第9話 生まれたもの、そして最奥へ
卵の中から出てきたのは青白い魔物。
某RPGみたいな目や口はなく流体系のプルンとしたスライムだった。
「スライムって卵から生まれるのか?」
ちょっとズレた感想を言葉にしながらスライムに近づいてみる。――プルプルっとスライムが揺れた。
何と、こっちを認識しているみたいだ。じっとこちらを見ている(気がする)見つめあってると不意に頭の中に声が聞こえた。
『…あなたが、主さまですか?』
祐太は声を聞き辺りを見渡す。しかしスライムと自分以外誰もいない。すると再度声が聞こえた。
『こちらです!』
スライムがプルプルしながら存在を示す。まさかと思いつつ祐太はスライムに声をかける。
「…この声はお前なのか?」
『はい!そうです!』
「スライムって喋れるのか…?」
『ことばをはっしてるのではなくいしを主さまのたましいにとおしておつたえしてるのです!』
何とも驚くべき事実だ。そういえば先程の光の中で何かが魂に繋がる感じがしていたと思い出す。
「…そうか、それで何で主様なんだ?」
『主さまはわたしにマナをけていただきました!とてもつよくやさしいちからでしたのでうまれたらつかえたいとおもいまして』
「お、おう…」
他の魔物とかなり違うようでもの凄く意志がハッキリしている。このスライムの熱弁に軽く引きながらも話をして見る。
「もしかして卵のうちから意志は持っていたのか?」
『はい!おつたえすることはできませんでしたが…』
「そうか」
『もしよろしければわたしをおつかいさせてください!』
「…いいのか?お前は自由なんだ、俺に着いてくる必要はないだろ?」
『いえ!主さまのおかげでたんじょうすることができたのです!主さまについていきたいのです!』
物好きなスライムもいたものだと、祐太は内心で苦笑する。しかし、これまで1人だった祐太にはありがたい事に会話が出来る相手が出来たことで連れて行くことを決めた。
「そこまで言ってくれるならお願いしよう」
『ありがとうございます!主さま!』
そう言葉にしながら足元に擦り寄ってくるスライム。軽く愛着心が湧く。
祐太はしゃがみスライムをつんつんしながら考えた。
「これから一緒に行動するってなったら名前が必要だな…」
『つけてくださるのですか?』
「ん?嫌か?」
『いえ!そんなことございません!とてもうれしいです!』
全身で喜びを表現するようにふにふにぷるぷると躍動する。その様子に祐太は柔らかいものへと表情を崩す。
「そうだな…お前の名前は、『ルン』だ」
『ルン…ですか?』
「あぁ、そうだ」
『すてきななまえありがとうございます!』
喜んでくれたようだ。――因みに由来はルンの身体がぷるんぷるんしてるから、だった。――
祐太はルンを持ち上げ話を続ける。
「ルンはスライムだよな?かなり特殊な個体のようだが…何が出来るんだ?」
『えっと……いまのとこ(捕食・吸収・再生・擬態)ですね』
「おぉ、結構色々出来るのな」
ふと、思いつきで双頭竜をルンに捕食させてみることにした。
「ルンこれを」
『これは…またすごいまものですね、主さまがたおされたのですか?』
「あぁ、そうだ。捕食出来そうか?」
『はい!すこしじかんがかかりますが(捕食)できます!』
「なら頼む」
にゅるんと祐太の手から離れ双頭竜を流体を伸ばしながら捕食していく。祐太は何となくアメーバみたいだなと考えながらその様子を見る。
青白いといっても半透明なので双頭竜が溶かされていく様が見える。そして数十分後、ルンは双頭竜取り込んだ。
双頭竜を捕食したルンはぷるぷると震えると青白い光を放つ。光が収まるとルンは先程より二回り以上も大きくなっていた。双頭竜を取り込んだ事でレベルアップ的なのをしたらしい。
『ごちそうさまでした!』
何とも行儀が良いと笑いそうになる。レベルアップしたルンは先程よりもスムーズに動いている。パッと見の大きさは40~50cm位だろうか。
「レベルアップをしたのか?様子はどうだ?」
『はい!さっきよりもうごきやすいです!』
「そうか、良かったな――それで、試して欲しいことがあるんだが」
『なんでしょう?』
「取り込んだ双頭竜に擬態してくれ」
『わかりました!むむむむ〜』
ルンの周りに青白い光が巻き起こる。ゆらゆらと陽炎のように光と空間が揺らめく。その他にも別の何かをルンが取り込んでる事に気がつく。
――祐太は知らなかったがルンが取り込んだものは魔素と呼ばれ空気中に漂ってる魔力の素だ。――
そして何と、ルンの大きさを超えて元の双頭竜並のでかさに擬態したのだ。
「おぉ…これは凄いな…」
『どうでしょうか?』
「元の双頭竜みたいだな…この状態で魔法は使えるか?」
『はい!このまものの(固有魔法)がつかえます!』
祐太は驚く。擬態と言えば姿を真似るだけだと思ってたが取り込み擬態したらその魔物の力まで使えるようだ。何とも凄まじい強さを持ってると改めて思った。
ふと、思い付いたことを試してみることにする。ルンを元の姿に戻し魔石や魔物の素材を取り込ませてみる。
しかし、魔石や素材だけでは擬態をする事は出来なかった。魔物の全てを取り込ませることで擬態が可能というわけだ。他にここに来るまでに見つけた綺麗な鉱石や光る鉱石を取り込ませてみる。
そして再び驚く。何と取り込んだ鉱石にも擬態出来たのだ。祐太は内心で、どうなってんだ!ヤバすぎるだろ!と思い苦笑いが溢れる。
「ルン…お前、とんでもないな…スライムってこんなに強いのか?この世界だけか?それともお前が特殊過ぎるのか?」
『よくわかりませんが主さまにおやくにたてるということで!』
溢れんばかりの好意をぶつけてくる魔物に何も言えなくなり、まぁ、そんなものかと思う事にした。
――因みに擬態をしないと他の魔物の固有魔法は使えないことは確認済みだ。――
そして、祐太とルンは色々確かめながら奥の道を進む。
* * *
更に進むこと三日後、異様に凝った模様が彫られてる大きな扉を見つけた。
「…これは、凄いな」
『このとびらのむこうがそとにつうじるみちなのでしょうか?』
「それはどうかは分からないが、今までとは違うとだけは分かる。まぁ、入って確かめるしかないな…」
『そうですね!』
「んじゃ、開けるぞ…ふっ!」
洞窟の内部、更に最奥だと思われる場所。祐太は警戒しながら扉に手をかける。
――ゴカッ
扉が動く音がする。祐太はそのまま更に押し込むすると大きな扉の割にスムーズに開いた。
すぐに空間感知を使い内部を隈無く調べる。そして――祐太は動けなくなる。
中に居るものの力に触れ気圧されたのだ。まるで金縛りにあった時の様に全身が強ばる。祐太に引っ付いてたルンも動けない様でいつもの様にぷるぷるする事も無かった。
――良クゾココマデ来タ…歓迎シヨウ。
空間に響くように掠れた声が聞こえる。
――ソラ、ソンナ所デ立チ止マッテルンジャナクコッチ二来イ。
その言葉をトリガーに祐太達の周りに影が蠢き祐太達を捕らえてしまう。動けない所を狙われて反応出来ずに捕らわれるまま扉の向こうへと引き摺られていく。
「ぐっ…」
『んん〜!』
捕らわれた祐太達は何とか影の拘束を解こうとする。空間の中央まで来た時に祐太達は影の拘束を解かれ動けるようになる。
すぐさま臨戦態勢をとり油断なく先を見つめるが、気を抜くと倒れてしまいそうになる。
『主さま……』
ルンも祐太に寄り添い恐怖を紛らわせようとする。
――クカカッ!ソコマデ怖ガル事ハ無イ!我ハ貴様ト話タカッタノダ。
膨大な力の奔流に強ばるもののよく良く見ると殺意は無い。しかし、油断は出来ないので臨戦態勢のままだ。そのまま祐太は奥に居るであろう者に言葉をかける。
「…話、だと?」
――嗚呼、ソウダ。ソノ前二我ノ姿ヲ見セヨウ。
奥に居る影が動く。祐太は空間感知でその者の存在を確認していたが姿は見えてなかった。
暗闇から祐太達に姿が見えるところまで来た。その姿に祐太は息を呑む。
真っ黄色のレインコートの様なローブ。
フードから覗く白い髑髏の頭。
空洞のはずの目から光る真っ赤な双眸。
ローブの上から首に掛けられている意匠を凝らした紅の宝石がはめられたネックレス。
近づいて分かる大瀑布の如き奔流の魔力。
――我、名ハ。黄衣ノ王ハストゥール。コノ迷洞の主ダ!
次話でこの洞窟の事や一部世界のあれこれが判明するかも?
誤字脱字などございましたら教えて頂けたら幸いです。
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