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第5話弱さこそ武器

鉄床町の城壁は、悠人が想像していたよりもずっと低かった。


おそらく深淵平原の端に位置し、頻繁に魔物の襲撃を受けているためだろう、この小さな町の塀には至るところに修繕の跡が見られた。


しかしそれでも、今の悠人にとって、この城壁は依然として越え難い障壁だった。


彼は城門の外に立ち、錆びついた鉄格子の門を見上げ、胸の中に見知らぬ緊張感が湧き上がるのを感じた。


転生してから初めて人間の居住地に触れる瞬間であり、初めて本当の意味で「人間」を演じる瞬間でもあった。


「落ち着け、落ち着け」


彼は心の中で唱えた。


「今の俺はただの普通の行きずりの冒険者だ。何も特別なことはない。誰も俺に気づかないし、誰も俺を疑わない……」


彼は深く息を吸い込んだ——呼吸の必要はなかったが、この動作で心を落ち着けられた——そして城門に向かって歩き出した。


門を守る衛兵は、革の鎧を着た中年の男二人だった。腰には長剣を下げ、顔には手持ち無沙汰な表情を浮かべていた。


悠人が近づくと、一人がだらしなく顎を上げた。


「止まれ。身分証明書を出せ」


身分証明書?


悠人の心臓がドキリとした。そんなものを持っているはずがない。今の姿だって擬態で作り出したものであり、ましてや証明書類などあるわけがない。


彼は表面上は動じることなく、穏やかに衛兵を見つめ、それからゆっくりと首を振り、自分の喉を指さして、手を振った。


彼は話せなかった。


それが現在の最大の弱点の一つだった。


擬態で外見を変えることはできても、声の模倣にはより精密な制御が必要だった。


何度か試してみたが、出てくる声はしわがれて聞き苦しいか、そもそも人間の声にすらなっていなかった。


口を開いてボロを出すくらいなら、いっそ唖を装ったほうがましだった。


「唖か?」


衛兵は眉をひそめ、悠人をじろじろと眺めた。


悠人は頷き、顔に申し訳なさそうな微笑みを浮かべた。


彼の擬態は上手くいっていた。少なくとも外見は完全に普通の若い人間の男性に見えた。


黒い髪に黒い瞳、平凡な顔立ち、粗末な布の服を着て、どこか田舎から出てきた小冒険者といった風情だった。


もう一人の衛兵はそれほど警戒しておらず、手を振って言った。


「まあいいや、最近は出入りする奴もほとんどいないしな。お前の貧乏くさい様子を見る限り、怪しい人物でもなさそうだ。中に入っていいぞ。冒険者ギルドで登録しろよ。さもないと夜回り隊に身分証がないのを見つかって、地下牢にぶち込まれるぞ」


悠人は慌てて頭を下げて感謝を示し、うつむいて素早く城門の中へと歩いていった。


鉄床町の内部は、彼が想像していたよりもずっと賑やかだった。


狭い通りの両側には様々な店や屋台がひしめき合い、鍛冶屋からはカンカンという槌音が響き、薬草店の入り口には乾燥させた薬草が一串ずつ吊るされ、武器屋のショーウィンドウには冷たい輝きを放つ刀剣が並べられていた。


通りを行き交う人々——鎧を着た冒険者、マントを羽織った商人、ぼろぼろの服を着た乞食までいた。


空気には様々な匂いが混ざり合っていた。焼き肉の香ばしい匂い、汗の酸っぱい臭い、薬草の苦い香り、そして家畜の糞の嫌な臭い。


これらの匂いが絡み合い、独特の「町の香り」を作り出していた。


悠人は人混みの中を慎重に歩き、できるだけ目立たないように心がけた。


彼の目標は冒険者ギルドだった。そこは情報の集散地であり、この世界の最新動向を得るのに最適な場所だった。


しかし、角を曲がったところで、騒がしい声が彼の耳に飛び込んできた。


「このクソガキ!まだ盗みを働くのか!」


「ぶっ殺せ!こんな泥棒はちゃんと懲らしめてやれ!」


「あの汚い手を見ろよ、気持ち悪い!」


悠人は足を止め、声のした方を見た。


前方の路地の入り口に人だかりができていた。粗末な服を着た平民や、傭兵らしき屈強な男たちが中心となっていた。


人垣の間から、鈍い打撃音と抑えられた嗚咽が聞こえてきた。


悠人は一瞬ためらったが、やはり人垣の端に割り込んで、中を覗き込んだ。


そして、彼はあの少女を見た。


亜人の女の子だった。


せいぜい七、八歳に見え、体は痩せ細り、ぼろぼろの麻のワンピースを着ていた。露出した腕や脚には傷や痣が無数にあった。


髪は銀白色で、乱れて肩に広がり、何本かの房が血で頬に張り付いていた。


最も目を引いたのはその耳だった——ふわふわとした白い狐の耳が、怯えて垂れ下がり、微かに震えていた。


その後ろでは、ふさふさした白い尾が両脚の間にしっかりと挟まれ、同じように絶えず震えていた。


今まさに彼女は地面にうずくまり、両手で頭を抱えながら、三人の屈強な男に蹴られ、殴られていた。


傍らには太ったパン屋の店主が立ち、半分潰れたパンを握りしめ、怒り狂ったように叫んでいた。


「この泥棒め!油断した隙にパンを盗みやがった!こいつは売り物なんだぞ!」


「ぶっ殺せ!思い知らせてやれ!」


顔に横肉のついた傭兵がそう言いながら、少女の背中を蹴り飛ばした。


少女はくぐもった呻き声をあげ、小さな体が地面を二度三度と転がったが、決して泣き声をあげることはなかった。ただ唇を強く噛みしめ、銀白色の狐の耳を頭にぴったりと押し付けていた。


周りの群衆は、歓声を上げる者、首を振って嘆息する者、様々だったが、誰一人として止めに入る者はいなかった。


悠人はその場に立ち尽くし、六つの目——もちろん今は人間の二つの目だが——で、地面に丸まった小さな影を見つめていた。


彼は彼女に見覚えがあった。


いや、思い出したのだ。

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