第6話弱さこそ武器2
ストーリーモードには、亜人族の少女のキャラクターがいた。名前はリリー。
彼女は銀狐族の末裔で、非常に珍しい「霊媒」体質を持ち、常人には感知できない魔力の流れや気配を感じ取ることができた。
原作では、彼女はまさにこの鉄床町で、ならず者たちに虐められているところを、通りかかったアーサーに救われる。
それ以降、彼女はアーサーの追随者の一人となり、その特殊な感知能力を駆使して、何度もアーサーを危機から救うことになる。
彼女はアーサーの初期における重要な仲間の一人だった。
だが今、アーサーは死んでいる。
一匹の擬態獣の手によって。
つまり、もう彼女を助けに来る者はいない。
フリーモードでも、プレイヤーはリリーに出会うことができる。ただし、彼女は四肢を切断され、街角で物乞いをしている姿にされている。
これは残酷な世界だ。悠人が初めてこのゲームをプレイした時から、そのことを深く認識していた。
悠人は地面にうずくまるあの少女を見つめ、震える狐の耳と、固く挟まれた尻尾を見つめていた。
彼は立ち去るべきだった。
理性が告げていた。今最もすべきことは、余計なことに首を突っ込まないことだと。
彼はただの「普通の通行人」であり、戦闘能力など何もない。軽率に手を出せば、火の粉が自分に降りかかるだけだ。
万が一、自分の異常が露見すれば、その結果は想像を絶する。
それに、仮にこの少女を助けたところで、何になるというのか?彼は別に善人ではない。ただこの残酷な世界を生き延びたいだけだ。
見知らぬ誰かのために危険を冒す必要などない。
行こう。見なかったことにして、冒険者ギルドへ向かおう。
悠人はそう自分に言い聞かせた。
しかし、彼の足は動かなかった。
彼はあの少女を見つめていた。その目を見つめていた。
その目には、彼がよく知るものがあった——それは絶望だった。
自分を助けに来る者などいないと知っている絶望。
すべての希望を諦めてしまった絶望。
悠人はふと、あることを思い出した。
前世、まだ普通の大学生だった頃、彼もまた、そんな目をしたことがあった。
小学校三年生の時、クラスの不良にトイレに閉じ込められ、殴られた時のことだ。
あの時、彼もこの少女のように、地面にうずくまり、頭を抱え、暴力が終わるのを待っていた。
あの時、彼も何度も願った。誰かが現れて、自分を助けてくれることを。
しかし、誰もいなかった。
一度も。
その後、彼は耐えることを覚え、頭を下げることを覚え、自分を透明にすることを覚えた。
あの記憶はもう埋めたつもりだった。しかし今、この少女の目を見て、あの記憶が鮮明によみがえってきた。
悠人は目を閉じた。
そして、一歩を踏み出した。
「おい、小僧、何しやがる」
少女を蹴っていた傭兵が誰かの接近に気づき、顔を上げて、不機嫌そうに悠人を見つめた。
悠人は何も言わなかった。いや、言えなかった。ただ黙って少女の前に歩み寄り、しゃがみ込み、両腕を広げて、自分の体で彼女を覆い隠した。
「ほーう?ヒーロー気取りか?」
傭兵はニヤリと笑い、黄色い歯をむき出しにした。
「てめえ、命が惜しくないのか?」
悠人は答えなかった。ただその姿勢を保ち、傭兵に背を向け、少女を自分の体の下に庇い続けた。
少女の体が微かに震えているのが感じられた。その痩せ細った体が、自分の胸にぴったりと寄り添っているのがわかった。
「ちっ」
傭兵は悪態をつき、足を振り上げ、悠人の背中を力一杯蹴りつけた。
ドン!
背中に激痛が走り、悠人は前によろめいた。彼は歯を食いしばり、心の中で唱えた。
「我慢だ……すぐに終わる……」
「結構頑丈じゃねえか?」
傭兵は眉をひそめ、また蹴りを入れてきた。
今度は脇腹だった。肋骨が折れたのではないかと思うほどの痛みだったが、悠人は避けもせず、反撃もしなかった。
彼はただ体を丸め、盾のように、固く少女の前に立ち塞がっていた。
「親分、もういいんじゃないですか」
隣の別の傭兵が苛立ったように言った。
「パン一斤盗んだガキのために時間を潰す価値もありませんよ」
「そうだ、こんな役立たずを殴っても面白くもない」
三人目の傭兵が同調した。
「見ろよ、この野郎、手も挙げやしねえ。一目で役立たずだとわかるぜ」
先頭の傭兵は唾を吐きかけ、さらに二発、悠人を蹴ってから、ようやく不満そうに足を収めた。
「ぺっ!ついてねえ!行くぞ行くぞ!」
数人の傭兵は悪態をつきながら去っていった。パン屋の店主も見物が終わったとばかりに、ぶつぶつ言いながら自分の店に戻った。
見物人も徐々に散り、路地はすぐに静けさを取り戻した。
悠人は膝をつき、荒い息を繰り返していた。背中と脇腹が焼けるように痛み、見なくても大きな青あざができているのは明らかだった。
しかし、彼は密かにほくそ笑んでいた。
「成功した……」
これこそが彼の狙いだった。
自分を十分に弱く見せる必要があった。誰も興味を持たないほどに、誰もが「こいつに関わる価値はない」と思うほどに。
この世界では、強さは脅威を意味し、脅威は注目を集め、注目は危険を招く。
一方、弱さは安全を意味する。
手も挙げられない役立たずなら、誰が天命の者を殺した犯人だと疑うだろうか?
悠人はゆっくりと立ち上がり、痛む背中を揉んだ。
そして、振り返り、まだ地面にうずくまっている少女を見た。
少女は顔を上げ、琥珀色の瞳で彼を見つめていた。
それはとても美しい目だった。磨かれた蜂蜜色の宝石のように澄んでいた。
彼女の顔は埃と涙の跡で汚れていたが、それでも繊細な顔立ちの輪郭ははっきりと見て取れた。
小さな鼻筋、引き結ばれた唇、尖った顎、そしてふわふわとした銀白色の狐の耳——前世で数多くのアニメを見てきた悠人の目から見ても、それは非常に可愛らしい少女だった。
彼女は将来、きっととても美しい女性に成長するだろう。
悠人は心の中で密かにそう思った。
彼はしゃがみ込み、手を伸ばして、彼女の顔の埃を拭ってやろうとした。
少女は反射的に首をすくめ、狐の耳が緊張してピクピクと震えたが、結局は逃げずに耐えた。
悠人の手が彼女の頬を優しく撫で、汚れの一部を拭い去った。
そして、彼は彼女に微笑みかけ、親指を立て、自分の胸をポンポンと叩き、「大丈夫、もう怖くない」と示した。
少女はぼんやりと彼を見つめ、琥珀色の目をぱちぱちと瞬かせ、目の前の見知らぬ人の意図を確かめているようだった。
悠人はさらにいくつかのジェスチャーをした。まず自分を指さし、次に食べる仕草をし、続いて彼女を指さし、首を振る仕草をし、最後に両手を広げて肩をすくめた。
彼が伝えたかったのはこうだ。
「俺は金がないから、何も食べさせてやれない。すまない」
少女は理解した。
ずっと強張っていた彼女の表情が、ようやく緩んだ。
彼女の口元が微かに動いた。笑おうとして、しかし笑い出すのをためらっているようだった。
結局、彼女はただ静かに頷き、ゆっくりと地面から立ち上がった。
立ち上がってみると、彼女は悠人が思っていたよりも背が高く、彼の腰のあたりまであった。ただ痩せ細っていたのと、ずっと縮こまっていたため、特に小さく見えていただけだった。
彼女は体の埃をはたき、琥珀色の目で真剣に悠人を見つめた。
そして、悠人を驚かせる行動に出た。
彼女は小さな手を伸ばし、そっと悠人の服の裾を引っ張った。
悠人はうつむき、疑問そうに彼女を見た。
少女は口を開き、かすれた、微かな声を絞り出した。
「あ……ありがとう……」
その声はとても小さく、風に消えそうだったが、悠人の耳には確かに届いた。
彼は微笑み、首を振って「礼には及ばない」と示した。
そして自分の喉を指さし、手を振って、話せないことを伝えた。
少女は一瞬呆けたが、頷き、それ以上何も言わなかった。ただ黙って悠人のそばに立ち、離れようとしなかった。
悠人は困ってしまった。
もともと冒険者ギルドで情報を集め、何とかしてこの地域を離れる方法を考えようと思っていた。
今、小さな少女がそばにいるとなると、多くのことがやりにくくなる。
それに、本当に彼女を置き去りにするわけにもいかなかった。
彼女は将来、重要なキャラクターになるが、それはアーサーと出会うという前提があってのことだ。
今、アーサーは死んでいる。彼女の運命の軌跡は完全に変わってしまった。
もし彼女を一人ここに残せば、また虐められるに違いない。生き延びることすら難しいかもしれない。
「はあ、面倒なことになったな……」
悠人は心の中でため息をついた。
彼はしゃがみ込み、少女の目線に合わせ、彼女を指さし、次に自分を指さし、「ついてこい」という仕草をした。
少女は目を瞬かせ、そして力強く頷いた。垂れていた狐の耳も、ようやくピンと立った。
悠人は立ち上がり、通りの奥へと歩き出した。少女は黙ってその後ろについていき、小さな尾のようだった。
夕日の残照が二人の上に降り注ぎ、その影を長く長く伸ばしていた。
彼は空腹だった。
いや、正確には、擬態した体にエネルギー補給が必要だった。
「何とかして食い物を手に入れないと……」
ポケットを探ると、空っぽだった。
一文のお金もなかった。
「……」
悠人はしばらく沈黙し、それから後ろの少女を振り返った。
少女も彼を見上げ、琥珀色の目は信頼に満ちていた。
「よし、まずは金を稼ぐか」
彼は歩みを進め、冒険者ギルドへ向かった。
背後で、銀白色の狐の尾が軽く揺れていた。




