第9話 ルミナセレスティアル
どんな痛みよりも、今が一番怖い。
ルミナセレスティアル。
彼の肌は死人のように白く金色の瞳には感情が見えない。破壊の笑みを浮かべていて、ルミナセレスティアが俺を見下ろし嘲笑っていた。
「選択の余地はない。サラブレッドにも勝てない愚せものが。お前がなぜセレスティアルに値するのか私には理解不能だ、どこからどうみてもこの世のクズではないか」
俺は何も感じなくなっていた。腹からは血が出てその感覚さえもなくなっている。ルミナセレスティアルの威圧が、話すごとに死に近ずくようで言葉も発せない。
「ルミナ…俺は何したんだ」
「私との統合がどんな奴かと思ったが、ちっとも面白くない、私の前からも消えてもらう」
「統合?何、言って」
ルミナセレスティアルは乙を抱きしめるように、一瞬で俺の身体を失った。
「完璧で完成は私だ。喜びなどいらん、排除と美徳、私は完成にいるんだ、完璧より上というのは私のことだ」
***
痛い、痛い、嫌だ、嫌だ、上がってくる血の感覚が残っている。ルミナセレスティアルに壊された。ループされ、全身に広がっている。
「っぐあああ」
ガバッと起き上がり、身体を確認するが身体は何もなかった。白いベットの上だった、見慣れたリコルの残骸の部屋。星牙の部屋だ。
「乙くん!大丈夫乙くん!」
「ああ?あああ?」
「ルミナに飲み込まれるな、乙くん戻ってきて、乙くん!!」
俺は、星牙の喉を鷲掴みした。
「…はあ?」
星牙は俺の手をぎゅっと握った。なんだか温かい景色が走った。
「乙くん、ルミナに食われたの?星牙だよ、君を買ったんだ、あの日、スーパーで」
記憶が渦巻いて巻き戻されるように脳幹に、直接攻撃で断片的に遡る。
「っっああ」
(あぁそうだ、あの時俺は感じたんだ。心臓が温かい、あんな狭くて救われない絶望から全てを救ってくれたんだ)
「乙くん、乙くん!」
「はあ…っつ」
「乙くん、おいで」
星牙は乙くんの手を引き、胸の中へとダイブさせる。温かい、心地いい。いつの間にか一緒に過ごし、一緒に乗り越えて笑ってた。
そうか星牙に手を引かれてたんだ。お互いリコルとヴァルエイターだけど一緒にいた。俺は途端にポロポロと涙が伝ってきた。
「…俺なんでセレスティアルなんだ」
星牙は冷たい空気を飲み込んだ。ゴクリと音がなり静寂がピンと鳴る。
「…俺は悪いことしてない、フェンドのために人間をリコルにした。それだけだ。お前らに痛みと引き換えに、食料付与して生存させてやってんだ!俺が何したってんだ」
内心は思うまま、吐き出したがただぐちゃぐちゃだった。
「乙くん、何でも言って、僕は乙くんの生の為に存在してるよ」
星牙の青い瞳が、真剣に貫いてくる。
「乙くん、ルミナ・セレスティアルに会ったんだね」
「言葉も発せなかった、残虐だったのは覚えている」
「ルミナセレスティアルは、フェンドと統合する使命があるんだ」
「統合?殺されたんだぞルミナに。怖くて、痛くて」
頭を抱えて、乙くんは吐くように嗚咽する。
「乙くん、安心して、僕がいるから」
星牙は俺を宥めるが、何にも声が届かない。効果はなくなっていた。
「やっぱりわからないんだな、お前にも」
空虚で虚ろな目が飛んでいた。遊ばれるんだ。
「…乙くん」
「お前もヴァルエイターだもんな」
俺は星牙をつき払う、星牙をどう使ってやろうか、俺のためのゲスな犬になれよ。どこまでも痛みを与えてやる。
「乙くん、初めて乙くんを買った日と、同じこと考えてるでしょ」
「そうだな、ルミナセレスティアルにお前を利用してもらう、それでいいんだろ?」
冷酷な目で発するが、星牙はむしろ、加速してきた。
「いいよ!僕の生を存分に発揮してよ」
星牙はヴァルエイターの殺気を纏ってる。どこまでも堕ちよう、お前は俺のために存在しろよ。
星牙が、これから進む先を示してきた。怖いほど真剣に見つめてきた。
「乙くん、一緒に来てほしい所があるんだ」
これは、俺と星牙だけの共鳴だ。




