行った記憶操作が危うさを物語ってるな」
――マァコノ話ハ此処マデダ。貴様ノ話ヲ聞カセヨ。
何とも物騒な世界だったのかと思いながらも何故自分がこの世界に来たのか、何故神性を持ってるのかを掻い摘んで話した。
互いに気を許したのかルンも交えて色々と話した。そして―――
「っ…ぐ、」
『主さま!』
「…いい、ルン!ツインヘッドに擬態しろ!ブレスだ!」
『は、はい!』
息つく暇もなくルンに指示を出す。
『ガルァァァァア!!』
ルンが擬態し火炎ブレスを放つ。そのブレスを祐太は風で掬い上げ強力な竜巻の如し火炎を纏った風をハストゥールにぶつけていた。
――クカカッ!甘イワ!《イビル・ウォール》!
ハストゥールの目の前まで迫っていた火炎竜巻は影でできた壁に阻まれ吸い込まれていく。
――ソラッ!《イビル・チェイン》!
祐太の攻撃を防いだのもつかの間、ハストゥールは素早く魔法を発動させる。祐太は影から出てくる鎖を自身を風で掬いまい上げる事で躱す――が。
――《イビル・エッジショット》!
岩陰に潜んでいた影により上から不意をつかれる。祐太はそれを空気の流れにより察知し身体を逸らす事で躱すが、影が形を変え祐太に迫る。
『主さま!!』
声と共に身体に”潜んでた”ルンが現れ擬態による硬質かを行い影の刃を防ぐ。
――ホウ。流石ダ、サテ此処マデトスルカ。
何をしていたのかと言うとハストゥールと戦闘訓練だった。――祐太は此処で二週間程過ごし自身とルンのレベルや能力のアップを図っていた。
「ちっ、結局届かなかったか…」
――マァ、ソコマデ落チ込ム事ハ無イ。貴様ノ力ハ最早カツテノ勇者以上ダ。今ノ時代ナラ敵ハ無イダロウ。
『主さま、だいじょうぶですか?』
「…あぁ、大丈夫だ。ルンもありがとな」
『主さまをまもるのはあたりまえです!』
――ククッ、ルンモ上手ク力ヲ使エテイルナ。取リ込ンダ魔物ヤ物質モ再現出来テオル。
『あ、ありがとうございます…』
――サテ、ソロソロ此処ヲ旅立ツトノ事ダガ?
「そうだな、あんたとの時間は有意義だった。色々教えて貰ったし、それに成長もさせてもらえた。ありがとう」
――クカカッ!構ワンヨ。我モ久々二楽シメタ礼ヲ言オウ。
互いに手を取り握手をする。骨ばった感触だ。まぁ、髑髏なのだから当たり前なのだが。
「さて、そろそろ行かせてもらうよ」
戦闘の疲れを癒し出発の準備を整えた。
――嗚呼、達者デナ。マタソノ気二ナッタラ戻ッテコイ。
「この世界を見て回った後に、な。それじゃ…世話になった」
『ありがとうございました!ハストゥールさまもおげんきで!』
祐太達はそう言葉にし迷洞を抜けていく。
最初は此処まで来るのに時間がかかったが今ではそれ程苦戦もせずに来た道を戻って行く。――そして…
「出てきた、な」
『ここが…そとのせかい…』
木々の隙間から光が差す。葉を揺らしながら風が吹く。
久しぶりの外に祐太は深呼吸をする。そして気を引き締めてルンに声を掛けながら歩き出す。
「さて、ハストゥールの話が正しければこっちの方向に国があるはずだ」
『たのしみですね!』
わいわいと話しながら歩いていると目の前に転生した時に襲ってきた大狼の群れが現れた。その数は十体。
感知により近づいてるのに気づいていたが何故此処まで近づかせたのかは祐太達が何処まで強くなったのかを確かめる為である。
あの時は無我夢中であったため良く分からないまま倒してしまったのだ。
「確かハストゥールはこいつ等の事をレッサーフェンリルとか言ってたな…神獣種に近い存在で脅威度は高いと」
その話を聞いた後良く倒して助かったなと冷や汗をかいたのを覚えている。
「さて、ルンはそっちの五体を頼む。俺は後の五体だ!」
『はい!』
その言葉で戦闘は開始された。レッサーフェンリルの方も図ったかの様に半分に分かれ祐太達に相対する。
ルンはツインヘッドドラゴンに擬態しブレスにより一掃する。ただのスライムの筈の相手が強力な竜種に変身した事により一瞬たじろぐ。そのスキをつくように収束したブレスで簡単に焼き払ったのだ。
「おぉ、流石だな」
少し離れた所でレッサーフェンリル達の攻撃を避けながらルンの戦闘の様子を見る。レッサーフェンリルも少し離れた場所の様子に驚いたのか動きが止まる。
しかし、逃げることは無く目の前の祐太だけでも!っとレッサーフェンリルの固有魔法である雷属性の《ライトニング》が迫る。それを祐太は手を翳す事で攻撃を逸らしたのだ。
――何故攻撃を逸らせたのか、その理由は祐太のユニーク魔法『大気万成』により磁力を操作し電磁場を掌に作り出したのだ。それによりレッサーフェンリルの攻撃を逸らし躱したのだ。
「よし!上手くいったな。それじゃ…さよならだ」
その言葉をトリガーに祐太の周辺の大気が震える。そして我慢が出来ないとでも言うように弾けた。
弾けた大気は指向性を伴いレッサーフェンリルを襲う。激しい衝撃により吹き飛ぶ。それに追跡する様に風刃がレッサーフェンリル達の首を切り落とす。切れた首はずるりと生々しい音を響かせ落ち切れた場所からは噴水のように血飛沫がおきた。
「やはり、強さが分からなかった…いや、強いんだろうけどある意味相手にとって俺等が初見殺し過ぎたのか…?」
『主さまー!だいじょうぶですかー?』
ルンが擬態状態から戻り祐太に声を掛けながら近づく。何とも呆気ない終わりだったが1匹だけ死体を残し魔石と素材を取ることだけは忘れなかった。
残した一体はルンの胃袋に収まった。
「さて、歩を進めますか」
『はい!』
何事も無かったかのように歩き出す。暫く歩いてると木々の隙間から黒い煙が上がってるのを見つけた。
何事かと思いながらもその煙が上がってるところに向けて走った。
木々を避け進んだところでその場に立ち止まるそこで見たものは―――
多数の魔物に襲われてる村であった……。
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次回遂にヒロイン登場?!




