8話冒険者ギルドの日常と擬態獣の秘密2
北郊の廃鉱山は、鉄床町から徒歩で約三十分の距離にあった。
道中、悠人は警戒を怠らず、六感を全開にしていた——今は人間の姿だが、擬態獣としての本能はそのまま残っていた。
彼は周囲の環境に漂う微細な魔力の波動や生命の気配を感じ取ることができた。
リリーはその後ろについてきていた。足取りは軽く、ほとんど音を立てなかった。
銀狐族の亜人として、彼女は生まれつき優れた敏捷性と感知能力を備えていた。
彼女の狐の耳は絶えず微かに動き、周囲の音を捉えていた。琥珀色の瞳は暗闇の中でかすかな光を放っていた。
やがて、二人は鉱山の入り口に到着した。
それは真っ黒な洞口で、高さ約二メートル、幅三メートルほどだった。
洞口の周囲には、廃棄された採掘道具や鉱石の破片が散乱していた。
湿った、金属の匂いを帯びた風が洞内から吹き出しており、説明しがたい生臭さが混じっていた。
悠人は足を止め、リリーに「ここで待っていろ」という仕草をした。
リリーは一瞬ためらったが、最終的に頷き、おとなしく洞口のそばの大きな岩の後ろにしゃがみ込み、小さな体を影に隠した。
悠人は深く息を吸い込み、鉱山の中へと足を踏み入れた。
洞内は想像以上に深く、坑道は曲がりくねっていた。両側の壁は苔と水濡れで覆われていた。
空気には濃厚な鉱物の香りが漂い、何かの生物の体臭も混ざっていた。
悠人は坑道を約五分ほど進み、比較的开けた洞室に辿り着いた。
洞室の天井にはいくつかの割れ目があり、月明かりがそこから差し込み、地面に数本の蒼白い光の柱を落としていた。
そして、彼はそれらを目にした。
擬態獣だ。
十数匹の擬態獣が洞室の中央に集まっていた。彼らは悠人の本体と同じ外見をしていた——子犬ほどの大きさの漆黒の体躯、六つの真紅の目、口はなく、全身は流動する黒い物質で構成されていた。
今まさに彼らは警戒して洞口の方を睨みつけており、侵入者が来たことを察知しているようだった。
彼らの体はわずかに弓なりになり、防御の姿勢をとっていた。六つの目が同時に悠人に焦点を合わせていた。
悠人はその場に立ち尽くし、静かに彼らを見つめていた。
彼は彼らの感情を感じ取ることができた——恐怖、警戒、そしてわずかな困惑。
彼らは悠人から、見覚えのある気配を嗅ぎ取っていた。同類の気配だった。
悠人はゆっくりと目を閉じ、そして擬態を解除した。
黒い流体が彼の体表から湧き上がり、人間の外形が溶ける蝋人形のように崩れ、再形成されていった。
わずか数秒で、彼は黒髪の人間の青年から、漆黒の六つの目を持つ子犬ほどの大きさの擬態獣へと戻った。
洞室内の擬態獣たちが騒めいた。
彼らの六つの真紅の目が同時に見開かれた——擬態獣に驚きの表現があるとすれば、まさに衝撃の表情だったに違いない。
彼らは感じ取った。目の前の「同類」から、かつて感じたことのない気配が漂っていることを。
それは、人間の魂と擬態獣の躯体が混ざり合った、奇妙な存在だった。
悠人は彼らの驚きを気に留めなかった。彼は四本の短い脚を動かし、ゆっくりと彼らに近づいていった。
擬態獣たちは反射的に数歩後退したが、攻撃は仕掛けてこなかった。目の前の同類に悪意がないことを感じ取っていたのだ。
悠人は彼らから約三メートルの距離で止まった。そして、すべての擬態獣が理解できない行動に出た。
彼は体で低周波の振動を発したのだ。
それは言語ではなく、音でもなく、純粋に身体の振動を通じて情報を伝えるものだった。
これは擬態獣同士の特有のコミュニケーション方法であり、彼は転生した後、自然にこの能力を習得していた。
「お前たち……早く逃げろ。」
擬態獣たちはその情報を受け取り、さらに困惑した。
その中で一回り大きい擬態獣が一歩前に出て、同じく身体の振動で応えた。
「お前は……誰だ?擬態獣は……こんなじゃない……」
悠人はしばらく沈黙し、再び振動を発した。
「俺が誰かは重要じゃない。大事なのは、人間がお前たちを殺しに来るってことだ。早く逃げろ、ここを離れて、できるだけ遠くへ。」
「逃げる……どこへ?」
その擬態獣が尋ねた。
「もっと深い山の中へ、誰にも見つからない場所へ。」
悠人は答えた。
「とにかく、ここにいてはいけない。人間は危険だ。お前たちを殺して、コアを奪う。」
擬態獣たちは顔を見合わせた——顔はないが、互いに見合うその動作だけで困惑が十分に伝わってきた。
先頭の擬態獣はしばらく沈黙し、再び振動を発した。
「お前は……俺たちを殺しに来たんじゃないのか?」
「違う。」
「じゃあ……なぜ俺たちを助けるんだ?」
悠人は長い間沈黙した。
なぜ彼らを助けるのか?
彼らはただの最下級の魔物で、何の価値もない。殺せば報酬と交換できる。
この世界のルールに従えば、彼は躊躇なく彼らを皆殺しにし、コアを奪い、戻って報酬を受け取るべきだった。
しかし……
彼はあの真紅の目を一つ一つ見つめ、自分と同じ漆黒の躯体を見つめ、彼らの不器用で警戒した姿を見つめた。
彼には手を下せなかった。
彼らはこの世界で、彼にとって唯一の同類だった。
「なぜなら……俺たちは仲間だからだ。」
悠人は最終的に、そういう振動を発した。
洞室内が静まり返った。
すべての擬態獣が動きを止め、六つの目が一斉に悠人に注がれた。空気には不思議な雰囲気が漂っていた。
そして、先頭の擬態獣がゆっくりと、厳かに頭を下げた。
他の擬態獣たちもそれに続いて頭を下げた。
それは擬態獣同士の最高の敬意だった。
悠人は自分のコアの奥底から、温かいものが湧き上がるのを感じた。
それが何の感情なのかはわからなかった。かつて経験したことのない感動だった。
「行け。」
彼は再び振動を発した。
「早く行け。」
擬態獣たちは洞室の奥へと撤退し始めた。その動きは素早く、大きな音も立てなかった。長年このような環境で生きてきた習慣だった。
最後の一匹が去る間際、振り返って悠人を一目見た。
そして、彼の前に走り戻り、自分の体から何かを吐き出した。
それは古びた剣の柄だった。
剣の柄は何らかの黒い金属で作られており、色あせた革が巻かれていた。
刃はすでに折れており、十センチにも満たない短い部分だけが残って、錆びついており、まるで役に立たないように見えた。
悠人は呆然とした。
擬態獣は頭でその剣の柄を押しやると、振動を発した。
「これを……お前にやる……ずっと昔……ある人間が残したものだ……俺たちには……何に使うのかわからないが……でも……宝物だ……」
悠人はうつむいてその古びた剣の柄を見つめた。擬態獣にとって、彼らには財産も価値のあるものもほとんどない。
この剣の柄は、彼らが長年収集してきた、外界からもたらされた唯一の品かもしれない。そして今、彼らはそれを彼に贈ったのだ。
彼は厳かに自分の体で剣の柄を包み込み、その擬態獣に振動を返した。
「ありがとう……大切にする。」
擬態獣は頷き、振り返って洞室の奥へと消えていった。
悠人はその場に立ち尽くし、彼らを見送った。彼らの気配が完全に感じられなくなるまで、彼はゆっくりと下を向き、自分の体に包まれた古びた剣の柄を見つめた。
彼は体の力でこの剣の柄を探ってみた。すると驚いたことに、この一見古びた剣の柄には、極めて微弱だが異常に頑強な魔力が内包されていることがわかった。
これは決して普通の剣ではない。
彼はまだこの魔力を活性化させることはできなかったが、直感が告げていた——この剣は、いつか必ず役に立つ時が来ると。
彼は剣の柄を丁寧にしまい、再び人間の姿に擬態し直して、鉱山の外へと出た。
洞の外は、月明かりが冴え渡っていた。
リリーは依然として大きな岩の後ろにしゃがんでいたが、彼が出てくるのを見るとすぐに立ち上がり、狐の耳を高く立て、目には深い関わりが浮かんでいた。
悠人は彼女に微笑みかけ、懐から小さな布袋を取り出した。
それは彼が事前に準備しておいたものだった——自分の体から切り取った組織の一部だ。
その組織は今、彼によって擬態獣のコアの形に整形されており、本物のコア結晶とまったく同じに見えた。
擬態獣の体には特性がある。切り離された肢体は短時間であれば活性を保ち、様々な形態に整形することができるのだ。
彼はこの特性を利用して、擬態獣のコアを偽造した。
もちろん、この「コア」は長くは持たず、おそらく数時間もすれば自動的に消滅するだろうが、任務を報告するには十分だった。
リリーはその「コア」を好奇の目で見つめ、首をかしげて、なぜ一つだけなのか疑問に思っているようだった。
悠人は説明せず、「コア」をしまい、リリーの手を取って鉄床町へと向かった。
冒険者ギルドに戻ったのは、すでに深夜だった。
ホール内の人はかなり減っており、酔っ払った数人の冒険者が隅でまだ酒を飲んでいるだけだった。
カウンターの後ろの中年女性は、あくびをしながら書類を片付けていた。
悠人が入ってくるのを見て、彼女は少し驚いた様子だった。
「もう終わったのか?」
悠人は頷き、偽造したコアをカウンターに置いた。
中年女性はコアを手に取り、灯りにかざしてしばらく観察し、満足げに頷いた。
「うん、品質は悪くない。確かに擬態獣のコアだ。初任務達成、おめでとう。これが報酬の十二銀貨だ。」
彼女は引き出しから十二枚の銀貨を取り出し、悠人の前に押し出した。
悠人は銀貨を受け取り、手のひらで重さを確かめた。銀貨がぶつかる澄んだ音がし、ずっしりとした質感があった。
これが彼がこの世界に来て、初めて稼いだお金だった。
「そうそう、規定により、新人は初任務達成後、F級に昇格できます。」
中年女性は新しい銘板を取り出し、彼に手渡した。
「これが新しい銘板だ。頑張れよ、少年。」
悠人は銘板を受け取り、中年女性に一礼し、リリーを連れてギルドを出た。
夜風が吹き抜け、少し冷たく感じられた。通りにはもうほとんど人影はなく、数本の街灯だけが黄色く濁った光を放っていた。
悠人は隣のリリーを見下ろした。少女の顔色は少し青ざめ、唇は乾いてひび割れていた。突然、彼女のお腹がぐうっと鳴った。
彼女はすぐに真っ赤になり、うつむいて、狐の耳を頭にぴったりと押し付けた。
悠人はリリーの手を引いて、通りのはずれにある、まだ灯りのついているパン屋へと向かった。
パン屋の主人はぽっちゃりとした中年の男で、棚の残ったパンを片付けていた。誰かが入ってくるのを見て、顔を上げ、職業的な笑顔を浮かべた。
「いらっしゃい!何をお求めですか?」
悠人は棚に残っている白パンをいくつか指さし、五本の指を立てた。
「白パン五つ?はいよ!」
店主は手際よくパンを包んだ。
「全部で一銀貨です。」
悠人は金を払い、パンを受け取り、一つをリリーに差し出した。
リリーは一瞬ためらい、顔を上げて悠人を見た。彼の励ますような視線を受けて、ようやく小さな手を伸ばし、パンを受け取った。
彼女は湯気の立つ白パンを両手で包み、小さな鼻をひくつかせて甘い香りを嗅いだ。
そして、慎重に一口かじった。
パンの柔らかさと甘みが舌の上で広がった瞬間、彼女の目の縁が赤くなった。
彼女はうつむき、パンを大口に頬張った。肩が微かに震え、涙が一滴一滴パンの上に落ちた。
彼女は、まともに食事をしたのがいつ以来か、もう思い出せなかった。
悠人は何も言わず、ただ静かに彼女のそばに立ち、食べ終わるのを待った。
リリーが一つ目のパンを食べ終えると、悠人は二つ目を差し出した。リリーは首を振り、もうお腹がいっぱいだと示した。
しかし悠人は無理やりパンを彼女の手に握らせ、自分のお腹を指さし、次に彼女を指さして、「もっと食べないと」と伝えた。
リリーは結局二つ目のパンを受け取り、小さくかじりながら食べ始めた。
パンを食べ終えた後、悠人は彼女を連れて洋品店へ向かった。
店はもう閉まっていたが、悠人はしばらくドアを叩き続け、最終的に眠そうな女将を呼び出した。
「なんだい、夜中に……」
女将は不満そうにぶつぶつ言った。
悠人は隣のリリーを指さし、ショーウィンドウに飾られた子供服を指さし、十銀貨を取り出した。
女将は銀貨を見て、目を輝かせた。
「あらまあ、お嬢ちゃんに服を買ってやるのかい!さあさあ、中に入って!」
彼女は店のドアを開け、二人を熱心に迎え入れた。
悠人はリリーに好きな服を選ばせた。
リリーは最初は少し堅かったが、悠人に励まされ、勇気を振り絞って、淡い青色のワンピース、白い小さなジャケット、白いレースの短い靴下、そして茶色の小さな革靴を選んだ。
試着室から新しい服に着替えて出てきたリリーを見て、悠人は思わず息を呑んだ。
淡い青色のワンピースは彼女の銀白色の髪と琥珀色の瞳を完璧に引き立て、白い小さなジャケットは彼女に素直で可愛らしい印象を加え、白い短い靴下と茶色の小さな革靴はまさに完璧なアクセントだった。
髪はまだ少し乱れ、顔にはまだ埃がついていたが、それでも彼女の繊細で可愛らしい容貌を隠すことはできなかった。
彼女はその場に立ち、両手で不安そうにスカートの裾を弄り、狐の耳を微かに震わせ、尻尾を両脚の間に挟み、頬を淡く赤らめながら、慎重に顔を上げて悠人を見た。
「似合ってる……?」
悠人は親指を立て、心からの笑顔を浮かべた。
リリーの顔はさらに赤くなり、うつむいたが、口元は思わず微かに綻んだ。
女将は横で褒め言葉を並べ立てた。
「あらまあ、このお嬢ちゃん、本当に可愛いねえ!この服は彼女のために誂えたみたいだよ!兄さん、目の付け所がいいね!」
悠人は金を払い、女将に深夜の開店への謝礼としてチップも渡した。
洋品店を出た時には、月は中天に昇っていた。
通りは静まり返り、二人の足音だけが石畳に響いていた。
リリーは新しい服を着て、新しい靴を履き、歩くのもどこか慎重そうだった。
彼女の尻尾はもう挟まれておらず、後ろで軽やかに揺れていた。
彼女は顔を上げ、前を歩く悠人の背中を見つめ、琥珀色の瞳に複雑な光が煌めいた。
彼女はこの黙った男が誰なのか知らなかった。なぜ自分を助けたのか、なぜ食べ物を買ってくれ、服を買ってくれたのかもわからなかった。
彼女が知っているのは、彼がこの世界で初めて自分に優しくしてくれた人だということだけだった。
彼の名前を覚えておきたかった。
「あの……」
彼女は勇気を振り絞り、小さな声で尋ねた。
「あなたの……お名前は?」
悠人は足を止め、振り返って彼女を見た。
彼は少し考え、しゃがみ込んで地面に指で文字を書いた。
——僕の名前はレイン・ユウトだ。
リリーは地面の文字を見て、小さな声で読んだ。
「ユウト……」
そして顔を上げ、真剣に自己紹介をした。
「私はシルバームーン・リリーと言います。」
悠人は頷き、心の中でその名前を繰り返した。
シルバームーン・リリー。
とても美しい名前だった。
彼は立ち上がり、再び歩き出した。
リリーはその後ろをついていった。その足取りは以前よりもずっと軽やかだった。
彼女はうつむいて、自分の身に着けた美しい青いスカートを見つめ、また顔を上げて、前を行く、決して大きくはないけれど安心感のある背中を見つめ、心の中で静かに決意を固めた。
彼女はこの人についていく。
彼がどこへ行こうと、彼女は彼についていく。
月明かりの下、大小二つの影が次第に遠ざかり、鉄床町の静寂な夜の中に溶け込んでいった。
そしてあの廃鉱山の奥深くでは、十数匹の擬態獣が曲がりくねった地下通路に沿って、さらに深く、さらに遠くへと移動していた。
その列の中の一匹の擬態獣が、どこから摘んできたのか、一輪の小さな白い花を口にくわえていた。
それは、あの変わった同類への、ささやかな贈り物だった。
残念ながら、彼はもう遠くへ行ってしまった。




